次のリンクより、本文、このサイトの共通メニューに移動します。

お問い合わせ

TECHNOLOGY

産業界の低炭素化・脱炭素化を推進多様化するニーズとカーボンニュートラルに貢献する
クボタエンジンの3大ソリューション

2023 . 10 . 31 / Tue

海外の展示会で展示されるクボタのエンジン

写真・文:クボタプレス編集部

世界の国や企業がカーボンニュートラルの実現をめざしている昨今、さまざまな産業の動力を担うエンジンにおけるカーボンニュートラルは、避けては通れない課題の一つです。今回のクボタプレスでは、この課題に対して取り組むクボタのエンジン事業について迫ります。

多様化する産業用エンジンへのニーズ

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、合計をゼロにする取り組みです。2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みを示したパリ協定(2015年)において、「21世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、吸収源による除去量との均衡を達成すること」が目標に掲げられ、世界の国や企業はその達成に向けて取り組みを進めています。

カーボンニュートラルの概念を表したイメージ図。左側に排出されたCO2、右側にCO2削減活動とCO2吸収活動が天秤にかけられ、釣り合っている状態

カーボンニュートラルとは、自然保護や都市の緑化などの吸収活動によるCO2排出量の削減分を差し引き、排出量実質ゼロとなる脱炭素社会をめざすものです。

他の業界と同様に、産業界でもカーボンニュートラル実現に向けた動きが加速しており、各企業は環境負荷低減という課題に直面しています。一方で、産業機械は建設機械や農業機械、車両や発電機など非常に種類が多く、その使われ方や使われる環境、国による法規制も異なります。そのため、カーボンニュートラル実現に向けたアプローチもさまざまです。

カーボンニュートラルに貢献しながら、産業機械の動力源となる。産業用エンジンに対するニーズは、これまで以上に多様化しているのです。

OEMの要望に応え続けるクボタエンジン

クボタのエンジン事業は、各OEM*1が手掛ける産業機械に対応したカスタマイズを強みとしています。これまでもOEMの細かなニーズの一つひとつに応え続け、3,700種類以上*2にもおよぶエンジンを開発し、幅広い産業機械の動力を担ってきました。

  1. *1.クボタのエンジンを購入し、自社の製品に搭載し販売するメーカーのこと
  2. *2.2023年1月現在

産業用エンジンにカーボンニュートラルが求められるようになった今も、ニーズに応じたカスタマイズを行い、OEMにとって選択肢となるエンジンを提供し続けるというクボタの姿勢に変わりはありません。クボタはカーボンニュートラルという新たなニーズに対応するために、100年以上にわたり培ってきた技術と経験を活かし、さらなる低炭素化・脱炭素化を進める3つのソリューションを推進しています。

カーボンニュートラルに貢献するクボタのエンジンソリューション

クボタが取り組むのは「ピュアエンジン」「ハイブリッド」「フューエル」の3つのソリューションです。それぞれ異なるアプローチによって、カーボンニュートラルの実現に挑戦しています。

ピュアエンジンソリューションは、既存のエンジンのさらなる低燃費化に向けた取り組みです。例えば、2022年に量産開始した小型電子制御エンジンD902-Kは、クボタ独自の燃焼方式「TVCR」が採用されています。

TVCRとは、大型ディーゼルエンジンに搭載されていたコモンレールシステムという電子制御システムを、小型エンジンに最適化したもの。これにより黒煙の排出を抑え、エンジンのコンパクトさを維持して低燃費化を実現します。

写真左はTVCRを搭載した電子制御小型ディーゼルエンジン「D1105-K」。写真右は同じくTVCRを搭載した「D902-K」。

D902-K(写真右)と同じくTVCRを搭載した電子制御小型ディーゼルエンジン「D1105-K」(写真左)も、2023年に量産開始予定です。

ハイブリッドソリューションは、エンジンに電動モーター機構を組み合わせたソリューションです。瞬間的に高出力・高負荷が必要な時に電動モーターがエンジンの出力を補います。そのぶん、例えば本来は3Lクラスのエンジンが必要なところを2.4Lや1.8Lクラスのエンジンで対応でき、ダウンサイジングと低燃費化を実現します。

電動モーターのコイルが格納されている、ハイブリッドエンジン「D1803 P1」のフライホイールの裏側のアップ

ハイブリッドエンジン「D1803 P1」のフライホイールの裏には、電動モーターのコイルが格納されています(写真は展示用)。

フューエルソリューションは化石燃料の代替となる燃料が使用できるエンジンソリューションです。クボタのディーゼルエンジンは、上記したD902-KやD1105-Kも含め全て、植物油に水素を加えて生成するHVO(Hydrotreated Vegetable Oil)という燃料に対応しています。HVOは原材料の植物が生育時にCO2を消費し、燃焼時に排出したCO2を相殺できるため、HVOに対応したエンジンはカーボンニュートラルに貢献していると言えます。

