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高品質なお米を届けるために。メカトロニクス開発で実現した、不良米を高精度に撃つ色彩選別機

色彩選別機

気候変動の影響により、田んぼでは高温障害や病虫害などによる不良米の発生が増えています。米農家にとって不良米の混入は品質・等級に直結する最重要課題で、農業従事者の減少と高齢化が進む中、自動で不良米を取り除く「色彩選別機」は欠かせない存在となっています。クボタは機械(メカニクス)を電子(エレクトロニクス)で制御する「メカトロニクス」技術により、1回の選別で不良米を高精度に選り分け、高い品質を実現しつつ歩留まりを向上(ロスを低減)させる色彩選別機を開発。収益の安定・向上に貢献しています。さらに営農支援システム・KSASとの連携によって、未来に続く計画的かつ効率的な農業経営を支えています。

米農家が直面する気候変動や人手不足による課題

気候変動が米に及ぼす影響のひとつがシラタ(乳白未熟粒)です。出穂(しゅっすい)から収穫の間に稲が高温にさらされると、乳白色に濁った未熟粒となります。また、カメムシ被害などのヤケが発生すると米粒の一部が黒く変色します。こうした不良米の混入は等級検査の減点対象で、1000粒中わずか2〜3粒で2等級米への格下げになる場合があり、販売価格も低下してしまいます。米農家にとって不良米の混入防止は営農の必須条件といえ、収益を上げるためには、同じ収量でも高い品質や付加価値が必要となっています。

  • 玄米の良品(左)と、選別対象である不良米(右)

一方で、日本の総農家数の推移は下降の一途であり、現場の高齢化も進んでいます。多くの場合、米の収穫は年に一度で、田んぼでの刈り取り、乾燥、籾摺りなどの作業が短期間に集中。人手が限られる中、不良米選別作業のさらなる効率化・高精度化と、それらを実現する自動化が求められています。

  • 日本国内の総農家数の推移を示す棒グラフ

また近年は、耕作者がいなくなった田んぼを地域の担い手農家が引き継ぐケースも増えています。面積は広くなくても、管理すべき田んぼが点在し枚数が増えると、米の品質にばらつきが生じやすくなります。そうした複数の田んぼで収穫された米を最終的に適切に選別し、高い品質で安定出荷する重要性は今後ますます高まると考えられます。さらに、こうした選別データをKSASと連携させることで、次期作の営農計画の改善にもつなげることができます。

農家単位で導入できる小型・低価格な色彩選別機を市場へ

従来、色彩選別機は精米工場向けの設備であり、クボタは1998年から大型の色彩選別機「KG」を開発・販売していました。2004年に米の販売が自由化されると、農家が直接販売する自主流通米という新たな潮流が生まれます。クボタは米農家のニーズを捉え、農家単位で導入可能な価格帯・サイズ・処理能力を兼ね備えた色彩選別機を開発。2006年に「KG-A」シリーズとして農家市場へ投入します。

これが大きなインパクトとなり、米農家では乾燥・籾摺り・色彩選別・計量・袋詰めをワンストップで行える自前の作業ラインが実現します。その後も、LED照明による暖気運転時間の大幅短縮、処理能力増強などの改良を重ね、米の自主流通時代の黎明期を支えました。

  • 「KG-A」シリーズ

常態化している「2次選別」という作業負担と非効率

色彩選別機は「流す・見る・撃つ」の3ステップ構造で、米を流し、カメラで不良米を検出し、エア噴射で吹き飛ばします。しかし、選別された不良米の中に良品が混じってしまう「共連れ」という課題がありました。不良米を吹き飛ばす際に近くの良品が一緒に吹き飛ばされることがあるのです。そのため、良品ロスを減らすべく、選別された不良米を再び選別機にかけて良米を救う2次選別(リターン選別)が行われていました。

また、1回ではすべての不良米を取りきれないことがあり、1回目は黒く変色した着色米、2回目でシラタ(乳白未熟粒)を除去するなど、選別工程を2回行わなければならない場合もありました。

