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災害に強い水道インフラを支えるクボタの耐震型ダクタイル鉄管

耐震型ダクタイル鉄管

明治初期、日本の水道管は、すべてを輸入に頼っていました。しかし、クボタの創業者・久保田権四郎は、コレラ等の水系伝染病の蔓延を機に、1893年に国内初の水道用鋳鉄管の製造を開始。「鉄管のクボタ」としての地位を確立しました。その後も、時代のニーズに応える形で、強靭な材質、様々な継手、工法を他社に先駆けて開発し続けてきたクボタ。近年では、耐震性と長期耐久性に優れた耐震型ダクタイル鉄管「GENEX」を完成させるなど、日本の水道インフラを文字通り地面の下で支えてきた、クボタが誇る耐震管の技術力をご紹介します。

日本の水道インフラの現状と課題

日本の水道普及率は約98%(2017年)*1ですが、その多くが高度経済成長期に布設された水道管路であり、法定耐用年数の40年を超えた経年管の更新は、もはや待ったなしの状態です。一方で、水道料金収入の伸び悩みなどの理由から、全国の管路更新率は年平均約0.7%にとどまっているのが現状。そのため、水道事業を所管する厚生労働省は、管路の更新・耐震化を最重要課題とし、基幹管路の耐震化率100%を目標に取り組んでいます。

  1. *1.出典:厚生労働省「水道普及率の推移」

大きい地盤変状にも耐える耐震継手「S形」の誕生

現在、ダクタイル鉄管は日本の水道管材の約60%*3を占め、耐震継手ダクタイル鉄管はこれまで数々の大地震で被害を出さずに、高い耐震性を証明してきました。その最初の耐震継手(管と管の接合部の仕組み)である「S形」を開発する契機となったのは、1964年にM7.5を記録した新潟地震でした。至るところで水道管の被害を目の当たりにしたクボタのエンジニアは、地震に強い水道管路の必要性を痛感し、地震に強い継手を模索し始めました。

そんな折、十勝沖地震(M8.3)が発生。この地震で甚大な被害を受けた青森県八戸市水道部(当時)から、「“スライドして抜けない・全方向に大きく曲がる・その上漏水しない耐震管”を開発してほしい」との切実な要請があり、それが追い風となって耐震継手の研究開発は本格化していきました。

地盤ひずみの想定範囲、継手の伸縮量、許容曲げ角度、離脱阻止力……。エンジニアたちは、最低ラインの基準を決めるため、土木学会や専門の大学教授にヒヤリングして回るなど、耐震管づくりに奔走しました。

その結果、管と管の継手部分に一定のすきまを設けることで継手部分を伸縮・屈曲させ、継手の可動域以上に管が動く場合には抜け止め構造が働くという、独自の離脱防止機構を開発。地盤変動への順応性を飛躍的に高め、大きな地盤変状にも耐える管路をつくることに成功したのです。鎖のようにそれぞれの継手が動いても外れないことから、クボタのエンジニアはこれを「鎖構造管路」と呼び、現在の主力製品である「GENEX」にも受け継がれています。

もちろん、製品化には当時の製造部門もまた、世界で初めての耐震管づくりに伴う様々な困難と苦労があったといいます。

  1. *3.出典:日本水道協会「平成26年度水道統計」
  • 地盤変状を想定した装置を考案し、様々な条件下で性能実験を繰り返し実施。

  • 八戸市水道部が全国に先駆けて採用した、耐震型ダクタイル鉄管(S形1000㎜)。

時代のニーズに応え、進化する耐震継手

耐震継手や工法は、その後も時代のニーズを的確に捉えながら進化していきます。

たとえば、小口径用のSⅡ形などを経て1994年に開発された、耐震管としては初めてのプッシュオンタイプとなるNS形。これは、管接合時にボルトやナットが不要で、押し込むだけで接合可能な施工性の高い耐震継手です。作業員が溝の中に入り、ボルトやナットで接合していた従来の接合方法に比べ、材料費や工事費などのトータルコストを下げることに成功。耐震管の普及を後押ししました。

