クボタ技報 No.53 2020年 1月
「クボタに受け継がれる信念」
クボタ技報53号には、ICTによる農作業の効率化・軽労化や生産性向上に貢献する自動運転アシスト機能付きのトラクタ・コンバイン・田植機、除菌・加湿により感染症疾患の予防にも貢献する空気清浄機、上下水道の強靭なインフラ整備に貢献する耐震型ダクタイル鉄管や樹脂製フランジなどの製品開発と、クラウドコンピューティングやAIを活用した新しいサービスの紹介など、モノとコトの両面で、創業者の信念を受け継ぎ、社会の皆様に役立つものの事例を掲載しています。ご一読いただき、クボタの取り組みについてご理解を深めていただければ幸いです。

機械部門

国内向け直進アシスト機能付き小形トラクタの開発トラクタ技術第一部/機械研究第一部
日本国内の農業は高齢化を背景に経験年数の浅い従事者の割合が増えており、熟練したスキルを有する人員の不足が問題となっている。クボタはこの問題への解決手段の一つとして2016年に水田作業に対し直進キープ機能付き田植機を市場投入した。一方で、畑作における小形トラクタ作業においても熟練したスキルが必要な作業が多く、同様の問題を抱えている。この問題に対し直進キープ機能を活用し省力化・効率化を図ることを目的とし、畑作作業に適応したNB21GS直進アシスト機能付き小形トラクタを開発、市場投入した。本稿では、自動操舵に関わるトラクタ作業の特徴を明確にし、開発技術について紹介する。
- ロボット
- 自動操舵
- GNSS
- GPS(全地球測位システム)
- 傾斜地
- 関連するSDGs
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自動運転アシストコンバインWRH1200Aの開発収穫機技術部/システム開発第一部
日本農業は、離農や高齢化に伴う農家戸数の減少により、担い手農家への農地集約と規模拡大が加速している。しかしながら、担い手農家では人手不足や省力化への対応などさまざまな問題を抱えている。こうした問題を解決するため、クボタではGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した直進キープ機能付田植機や自動運転トラクタを実用化してきた。コンバインにおいても、収穫時期になると収穫→乾燥・調整→出荷とハードな日が続く作業者の負担軽減を求められていた。そうした要望に応えるため、GNSSを利用し、「誰もが、簡単操作で・楽に・無駄のない最適収穫ができるコンバイン」をコンセプトにした業界初となる自動運転アシストコンバイン「WRH1200A」を発売した。
- コンバイン
- 自動運転
- GNSS
- 走行制御
- アシスト
- 関連するSDGs
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国内向けディーゼル乗用田植機NW6S/8Sの開発移植機技術部/機械研究第一部
国内農業では大規模農家への農地集約が進んでおり、担い手農家のニーズに応える製品開発が重要である。本開発では「担い手農家の経営課題を解決する高性能・高精度な田植機」をコンセプトに、基本性能の向上と資材節減というセールスポイントを持つ製品を開発した。本稿では開発技術の中から、田植機の基本性能の一つである深田走破性向上への取り組みと、資材節減につがなる新セールスポイントとして創出した「株間キープ」「施肥量キープ」機能の開発について紹介する。
- 深田走破性
- 軽量化
- 資材節減
- 高精度化
- スリップ補正
- HST
- 関連するSDGs
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高速ガソリンUtility Vehicle RTV-XG850の開発ユーティリティービークル技術部/トラクタ第三事業推進部
Utility Vehicle(以下UV)の主市場である北米市場は2010年から2018年の間に市場全体の規模が約24万台から49万台と倍増するまでに成長した。この成長を牽引しているのは仕事と遊びの両用途を主体とする最高速が40km/hを超える高速ガソリンUVの市場である。今回、事業拡大のため、クボタ製品最速となる高速ガソリンUV市場対応モデルRTV-XG850を開発し、2018年に市場投入した。この開発過程で1)米国排ガス規制に合致したクボタとしてはじめてとなる車両排出ガス認証(CARB/EP A,F TP-75(b)MODE認証)の取得、2)優れた操縦安定性確保のため、車速に応じて操舵力を適正化できる電動パワーステアリングシステムの採用と最適化、3)あらゆる使用状況において安全、また安心して車両を制御できるブレーキ耐久性能の技術開発、以上3点を課題ととらえ、技術開発に取り組んだ。
- ユーティリティービークル
- 高速ガソリンUV市場
- 電動パワーステアリング
- ディスクブレーキシステム
- 車両排出ガス認証
- CARB/EPA FTP 75(b)MODE
- 関連するSDGs
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トラクタ用サトウキビ葉除去インプルメントSLR110Hの開発KUBOTA Research and Development Asia Co., Ltd.