このように良品ロスを減らすことで高い歩留まりを維持しながら、高品質なお米とするために、現場では2次選別が常態化。トン単位の米を扱う米農家にとって、この二度手間は大変な重労働であり時間のロスでした。省人化と効率化を大きく進展させる鍵がここにあると考えたクボタは、2次選別作業をなくすべく研究開発に着手。そうして実現したのが、現在の色彩選別機です。

二度選別する手間から解放。3台のカメラで不良米を高精度に検出

色彩選別機で大切なのは、まず不良米を的確に見分けることです。それまでの色彩選別機は2台のカメラで選別を行っていましたが、着色米と未熟粒を同時に高精度に見分けるためには3台のカメラが必要でした。残存してしまう不良米の多くは着色米で、米の黒い着色部が反射カメラ側に向いていない時に発生していたことから、クボタは米の前面と背面から同時に検出できるよう反射光カメラを1台増加。3台のカメラと、緑色・赤色2台のLED照明による検出システムを開発し、着色米も未熟粒も一度の選別で高精度に検出できる仕組みを考えます。

  • 3台のカメラで高精度な選別を行う

この検出システムによって検出精度は向上しましたが、最大の壁は農家が導入しやすい価格から外れてしまうことでした。2次選別の手間を解消しつつ、農家が入手できるように、クボタはデジタルラインセンサカメラを自社開発することを決断します。既に90年代後半、工場向け色彩選別機の研究開発過程でデジタルラインセンサカメラを製造していた知見を活かし、すべてを内製することで、農家の負担を最小限に抑えました。

次なる壁は機械構造設計でした。限られた空間でさまざまな条件をクリアし配置・固定しなければなりません。カメラと米粒を結ぶカメラ光軸は内蔵ミラーの角度が0.1度狂うだけで判定に影響が出る精密機械です。しかし色彩選別機は稼働時に振動が生じる上に、農作業の現場では選別機を移動させることも多く、かつ、寒暖差の大きい設置環境もあります。その中でカメラを強く固定しすぎると、振動などでミラーが割れる恐れがあることが判明。クボタはバネの復元力を利用した固定方法を考案します。コーキングにはゴム材を使用するなど、あえて弾性をもたせることで解決しました。

  • 色彩選別機に内蔵されている、ミラーと一体になったカメラ

また、カメラにとって米の粉じん(米糠など)も大敵のため、米の流れる空間とカメラのある空間をガラスで完全分離。20分ごとに自動でガラス面をエア洗浄するクリーニング機能を組み込み、ガラス越しでも常に高精度の判定を維持できる機構を備えました。

このように内蔵部品や内部機構の細部に至るまで、深い現場理解に基づいて開発するのがクボタの現場主義です。開発者自身が数多くの農家を訪ね、機械・電子技術を組み合わせ、高い耐久性やメンテナンスのしやすさを実現しています。

機械設計と電子制御が一体となったメカトロニクス技術を米の選別に注ぐ

次に解消すべき課題は良品の「共連れ」です。クボタは、流れてくる不良米の中心を的確に撃つことで、周囲の米の巻き込みを回避できると考えました。これまで、カメラで検出していたのは不良部分の有無だけでしたが、これに加え、米粒ごとの始まりと終わりを検出。米粒の末端位置を検出することで米をひと粒ずつ認識し、不良米と判断された米粒の中心位置を判定。的確に不良米のみを撃つことを可能にしました。

  • 不良米の中心検出ありと検出なしの比較

3台のカメラによる不良米の検出と、エアイジェクタによる噴射は、米が流れる溝シュートが途切れたわずか30mmほどの幅の中で行う必要がありました。まず、エアイジェクタの吹き出し位置を決定し、そこから何ミリ手前でカメラが米を見るようにするかを算出し、カメラを配置。カメラが米をスキャンしたタイミングをトリガーとして、エア噴射を行う制御設計を行いました。

CPUの演算速度が上がり大量の情報を高速で処理できるようになったことで、理論的にはカメラの見る位置とエアイジェクタの距離は短くすることが可能になりました。しかし、光学部品の配置には制約があるため、クボタは理論値に限りなく近づけるべく、実際に米を流して検証を繰り返し0.1ミリ単位のせめぎ合いを重ね、最適な距離を見定めていきました。

