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水道管路の更新計画策定を支援する新サービス『ハザード被害AI予測システム』と『断水エリア予測システム』を提供開始 水道管路の断水リスクを最小化する更新工事の優先順位付けをサポート

2025年5月29日
株式会社クボタ

株式会社クボタ(本社:大阪市浪速区、代表取締役社長:北尾裕一、以下「当社」)は、水道管路の更新計画策定業務をサポートする2つの新サービス『ハザード被害AI予測システム』『断水エリア予測システム』を開発し、水道事業体向けに提供を開始しました。
新サービスの開発により、地震や豪雨など多発化・激甚化する自然災害による水道管路の被害を予測できるようになりました。また、老朽化による被害を予測する当社既存サービスと組み合わせることで、平常時および地震時の断水による影響度を算出し、断水リスクを最小化する更新工事の優先順位付けが可能になりました。
当社はこれらのサービスを通じて、水道事業体の管路更新業務をトータルで支援し、最重要ライフラインである水道管路の維持による市民生活の安全・安心の確保に貢献してまいります。

1.開発の背景とねらい

  • 日本の水道管路は約74万㎞もの総延長があるうち法定耐用年数である40年を超えて使用されている水道管は全体の20%を超えており、老朽化した水道管の破損による漏水事故が多発しています。
  • また、自然災害が多発化・激甚化する中で、耐震化による災害への備えも急務です。水道管路のうち基幹管路の耐震適合率は全国で42%と半分以下に留まっています。能登半島地震でも、浄水場などの急所施設*や病院などの重要施設につながる管路が被害を受け、広範囲かつ長期間にわたり断水が発生して避難生活や復旧に大きな影響を与えました。
    *その施設が機能を失えば上下水道システム全体が機能を失う最重要施設
  • 老朽化した水道管の更新と耐震化は急務の課題でありながら、多くの水道事業体は財政難や担い手不足といった課題から、思うように管路の更新が進められていない状況にあります。限られたリソースの中で少しでも優先度の高い管路から更新を進めることが求められますが、水道管の多くは地中に埋設されており、管路ごとの正確な老朽度を判断することが難しく優先順位を付けづらいという課題もあります。
  • こうした課題に対し、国は急所施設や重要施設につながる管路を優先して耐震化するよう指示するほか、水道事業体の業務を高度化・効率化するDX技術の導入を後押ししはじめています。民間企業に対しても、水道事業体を支援するソリューションの開発が求められています。
  • このたび当社は、水道管路の更新において、「断水影響度」という観点に着目し、効果的な優先順位付けをするための2つの技術を業界で初めて開発しました。断水影響度が高い順に水道管路の更新優先順位付けをすることで、水道事業体は限られた予算の中で断水による市民生活への影響を最小限に抑えることが期待できる更新計画の策定が可能になります。

2.新サービスについて

(1)『ハザード被害AI予測システム』の特長

  • 『ハザード被害AI予測システム』では、地震など自然災害時に被災する管路をピンポイントに、また被害の度合いを高精度に予測できます。
  • 地震時の管路被害を予測する手法は従来からありましたが、250m四方で区切ったメッシュごとでの推定でした。メッシュ内でも被害率にバラつきがあり、実際には被害率が低い管路も含んでしまうという課題がありました。新技術では管路単位でピンポイントに被害率を算出できるため、より効果的な更新計画の作成が可能になります。
  • また被害度合いの予測については、従来手法では考慮していなかった地盤境界や管路形態といった新しい要素を大幅に増やし、耐震管を開発した水道管のトップメーカーである当社が保有する過去の大規模地震時における管路被害調査データや地震時の管路の挙動実験データを機械学習させてAI予測モデルを構築することで、従来手法よりも予測精度が3倍以上に向上しました。
  • さらにハザードマップなど自治体が整備したデータを活用し、従来手法ではカバーできていなかった洪水や土砂崩れによる管路被害についても予測できるようになったことも特長です。

(2)『断水エリア予測システム』の特長

  • 更新優先順位付けした管路のイメージ

  • 『断水エリア予測システム』は、管路が破損した際の断水戸数を予測し、また、平常時と地震時それぞれの「断水影響度」を算出することで断水の影響を最小限に抑制するための更新優先順位を提案するシステムです。
  • 水道管路は網目のように複雑に入り組んでいるため、破損箇所が予測できてもその破損によってどのエリアが断水するかの把握が困難で、破損による市民生活への影響がどれほど大きいのかが分からないという課題がありました。
  • そこで当社は、地震時の破損は「ハザード被害AI予測システム」で、平常時の老朽化による破損は「老朽度AI評価システム」(2021年4月からサービス提供中)で予測した結果と、水の流れの変化の予測結果を組み合わせることで、断水戸数の予測を可能にしました。
  • 本システムでは、断水影響度という独自の指標を用いて、水が使えなくなることによる不自由さを数値化しました。断水影響度は、「管路が破損する確率」「破損時の断水戸数」「復旧に必要な日数」から算出するもので、実際の市民生活へのインパクトを示しています。
  • 断水影響度に着目した管路更新の優先順位付けを行うことで、断水被害を抑えることができる効率的な更新計画の策定を可能にするとともに、定量的なデータを示すことで生活者や議会に管路更新の効果をわかりやすく説明することができます。例えば管路更新の予算規模の増減による断水リスクの変化を示すことで、適切な予算や更新率を検討しやすくなるメリットがあります。
  • なお、『断水エリア予測システム』は京都市上下水道局様の提案型共同研究に採択され、「平常時と地震時の断水影響を考慮した水道管路の更新優先順位付け手法に関する共同研究」(2025年4月~2026年3月)を実施しています。
    京都市上下水道局 提案型共同研究の採択について(2025年4月18日)
    https://www.city.kyoto.lg.jp/suido/page/0000339081.html

3.サービスの提供について

  • 『ハザード被害AI予測システム』と『断水エリア予測システム』は、2025年5月から全国の水道事業体を対象にサービス提供を開始しました。
  • 当社および子会社である株式会社管総研が水道事業体様から業務として受託し、システムを利用した診断・予測結果を提供します。
  • また、当社の『自動工区割システム』を併せて活用することで、各年度の事業実施計画案の策定も支援できます。これまで多くの労力を掛けていた工事区間の設定作業(工区割り)を効率化するとともに、管路ごとの更新優先順位を反映した工事区間ごとの更新優先順位付けを行い、実際の管路更新に近い条件で更新の効果を評価することができます。

4.今後の展望

  • 今後も事業体との共同研究などを進め、管路の診断から管路の断水リスク評価、工事発注区間の設定までの一連の業務を支援する技術について、さらなる精度向上を図ります。
  • また、将来的には、管路の更新計画策定や維持管理を支援するシステム群のデータを、更新工事の設計から施工業務の効率化までを支援するクボタスマート水道工事システム「PIPROFESSOR」とデータ連携することで、水道管路全体の課題解決に貢献するDXシステムの構築をめざしています。
  • 当社は、耐震化のための管路資機材の提供などのハードとソフトを併せて、管路に関する一連の業務を複数の水道事業体からウォーターPPPとして包括的に受託し、水道事業体およびパートナーとなる協力企業とともに実施できるよう、事業を展開してまいります。

ご参考

  • 自動工区割システム
  • クボタスマート水道工事システム「PIPROFESSOR」
サービスに関する問い合わせ先

株式会社クボタ パイプシステム東日本営業部 東京営業第一課 TEL:03-3245-3173

以上

ニュースリリースに記載されている情報は発表時のものであり、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承下さい。

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