また、クボタはこれまで積み上げてきたエンジン技術をベースに、水素を燃料とする産業用エンジンの開発も進めています。燃焼時にCO2を発生しない水素を燃料とする産業用エンジンによって、脱炭素化への貢献をめざしています。

海外の展示会で展示されているクボタが開発を進める3.8L水素エンジン

クボタが開発を進める3.8L水素エンジン。2022年9月、発電機や溶接機、コンプレッサーを手掛けるデンヨー株式会社が、クボタの産業用水素エンジンを搭載した「水素専焼発電機」の開発に着手したことを発表しました。

エンジンの脱炭素化と言うと電動化がイメージしやすいものですが、産業機械はすべて電動化できるとは限りません。産業機械は高い出力を必要とすることが多く、また稼働する現場も電力を確保しやすい場所だけではないからです。電動化しにくい産業機械でも脱炭素化の推進を可能とするべく、クボタは低燃費化やハイブリッド化、代替燃料への対応を行ったエンジンを供給し、幅広い選択肢の中から自社製品に最適なエンジンソリューションを選べる環境をめざしています。

世界に広がるクボタエンジンのビジネス網と人材がOEMを支える

クボタがカーボンニュートラルという視点を盛り込んだ産業用エンジンを実現できた要因は、グローバルに広がるエンジンビジネスの情報網と人材にあると語るのは、株式会社クボタ エグゼクティブオフィサー エンジン事業部長の種田敏行さんです。

クボタの種田さん

種田敏行(たねだ としゆき)さん。1989年に久保田鉄工株式会社に入社。約5年間のクボタヨーロッパS.A.S(フランス)での駐在を経て、帰国後は海外向けエンジンの開発に注力。2014年にはエンジン技術部長に就き、ハイブリッドエンジンや小型電子制御エンジンなどを手掛けられました。2022年からエンジン事業部長に就任されています。

クボタのエンジン事業は、OEMを最大限にサポートするために、そのネットワークを拡大することに専念しています。

「グローバルに事業を展開する中で、世界各国から市場や政府の動き、OEMの要望といった情報が集められています。例えば日本でまだ流通していないHVOが海外で使われ始めたら、その情報を元に事業戦略を定め、クボタのエンジンをHVOに対応させてカーボンニュートラルに貢献する。さまざまな国や地域、使用環境、法規制、時代の要請に合わせたエンジンを提案できるのがクボタの大きな強みです」

この強みを発揮するための体制が整っていることも「クボタの大きな資源」だと種田さんは続けます。

「クボタのエンジン事業には、OEMとディスカッションして必要なカスタマイズを明確にする営業部門、OEMの要望に合わせたカスタマイズができる技術や工場、製造、調達部門、何千種類とあるエンジンに対し満遍なくアフターサービスを行うサービス部門があります。一社一社のOEMがそれぞれにマッチするようカスタマイズされたエンジンを選び、最適なサービスを受けることができる組織を築き上げているのです」

大切なのは、互換性を持ったエンジンを供給し続けること

「ピュアエンジン」「ハイブリッド」「フューエル」という時代に即したエンジンソリューションを推進する一方で、クボタが製品を供給する中で大切にしていることは、従来製品との互換性です。

「産業機械には、最先端の技術ばかりが導入されるわけではなく、レガシーなパーツも必要不可欠です。たとえそのパーツがなくなったとしても、突然作れなくなることがないように日々研究開発を進めています」と種田さん。それだけ、クボタのエンジンは「供給し続けること」に注力しているのです。

「産業機械は非常に長い耐用年数を持っています。エンジンの形が変わると、エンジンが搭載される産業機械の設計も変える必要が出てきます。しかし、産業機械の長い耐用年数を考えると、設計をガラリとつくり変えるのは難しい。だからこそ、クボタは厳しくなっていく排ガス規制に対応しながらも、同じ形のエンジンをできるだけ作り続けることにこだわっています」

「新しい価値だけを追求していっては、社会の要望に応えられないと思っています。お客様は安定的な供給を強く望まれているので、社会の要望に合わせながらいかに作り続けるかが重要です」

世界中にカーボンニュートラルに貢献するエンジンを届ける

エンジンは、私たちが普段目にすることのできない場所で活躍し、私たちの日常生活を支えています。

「私たちは産業用エンジンを通じて、社会を支えている矜持を持っています。その中で、カーボンニュートラルという新たな社会の要請にも対応しながら、豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています」と、エンジン事業のめざす姿を語った種田さん。

産業用エンジンのカーボンフットプリント(製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの排出量)を減らすために、技術部門や営業部門、サービス部門、製造工場などが「One Kubota」となって臨み、世界中にカーボンニュートラルに貢献できるエンジンを届ける。そんな強い思いが感じられた取材となりました。

SHARE

  • Facebook 公式企業ページ
  • #クボタ hashtag on Twitter