次のリンクより、本文、本ページのローカルメニュー、このサイトの共通メニューに移動します。

環境負荷低減

多方面からのアプローチで農業のカーボンニュートラル実現をめざす

農業分野の環境負荷低減に向けた2本柱

世界的に深刻な気候変動の影響が広がるなか、温室効果ガス(GHG)の削減は全産業で共通する課題となっています。農業も例外ではなく、持続可能な社会をめざすためには、農業においてもGHG排出を大幅に削減し、環境負荷を低減する取り組みが急務です。

クボタは、GHGの排出を抑え、気候変動に対応できる社会の実現をめざし、農業分野での環境負荷低減に向けた取り組みを進めています。その1つは、農業のカーボンニュートラルです。土壌から発生するGHGを抑制する技術、農業機械(農機)や建設機械(建機)における動力の脱炭素化等により、農業のカーボンニュートラルに貢献しています。

もう1つは、農業における資源循環の実現です。不用物とされていた稲わらなどの農業残さからエネルギーを作り、農業機械や設備で再利用したり、汚泥から肥料を回収する「資源循環ソリューション」によって資源循環型農業の実現に貢献しています。

農業そのもののカーボンニュートラル

農機・建機の次世代動力化と生産拠点でのGHG排出抑制

クボタは、農機や建機の環境負荷を低減するため、ディーゼルエンジンに依存しない次世代の動力源の導入に力を注いでいます。

例えば、欧州を中心に脱ディーゼル化が加速しているなか、厳しい規制にも対応可能なバッテリー駆動の電動製品(EV)開発を本格化。また、東南アジアを中心に、バイオディーゼル対応の農機の販売と研究を推進しています。さらに、水素で駆動するエンジンの開発や、水素燃料電池(FC)を動力としたトラクタの開発も進行中です。

これら農機・建機の次世代動力化だけではなく、生産拠点においても、CO2排出量の少ない燃料への転換や再生可能エネルギーの利用拡大によって、GHG排出削減に取り組んでいます。

  • 水素燃料電池を動力とするFCトラクタは、既に実証実験段階へと移行しています。

農業の省エネ・省資源化にも貢献するスマート農業

クボタが推進するロボットやAI、IoTといった最先端の技術を駆使し、農作業の自動化や農業におけるデータ活用を実現するスマート農業は、農作業のムダを減らすことによって、省エネルギー・省資源化しつつ、高品質生産を実現します。

例えば、自動運転農機は、衛星位置情報(GNSS)を活用してほ場作業の最適なルートを設定し、効率の高い最短ルートで作業を完了させます。これにより、作業の重複などのムダが減り、燃料等の節約につながっています。

また、作物の品質や土壌の状態、作業実績をスマート農業対応の農業機械で記録し、それらの情報を精密農業システム(FMIS)に活用することで、来年の作付けの際に、ほ場内の場所ごとに必要な化学肥料・化学農薬の量を計画できます。適切な量を明確にすることで、環境汚染につながる過剰な化学肥料・化学農薬の使用を防ぎます。

  • ほ場内で必要な化学肥料・化学農薬の量をマップ上で表示。このマップに合わせて農機が可変施肥を行います。

土壌や水田からのGHG排出を抑制する取り組み

土壌から発生するGHGは、農業の環境負荷を高める一因となっています。特に水田からのメタン排出は大きな課題の一つです。メタンはCO2の約25倍の温室効果をもつGHGで、日本のメタン発生量の約4割は水田から排出されています。

クボタは自社開発した水田の水管理システムを活用し、稲の生育中に実施する「中干し*1」期間を約1週間延長することで、収量や品質に影響を及ぼさずに、メタン排出量を平均30%削減できることを実証しました。

また、直播*2技術や稲わらのすき込み*3、不耕地栽培*4を推進し、土壌からのGHG排出抑制に貢献しています。

  1. *1.夏期に田んぼの水を抜き、土にひびが入るまで乾かす作業。稲の根腐れを防いだり、刈り取りの作業性を高めるために行う。
  2. *2.水田に苗を植える方法と異なり、水田に直接種子を播く方法。育苗と田植え作業の負担を効率化し、田植機の燃料消費量を節減できる。
  3. *3.稲わらを農地に敷いて耕し、土壌に埋め込むこと。秋にすき込んで腐熟を進めることで、翌年の水稲栽培期間中の有機物の分解量を減少させ、メタン排出量を低減する。
  4. *4.ほ場を耕さずに種を播き、農作物を育てる方法。農地を耕起する回数を減らし、土壌から排出されるGHGの量を削減できる。
  • クボタが開発し、水田からのメタン排出量の抑制にも貢献している水管理システム。

さらに、施設栽培での環境負荷低減施策にも取り組んでいます。日本の農林水産分野からのGHG排出量の約35%は燃料燃焼が由来です。クボタはヒートポンプ空調など、燃料消費を抑えることのできるハイブリッド型の施設や設備の導入を推進し、GHG排出の削減を進めています。

資源循環型農業の実現

農業残さを再利用するための研究を推進

農作物生産の過程では、稲わらや麦わら、もみ殻、茎や葉、根といった残さが生じ、これらは一部が堆肥として再利用されるほか、ゴミとして処分されます。処分される農業残さの量を低減し、資源として再利用することが、農業におけるカーボンニュートラル推進のためには欠かせません。

クボタは、農業残さからメタンや水素を生成し、バッテリー農機(EV)や燃料電池農機(FCV)の動力として再利用するシステムを研究中です。さらには、バイオ炭*5の生成も行うことで、カーボンクレジットの創出が見込まれるガス化やバイオ炭生成システムの開発も推進しています。

  1. *5.生物由来の有機物を炭化したもの。土壌改良やCO2の吸収、土壌の透水性を改善する。

水・環境ソリューションで取り組む農業分野での資源循環

農業の環境負荷低減に寄与しているのは、農業関連のソリューションだけではありません。水・環境領域で培われた技術、ソリューションも駆使して、農業における資源循環を実現しています。

例えば、廃棄物処理の課題を解決するクボタの「資源循環ソリューション」の技術によって、下水汚泥からリンを回収し、肥料として再利用することをめざしています。また、水環境事業で用いられる浄化槽・下水処理技術を農業でも応用し、水をはじめとした各種資源の再生につなげています。

浄化槽・下水処理技術を応用した水資源の再生にはじまり、廃棄物処理のための「資源循環ソリューション技術」を用いて、下水汚泥からリンを回収、肥料として再利用するシステムの開発にも取り組んでいます。