サトウキビはアジアの中で経済性の高い主要作物である。サトウキビ収穫には、欧州から輸入したシュガケーン・ハーベスタが使われているが、収穫ロスが多いこと、コンタミが多いこと、価格が高いことから台数は多くない。現在、主に人手によって収穫されており、その割合は約83%となっている。人手による収穫は重労働のため、収穫前にサトウキビの葉焼きが一般的に行なわれている。しかしながら、葉焼きによる収穫重量の減少と製品価値の低下が課題となっている。さらに現在タイではPM2.5による大気汚染の問題が拡大しており、農作業の野焼きが主な要因となっている。タイ政府は本問題の解決のため、「ゼロ・バーン(野焼きゼロ)」政策を掲げている。そこでクボタ・リサーチ アンド ディベロップメント・アジア(以下KRDA)は、「ゼロ・バーン」政策と環境保全に対応したSLR110Hシュガケーン・リーフ・リムーバを開発した。現在、SLR110Hの販売台数は継続的に伸びており、さらにアジア各国への輸出を拡大している。
- サトウキビ葉除去インプルメント
- ローラ
- トリマ
- 関連するSDGs
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大容量空気圧種子供給システムの開発Great Plains Manufacturing, GP Engineering
グローバルな農業機械化は、市場競争が激化しており、その結果、より効率的で生産性の高い技術が必要になっている。植付け速度が速いほど効率は向上するが、空気圧種子供給システムの能力がより必要となる。プランタの旋回時、外側の列がプランタの内側の列よりも長い距離を移動するため、従来の駆動技術で植付けると、植付け間隔にばらつきが生じてしまう。Great Plains PL5000シリーズのプランタには、ユーザの効率と収量を向上させる複数の開発が含まれている。空気圧種子供給システムは、最大植付け速度と対応できる作物の種類を増やすように設計した。シードメータドライブコントローラは、プランタの幅全体で自動調整による回転補正を実現し、回転半径の中心近くでも外側でも、一定の植付け間隔を維持できる。
- 空気圧種子供給
- 回転補正
- プランタ
- 精密ドリル
- 数値流体力学
- 関連するSDGs
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CRS-ECUの開発エンジン技術部
近年、産業用ディーゼルエンジンは排出ガス規制や燃費の向上だけではなく、様々な顧客要望に対応することが求められており、従来よりも高度な電子制御技術の適用が必要とされている。中でも排出ガス規制の厳しい高出力帯のディーゼルエンジンでは電子制御による燃料噴射制御機構の1つであるCRS(Common Rail System)の搭載が主流となっており、CRSの電子制御装置であるCRS-ECU(CRS-Electronic Control Unit)はエンジンの商品価値を高める上で重要な要素となっている。したがって市場におけるクボタのエンジンの競争力を今後も維持・拡大するためには、今まで以上に効率的なCRS-ECUの開発体制構築が必要不可欠である。しかし、現行のCRS-ECUにはハードウェアスペックによる制約やソフトウェアアーキテクチャに課題があり、市場要望への迅速な対応を困難にしていた。この課題を解決するため従来とは異なる設計思想のもと、より市場競争力の高いCRS-ECUの新規開発を行った。
- 電子制御装置
- コモンレールシステム
- モデルベース開発
- AUTOSAR
- 関連するSDGs
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中国普通型コンバイン搭載 KET製ディーゼルエンジン V2403-M-DI-TIの開発エンジン技術部
KAMS(Kubota Agricultural Machinery SUZHOU)製の主力コンバインPRO688に搭載されているKET(Kubota Engine Thailand)製V2403-MDI-Tは、03シリーズ初の4弁E-CDIS(Environment, Earth, Ecology-Center Direct Injection System)方式を採用し、低燃費化ニーズに応えた機種として、2015年から量産している。今回、市場ニーズの更なる高出力化・低燃費化に応えるため、KAMS新機種PRO758搭載用としてインタークーラ仕様のKET製V2403-M-DI-TIを開発した。本稿では、高出力化・低燃費化を達成するための最重要課題である信頼性向上のアプローチについて述べる。
- KET
- V2403-M-DI-TI
- 低燃費
- 高出力化
- 耐久信頼性向上
- 関連するSDGs
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欧州向けミニバックホーKX027-4の開発建設機械技術第一部