また、この中心検出機能の効果を最大化させるためには、米粒の重なりをなくす物理的条件も不可欠です。鍵を握るのは米を流す溝シュートで、設置する角度、シュート自体の長さ、溝の形状、表面加工など、さまざまなパターンを研究、検証。シミュレーションだけに留まらず、実際に米を流しながら最善の形を追求しています。

  • 色彩選別機の内部にある、米が流れていく溝シュート

このように「流す・見る・撃つ」を行う色彩選別機には、米を重ならないように流す機械・構造設計、デジタルラインセンサカメラの光学や画像処理技術、画像を判断し不良米を撃つエアイジェクタをコントロールする電気・電子工学、制御工学など、クボタの総合的な技術力が集約されています。

クボタはこうして作り上げた色彩選別機で、農家の現場から2次選別という作業フローをなくし作業効率を大きく改善するとともに、高品質で安定した米の出荷に貢献。収益の向上を支えています。

不良米が教えてくれる情報を無駄にせず、次の一手へ

色彩選別機で得られる情報からは、不良米の割合はもちろん、その不良がカメムシ被害なのか高温障害なのかといった種類の内訳もわかります。これをクボタの営農支援システム・KSASと連携させることで、田んぼごとの不良米の傾向などが可視化され、来期の米づくりに向けた水管理、農薬散布の最適化など、作業(栽培)計画の見直しにつなげることができます。農家にとって選別データの活用は、コストや人件費の削減、高付加価値米の提供、環境負荷低減など中長期にわたる営農改善に役立ちます。

  • 営農支援システム・KSASと連携し、不良米の割合と原因を可視化

無人で高品質・高歩留まりを保つ感度調整の自動化に挑む

米農家にとって、手塩にかけて育ててきた米が袋詰めされる直前の最後の砦が色彩選別機です。選別感度を上げるほど品質は高まりますが不良米扱いの米が増え出荷量は減り、感度を下げれば出荷量は増えるけれど品質・等級が下がる。そんなジレンマの中、感度の調整に悩む農家は多く、年に1度の選別作業が勘頼りで行われることも少なくありません。

クボタはお客様が簡単に感度調整を行えるような機構も見据えた研究開発に挑んでいます。色彩選別機をヒントに誕生した、えだまめ選別機には、すでに自動で感度のしきい値を調整する機能が実装されています。多様な農業機械を研究開発するクボタの幅広い技術と発想を、農業の現場のニーズと結びつけ、さらなる改良を進めています。

めざすのは色彩選別機の周囲に人がいない現場風景。クボタは、米農家の人的負担や手間を極限まで減らしながら、高い選別精度で収益向上を支え、持続可能な営農に貢献していきます。

開発メンバー

「開発者が現場の声に直接触れるからこそ、もっと使いやすくしたいという気持ちが強くなります」

(左から)
農機関連商品技術第二部
井上 浩典
池田 直人
末永 慎二
前田 剛志

チーム内にはクボタが色彩選別機を手がけた初期から、ずっと携わっている開発者もいます。現場主義を大切にするクボタでは、開発担当者の私たちが全国の農家を訪問する機会も多く、長年にわたり現場の課題や要望に触れてきました。かつては収量を増やすことが主流でしたが、今は品質を上げることが収益向上の鍵となっていることを実感します。実際にお会いして「こういうことができないかな?」と相談され、改善後、農家さんが喜んでくれている姿を見ると、開発のモチベーションが上がります。
米農家さんとひとことで言ってもさまざまな方がいらっしゃり、中には機械が不得手な方もいます。操作ボタンの仕様は、社内にあるデザインセンターと連携しシンプルに改良されてきていますが、より使いやすく、誰にでもわかりやすい機械を作っていきたいです。
農家向け選別機として、現行の「選別王」シリーズはいわば第2世代。今は次のモデルチェンジ、第3世代に向けて新たな開発を進めています。従来モデルの延長線上ではない、かつてないようなものを届けられるよう挑戦を続けているところです。
また、社内においては、色彩選別機の技術がお米だけでなく、枝豆などの他作物の選別機の開発につながっています。クボタとして、時代の流れやニーズに合わせた製品を世に送り出し、これからも農家の皆さんのお役に立ちたいと思っています。