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環境ビジョン

食料問題や地球温暖化などの地球規模の社会課題により将来の不確実性が増す中、SDGsやパリ協定など、世界共通の長期目標が掲げられています。気候変動問題については各国がCO2排出実質ゼロやカーボンニュートラルを宣言するなど、「脱炭素」社会への移行に向けた動きが加速しています。また、大量生産・大量消費・大量廃棄につながる従来型の経済から、製品と資源の価値を可能な限り長く保持・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済をめざす循環経済(サーキュラー・エコノミー)に向けた動きも進んでいます。

クボタグループは、「For Earth, For Life」を環境経営のコンセプト*1に、持続可能な社会の実現に貢献していくことをめざしており、気候変動対策をはじめ環境保全活動を企業活動における重要課題としてとらえています。
当社は、クボタグループ長期ビジョン(GMB2030)とあわせ、2050年に向けた環境面から事業活動の方向性を示す「環境ビジョン」を掲げ、その実現に向けた取り組みを推進していきます。

  • 環境ビジョン  ~2050年に向けて環境面からのありたい姿~
環境負荷ゼロに挑戦しながら、「食料・水・環境」分野でカーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に貢献します。

環境ビジョンの実現に向けて

1. 環境負荷ゼロへの挑戦

当社は、原材料や部品を調達し、様々な製品に加工してお客様に提供しています。その過程やお客様による製品の使用において、エネルギーなどの資源を多量に消費します。今後も事業をグローバルで継続していくためには、限りある資源を効率的かつ持続可能な方法で利用する必要があります。

私たちは環境負荷ゼロの実現に向け、事業活動における温室効果ガスの排出削減やクボタ生産方式(Kubota Production System, KPS)に基づくエネルギーのムダ・ロス削減の徹底、廃エネルギーの回収・再利用や再生可能エネルギーの利用拡大、水ストレスの高い地域における節水や再生水の利用、製品ライフサイクルにおける資源利用効率の最大化などを推進していきます。また、環境負荷ゼロに向けた取り組みを事業のバリューチェーン全体で展開していきます。

しかし、環境負荷ゼロの実現は容易ではありません。私たちは着実に環境負荷ゼロへ近づいていくため、温室効果ガスの削減、省エネルギーの推進、廃棄物の削減、節水、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound, VOC)の削減などを計画的に推進し、地球の自浄力や環境容量を維持できるよう、持続可能な事業活動に挑戦します。

2. カーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に向けて

私たちは気候変動の緩和(温室効果ガスの排出抑制)に加え、気候変動への適応(気候変動の影響による被害の回避・軽減)や水・廃棄物問題への対応など、環境保全活動や環境配慮製品・ソリューションの提供を通じ、持続可能な、とりわけカーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に貢献していきます。

農業分野における土地利用を含めた食料分野からの温室効果ガス排出量は世界の総排出量の約24%を占めると言われており、効率的な食料生産が行われなければ、さらに温室効果ガスの排出が増加すると考えられています。IPCCの第6次評価報告書によると、CO2よりも強力な温室効果ガスであるメタンや亜酸化窒素の濃度も上昇しており、排出抑制の対策が必要とされています。また、気候変動は耕作適地の縮小·移動や農業形態、生態系にも影響を与えます。農村部では都市化の影響による働き手の減少もあり、限られた耕作面積での効率的な食料生産が求められています。

当社の事業領域である「食料」分野では、スマート農業や農業機械の自動運転、営農技術や水環境ソリューション技術などをさらに進化させることにより、CO2に加えてメタンや亜酸化窒素の排出抑制や、より効率的な食料生産に貢献できると考えています。農業の生産性を高めることで、農作業の効率化に加え、省エネルギー化や肥料や農薬の省資源化、農地拡大のための森林伐採の抑制など、農業分野における温室効果ガスの排出抑制を進めていきます。

