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ごみ焼却灰から有価金属を高効率に回収する実証実験を完了 新たなメタル分離機を開発、溶融分離技術と組み合わせて都市鉱山の有効活用をめざす

2025年7月14日
株式会社クボタ

株式会社クボタ(本社:大阪市浪速区、代表取締役社長:北尾裕一、以下「当社」)は、廃棄物の焼却灰を溶融処理することで製造された溶融スラグ*1に混在するメタルを高効率に回収する「メタル分離機」を新たに開発しました。実証実験では、金や銅などの有価金属を含んだメタルの回収率*2が当社従来機比で2倍以上に向上し、また、回収したメタルは製錬メーカーの購入基準を満たす高濃度であることが確認でき、高回収率と高品質の両立に成功しました。
今後、溶融スラグからのメタル分離システムを全国の自治体や民間の廃棄物リサイクル事業者に提供することを通じて、有価金属の濃度が低いためにこれまで利用されていなかった領域の都市鉱山を有効活用し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献してまいります。

  1. *1.溶融スラグ:焼却灰を約1300度以上の高温に保った溶融炉で溶かした後に水中で急速冷却することで得られる生成物。
  2. *2.メタルの回収率:溶融スラグ中に含まれるメタルのうち、回収できたメタルの量の割合のこと。
  • 実証実験で用いたメタル分離機の外観

  • 溶融スラグから回収したメタル(スラグ混入率10%以下)

1.背景

  • 金属資源は、採掘時の環境への影響低減や経済安全保障の観点から、資源循環の取り組みが求められています。廃棄物に含まれる金属資源は「都市鉱山」として見立てられて再資源化が期待されており、小型家電などはリサイクル法の施行により活用が促進されています。
  • 一方、産業廃棄物や家庭から排出される一般廃棄物や下水汚泥の中にも金、銀、銅、白金、パラジウムなどの有価金属が含まれていますが、含有濃度が低いため従来は分離・回収が難しく、採算が合わないことから有効活用が進んでいませんでした。
  • 当社は、廃棄物を高温で溶融して、かさ(量)を減らすとともに、有害物質を分解・分離し、さらに建設用資材などに利用される溶融スラグを製造して再資源化を可能とする「回転式表面溶融炉」に加え、溶融スラグから有価金属を含むメタルを回収するための「メタル分離機」の開発にも取り組んできました。これらの技術は、「国内最大級の不法投棄事件」と言われた香川県・豊島の産業廃棄物の処理にも用いられ、廃棄物の全量資源化に貢献しました。
  • しかし、従来のメタル分離機では溶融スラグとメタルの分離が不十分で、メタルの回収率を高めると回収したメタルに混入するスラグが増え、有価金属の濃度が低下するという課題がありました。有価金属の資源循環をめざすにあたり、より高効率に溶融スラグからメタルを回収するための新たなメタル分離機の開発が不可欠でした。

2.実証実験の概要

  • 当社は、長野県長野市で2025年1月から4月までの約3カ月半の間、新たに開発したメタル分離機を用いて、溶融スラグからメタルを分離・回収する実証実験を実施しました。この実証実験は、当社の溶融炉が稼働しているちくま環境エネルギーセンターを管理する特別地方公共団体・長野広域連合と、同センターで製造された溶融スラグからリサイクル建設資材を製造・販売する地元企業・高沢産業株式会社の協力を得て行われました。
  • メタル分離機は、最新のシミュレーション技術を駆使して分離機内のスラグとメタルの挙動を再現した結果をもとに内部構造を見直すことで、スラグとメタルの分離効率を格段に向上させました。
  • 実証実験の結果、溶融スラグ約200トンから約1トンのメタルを回収し、当社従来機と比較してメタル回収率を2倍以上に大幅向上させました。同時に、メタルに含まれるスラグの混入率が10%以下となる高濃度での回収を達成し、製錬メーカーにリサイクル原料として供給可能な品質であることが確認できました。
  • 回収したメタルの中には金、銀、銅、白金、パラジウムを含むことが確認されました。特に金は約400~530mg/kgと金鉱石*の約100倍相当の含有率であり、これは年間の溶融スラグ発生量約900トンから試算すると、約2,700万円~3,600万円の価値(2025年6月現在)に相当します。
    • 金鉱石:金を含有している鉱石のこと。通常、金は鉱石中に数mg/kg程度のわずかな量しか含まれていない。
  • 長野市および周辺地域では、溶融スラグを建設資材として再利用してきました。この取り組みに加えて、メタル分離機の活用によって溶融スラグから価値ある金属を取り出すことが可能になり、地域のさらなる資源循環への貢献が期待されます。

3.今後の展望

当社は、このたび新たに開発したメタル分離機を2025年中に商用化することをめざし、全国の自治体や民間の廃棄物リサイクル事業者に提供してまいります。溶融分離技術とメタル分離回収技術を組み合わせることにより都市鉱山を有効活用し、資源循環ソリューションの提供を通じた社会課題の解決に取り組んでまいります。

  • メタル分離実証試験機の外観(メタル分離機は左側)

ご参考

以上

ニュースリリースに記載されている情報は発表時のものであり、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承下さい。

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