その功績は、現在の日本の水道管路の約6割(樹脂製パイプを含む)に、クボタグループの管材が採用されていることからもわかります。

そして100年の長寿命が期待できるGENEXの開発へ

東日本大震災発生の前年となる2010年、ついにクボタは新たな耐震型ダクタイル鉄管・GENEXを開発。このGENEXは、S形から受け継がれる耐震性能を持ちながら、高い施工性と、100年という長寿命が期待できる最新型の耐震管です。開発の背景には、長期間使用可能な耐震管を使いたいという、水道事業体からのニーズの高まりがありました。

クボタには何十年にもわたって集積してきた、全国3,000か所以上の埋設現場で採取した土壌サンプルと、鉄管腐食速度を分析した貴重なデータがあります。最も困難とされた「長寿命」を実現するため、クボタのエンジニアはこのデータをもとに「全国腐食性マップ」を作成。そして、日本国内の山地を除く国土の約95%をカバーする埋設環境での腐食度合を数値化し、現物を使った促進試験を繰り返しながら、100年間の使用が期待できる外面防食仕様を固めていきます。

具体的には、鉄管の外面にワイヤー状にした亜鉛系合金を溶かして吹き付ける溶射という手法に、封孔処理を施した耐食層を形成。部分的に鉄部が露出しても、耐食層の自己防食により、防食機能を維持することを可能としました。

「ポリエチレンスリーブ」と呼ばれる薄いポリエチレン製のフィルムを、埋設現場で鉄管に被覆していた従来に比べると、施工性が飛躍的に向上。しかも、埋設時の破損などで寿命が短くなるという心配もないことから、他に例をみない開発でした。まさに創業者から脈々と受け継がれてきた“鉄管研究開発スピリッツ”と、日本の水道管路の構築に貢献してきたという、水道管のトップメーカーとしての自負と責任感の表れといえます。

  • 被災地で管路の被害状況を検証し、データの集積に努めるエンジニア。

日本発「クボタ耐震型ダクタイル鉄管」は海外へ

阪神・淡路大震災以降、耐震管路の重要性が再認識され、耐震型ダクタイル鉄管は全国に広がっていきます。そして、ダクタイル鉄管における耐震管出荷比率は、GENEX販売の翌年には約80%、2017年には約95%を占めるまでに普及しています。

その耐震型ダクタイル鉄管が、2012年に米国・ロサンゼルス市で試験採用されることに。阪神・淡路大震災、東日本大震災でも被害を出さなかった実績が、ロサンゼルス市水道電気局員(当時)の目にとまったのです。GENEXの初めての海外案件は、布設延長数百m程度でしたが、クボタのエンジニアが管路設計から現地接合指導までを全面サポート。これを端緒に、地震多発地帯である米国西海岸エリアで、クボタの耐震型ダクタイル鉄管の採用案件は着実に拡がりをみせています。

  • 米国・ロサンゼルス市でのGENEX試験施工の様子。

IoTを活用した水道工事の生産性向上で地震に強い更なる管路の構築を目指します

(左から)
パイプインフラ事業部
石原 孝浩
小田 圭太
船橋 五郎
岸 正蔵

近年は地震に加え、大雨による大規模な土砂災害など、自然災害も増えています。我々が目指すのは、“より強度で、どんなときも蛇口から水が出る水道管路”の構築です。そのためにも常に現場の声、お客様の声に耳を傾け、時代のニーズを先取りした鉄管研究開発を続けていきます。また、日本の水道事業体は、水道予算の減少、技術者不足、事業量増加など様々な課題に直面しています。そうした課題解決のためにも、水道工事の生産性向上を図るIoTを活用した新たな技術・製品も積極的に研究開発を進めていきます。

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