気候変動の影響により気象災害の頻発化・激甚化が顕著になっています。また、利用可能な水資源は地域に偏在しており、安全な水を利用できない人口は16億人にのぼります。気候変動による世界の気温上昇を1.5℃未満に抑えられたとしても水不足に直面する人口は増加すると予想されています。また、人口増加と生活水準の向上は、大量生産・大量消費・大量廃棄による資源・廃棄物問題をさらに深刻化させることが想定されます。
「水・環境」分野では、防災や災害復旧に貢献する製品や、AI・IoTを活用した効率的な水監視・管理システムなど、気象災害の頻発や農業形態の変化、作業中の熱中症の増加などの気候変動の影響による被害を回避・軽減できる製品・サービス・ソリューションを提供していきます。また、水資源・廃棄物の高度な循環および水質汚濁や大気汚染を抑制する製品・サービス・ソリューションもさらに拡充し、自然災害に強いまちづくり、レジリエントな社会の実現に貢献していきます。

カーボンニュートラルに挑戦します

製品ライフサイクル全体におけるCO2排出の状況をふまえ、私たちは製品の製造時や使用時のCO2排出削減に取り組むことが重要であると考えています。
私たちはカーボンニュートラルな社会の実現に向け、温室効果ガスの排出削減や省エネルギーの推進、製品の燃費改善や電動化などを進めていきます。しかし、カーボンニュートラルの時代に求められる動力源は、脱炭素化に向けた規制・政策、市場動向、インフラの整備状況に左右されるため、不確実です。クボタグループでは10年以上先を見据えて、より少ないエネルギーでより多くの作業がより精密にできる製品の開発や実用化に着手しています。
製品ライフサイクル全体におけるCO2排出抑制を進め、同時に、製品やソリューションの提供を通じて社会のGHG排出を抑制します。2050年CO2排出実質ゼロをチャレンジングな目標と定め、取り組みを進めていきます。


カーボンニュートラルの取り組みを示すシンボル

クボタグループは、環境ビジョンにおいて、カーボンニュートラル、すなわち温室効果ガスの排出ネットゼロをめざすことを宣言しています。私たちのネットゼロに向けた取り組みを「TOWARDS NET ZERO」として、自社および社会の温室効果ガス排出抑制の両方で活動していくことをこのシンボルで表現しています。カーボンニュートラルに向けた取り組みは、企業や個人が単独で行うものではなく、バリューチェーン全体で進めていく必要があると考えています。失敗を重ねても、挑戦しつづけ、2050年さらにその先の人々の生活がより豊かになるために全員でチャレンジしていく思いを込めました。今後このシンボルを掲げることで、関連する取り組みをわかりやすく発信していきます。

環境ビジョン策定にあたり

1. クボタの事業を取り巻く2050年の世界

国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)や世界資源研究所(World Resources Institute, WRI)などのシナリオをふまえ、1.5℃/2℃および4℃気温が上昇した場合の2050年の社会像を分析しました。気候変動や水リスクをはじめとした地球規模の環境問題は、今後エネルギーや水価格の高騰および自然災害の頻発など当社の操業に悪影響を与えるだけでなく、事業領域である「食料・水・環境」における社会課題をますます深刻にする可能性があります。また、これら環境問題への対応の遅れは当社の事業活動のリスクとなり得ます。今後もグローバルで事業を継続していくためには、SDGs達成に向けて社会課題の解決に貢献する事業展開と環境問題への対応を含めたESG経営の両立が不可欠であると考えています。

2050年の世界

世界人口はアフリカやアジアなどの新興国を中心に増加し、2050年には100億人近くになり、それにともない食料需要も約1.6倍に増加すると予想されています。また、経済発展は、人々の生活環境を改善したいというニーズを高め、世界的なエネルギー需要の拡大や多くの資源消費につながります。これは水需要についても同様です。水需要は、特に経済発展を支える製造業や発電用、家庭用などで増加し、2050年までに約1.6倍になると予想されています。
食料需要・水需要の増加、都市化などによるエネルギー需要拡大、食料生産のための新たな土地開墾などは、気候変動の問題を悪化させる可能性があります。気候変動により降雨パターンが変化すると、乾燥や多雨となる地域が移動して従来通りの農作物の生産ができなくなることや、気象災害が頻発化して洪水などの水害被災人口が増加するなど、人々の暮らしに多大な悪影響を及ぼす可能性があります。
限りあるエネルギーなどの資源を有効活用せず、現在の経済活動や社会活動を継続していけば、いずれ人々の生活そのものが成り立たなくなる可能性があります。

