排水の浄化で、水資源の有効活用と地球環境の保全に貢献
膜システム
一般的に農業機械のイメージが強いクボタですが、創業以来、上下水道インフラ整備に貢献してきました。水道管、ポンプ、バルブなどのパーツに留まらず、水処理施設のエンジニアリングやメンテナンスなど、水に関する総合的なソリューションを長年にわたって提供しています。現在、世界が抱える水問題として、淡水の不足と水質汚染があります。クボタは、下水や工場排水を浄化し、再利用可能な水に浄化する液中膜®ユニットを開発し、この問題の解決にグローバルに取り組んでいます。
人類を取り巻く水の問題:淡水の不足と水質汚染
地球の表面積の内、約70%は水に覆われていますが、そのほとんどが海水です。淡水の量は全体のわずか2.5%であり、人類が利用できる量は約1%と言われています(*)。このように利用可能な淡水資源が限られている状況に加え、近年の地球温暖化や人口増加に伴う淡水資源使用量の増加により水不足の問題が顕在化しています。
また、インフラが未整備の状態で急激に都市化が進行した地域においては、多量の生活排水や工場排水が河川に排出されており、生態系の崩壊や下流域の住民の健康問題につながる水質汚染が生じています。
- 国連水関連機関調整委員会(2014)
水問題解決の鍵は「排水の再利用」
水不足と水質汚染の問題を解決する方法のひとつが「排水の再利用」にあるとクボタは考えます。
水の用途は人が飲む水以外にも、水洗トイレ、清掃用水、消防用水、公園の噴水などさまざま。用途によって求められる水質が異なります。そこで、これまで廃棄されていた排水を用途に応じて再利用することで、限りある淡水資源を有効に活用できます。中東など、水が貴重な地域では、排水の再利用水を灌漑用水や修景用水に利用することで、土壌緑化や景観維持に役立て、貴重な飲み水の確保につなげています。
「新たな水」を生む魔法の技術
活性汚泥法では処理の最後に活性汚泥(微生物)と処理水を分離する沈殿池が必要ですが、MBRは固液分離を膜ろ過装置で行うため、沈殿池が不要になり、施設のコンパクト化が図れると同時に極めて清浄な処理水が得られます。
この非常にきれいな処理水を安定して得られることがMBRの特長のひとつ。従来の活性汚泥処理法の処理水質は、排水の水質や水量の変動の影響で変化しやすいのに対し、MBRは目の細かい膜で固液分離を行うため、衛生学的に安全な処理水を安定して得ることができます。このため、MBRの処理水はトイレ洗浄水などビルの中水や、散水用水、また灌漑用水などに利用することが可能であり、水不足に対する問題意識が高い地域において、「利用可能な新たな水」を生み出す高度な排水処理技術として導入されています。
MBRのもうひとつの特長として、コンパクト性が挙げられます。例えば、敷地制限のある施設においても、排水量の増加と処理の高度化の実現が可能。液中膜を使って得られた処理水はビルや工場のトイレ用水、公園の池の水などに再利用可能です。
このようなMBRの技術によりクボタは、淡水資源の有効活用に貢献しています。
超省エネ液中膜®ユニットで目指すさらなる水資源の有効活用
世界の水不足と水質汚染の解消に貢献する液中膜®。クボタでは、MBRが市場ニーズに合致する技術となるよう、世界で数千を超える液中膜®納入施設で培った経験をもとに、開発を重ねてきました。
MBRが世界で普及するための課題は電力コスト。従来の活性汚泥処理に比べて消費電力量の高さがネックとなり、これまで大規模処理場ではなかなか普及していませんでした。しかし、さまざまな課題を一つひとつ克服することで、近年では1日に10万トン以上の排水を処理する大規模の処理施設でも採用されています。2016年には、クボタのMBR方式を用いた北米最大規模の下水処理施設が、米国オハイオ州カントン市に誕生します。
これからもクボタの取り組みに終わりはありません。消費電力量が従来の活性汚泥処理に近づくための改良開発はもちろんのこと、水処理エンジニアリング能力を活かしたポンプなど液中膜®付帯機器の省エネ化、施設全体をより効率的に動作する運転制御手法の確立など、省エネ対策を徹底的に見直しています。従来よりも高度な排水処理技術であるMBRを、従来と同等のエネルギーで可能にする。これが実現できれば今後の大型施設への導入がさらに加速することでしょう。
今後もクボタは水に関するトータルソリューション企業として、技術力の向上を目指していきます。一人でも多くの人が安心して、水を利用できるよう、クボタはこれからも技術を進歩させていきます。