2050年の世界

気温上昇が1.5℃/2℃以下となる世界

各国ではパリ協定で掲げられた目標を達成していくため、省エネルギーやCO2排出削減の動きが加速し、関連規制が強化され、さらに市場や顧客の気候変動への関心は高まっていくと考えています。そのため、省エネルギー化や脱炭素化、電動化のニーズが高まると想定しています。

例えば、当社の主要製品であるトラクタ、コンバイン、田植機、建設機械、ディーゼルエンジンは日本、欧州、米国などの排出ガス規制の対象となっています。ディーゼルエンジンは都市部の開発などで活躍する建設機械にも使用されています。今後、さらに各国のエンジンに対する規制強化が考えられ、排出ガス規制に適合するディーゼルエンジンの開発に対する投資は増加するものと考えています。また、気候変動の緩和に向けた取り組みが各国で進むと、炭素税などが強化され化石燃料を使用した発電の割合が減少する反面、再生可能エネルギーによる発電の割合が増加し、エネルギー価格の高騰が予想されます。

世界各国で気候変動に関連して製品の環境性能への法規制の要求が強化されていくと、クボタが提供する農業機械や建設機械、水処理関連などの分野においても、エネルギー効率の高い製品やそれを可能とするソリューションへのニーズが高まると考えられます。事業活動においてもエネルギー調達コストの増加リスクに対し、今まで以上に、省エネルギーや再生可能エネルギーの利用拡大が重要な課題になると考えています。

気温が4℃上昇する世界

世界の平均気温が4℃上昇すると、降水・気象パターンが変化し、近年世界でみられる台風や豪雨などの気象災害が一層増加すると予想されます。地域によっては干ばつにより、事業活動や生活に必要な安全な水へのアクセスが困難となる可能性もあります。これらの影響により、事業活動の停止や農作物などへの影響、水インフラなどの生活基盤への被害が増加すると考えられます。

例えば、沿岸部や多雨地域では、豪雨や洪水が発生した場合、工場の浸水、停電、物流停止や出荷遅延を招く可能性があります。また、これら気象災害の増加・長期化により、さらなる被害の拡大が懸念されます。農作物の生産においても、気候変動の影響により耕作適地の移動や農作物の収量への悪影響が予想され、農業機械などの販売に影響を及ぼす可能性があります。気候変動は干ばつを発生させる可能性もあります。これにより当該地域の水不足や取水制限など、事業活動上のリスクが生じる可能性もあります。

気候変動は耕作適地の移動や農作物生産にも影響を及ぼすと予想されますが、一方で、限られた土地でより効率的な生産を実現するためのスマート農業や多様な気象条件下でも農業を継続していける農業ソリューションの必要性も高まると考えます。同様に、自然災害が発生したとしても、人々の生活環境を維持することができる、自然災害に備えたまちづくりへの貢献も重要な課題となってくると考えています。

  • これらはクボタグループの環境ビジョン検討にあたりTCFD提言に基づいたシナリオ分析の結果概要であり、2050年の世界は各シナリオと異なる可能性があります。今後も、継続してTCFD提言に基づいた情報開示の拡充につとめていきます。

2. 求められる社会像

今後人々の暮らしがますます豊かになるのにともない、解決すべき環境問題も発生します。しかし、これは、地球環境を犠牲にして成り立つ社会を望むということではありません。気候変動の影響をふまえた将来の社会像を分析した結果、クボタグループは、2050年や、さらにその先の未来が持続可能な世界であるために、社会が求める姿は次のとおりであると考えています。

  • 農業分野からの温室効果ガス排出の抑制など気候変動の緩和に向けたカーボンニュートラルな社会の実現
  • 自然災害に備えるなど気候変動への適応や、水・大気汚染や廃棄物問題に対応できるレジリエントな社会の実現