欧州ミニバックホー市場において、2-3トンクラスは年間10000台規模の大きい需要帯である。クボタは、2014年に市場導入した2.6トン後方小旋回型ミニバックホーU27-4を中心に高いシェアを確保しているが、さらなるシェア拡大のため、2.6トン標準型ミニバックホーKX027-4の開発を行った。欧州市場では、体格の大きなオペレータが多く、運転席の居住空間の拡大に対する要望が高まっている。そこでKX027-4では、キャビンを従来より大きくし、「安全・安心な労働環境の促進」に取り組むこととした。しかし、機械の輸送時の制約により、機械質量を増加させることができないため、従来構造のままキャビンの大型化を行うことができない。そこで本稿では、オペレータの居住性向上のために従来キャビンより大型化し、目標の機械質量を達成するために軽量化したKX027-4アルミ合金製キャビン(クボタ建機初)の開発について述べる。
- ミニバックホー
- キャビン
- アルミ合金
- 居住空間拡大
- 軽量化
- 関連するSDGs
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業務用加湿空気清浄機ピュアウォッシャーの開発電装機器開発営業部
室内の空気質改善を目的とした空気清浄機の需要が高まる中、新規事業として今後の成長が見込める業務用加湿空気清浄市場への参入をめざし「ピュアウォッシャー」を開発した。クリーンルーム用空調機として実績のあるエアワッシャの水噴霧技術の応用とコンパクト化、微酸性電解水を活用した除菌技術をコア技術とし、メンテナンス性とデザインに重点を置いて開発を進めた。空気清浄機としての性能評価により除菌率99%、臭気ガス除去率90%以上、加湿量2.7kg/h(20℃DB・30%RH時)を確認した。完成後は空気清浄機市場への新規参入を達成した。
- 空気清浄機
- エアワッシャ
- 微酸性電解水
- 加湿
- 除菌
- 消臭
- 関連するSDGs
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水・環境部門

トンネル内配管用新耐震型ダクタイル鉄管US形R方式の開発パイプネットワーク技術部
昨今、大規模事業体において、大口径の基幹管路の更新事業が多く計画されている。大口径管路の工事は、道路下に構築したシールドトンネル内で配管されることが多く、これまで実績のあるUS形ダクタイル鉄管が採用されてきた。しかしながら、鋼管との競争が激しさを増す中、工事期間の短縮やシールドトンネルの曲線部における管路布設費の低減等、客先からUS形ダクタイル鉄管に対する改善要望を頂いてきた。そこで、様々な要望に応えることができるシールドトンネル内配管用の新しい耐震型ダクタイル鉄管「US形R方式」を開発した。
- 新形状ゴム輪
- ロックリングサポータ
- 角度付き直管
- 工事期間短縮
- 管路布設費低減
- 関連するSDGs
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エチレン製造用分解管AFTALLOY+MERTの開発鋳鋼技術部
エチレン製造用分解管は、石油化学産業のエチレン製造プラントの基幹部品である。今回、1996年から20年以上、世界21カ国・地域で延べ600炉以上の分解炉に採用されているクボタ独自技術の「MERT」に、耐コーキング性や耐浸炭性に優れることで、近年、世界各国の分解炉で採用が増加しているアルミ入り材の材料技術(クボタ製品名「AFTALLOY」)を結合させた高機能製品「AFTALLOY+MERT」を開発した。本製品を石油化学大手の商用炉に適用した結果、高評価を得て特命化されつつある。本稿では、本製品の開発の一端について報告する。
- 分解管
- コーキング
- 撹拌エレメント
- プラズマ粉体肉盛溶接
- アルミナ成膜
- 関連するSDGs
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省電力型直胴遠心脱水機の開発環境プラント技術部/環境プラント設計調達部
近年、下水道事業においても省エネ化への取組みが喫緊の課題となっており、下水処理設備はこれまで以上にエネルギー消費量の削減が求められている。下水汚泥の減容化で用いられる遠心脱水機は、汚泥性状の変動に強い、難脱水汚泥への適用性が高い、大規模処理が可能で処理安定性が高いといった特長を持ち、広く採用されている一方で、他の脱水方式と比較すると消費電力が高く、電力の一層の低減が課題となっている。クボタの直胴型遠心脱水機は環境プラント事業における主力機種となっており、脱水性能に関して高い評価を得ているが、客先の省エネニーズに応じるためにはより一層の消費電力削減が必要であった。本稿では直胴型遠心脱水機の消費電力を低減し、遠心脱水機で業界No.1の省エネ性能を有する省電力型直胴遠心脱水機の開発について報告する。
- 下水道
- 遠心力
- 脱水機
- ケーキ含水率
- 省エネ
- 関連するSDGs
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脱水汚泥の非加熱改質による省エネルギー肥料化技術の開発水環境開発第三部/環境プラント技術部
今回新たに開発した下水汚泥の肥料化技術は、数百℃の熱源を用いる加熱乾燥方式とは異なる。脱水汚泥を常温下で汎用薬品により改質し、90℃以下の温度環境下で物理圧搾することにより、加熱乾燥並みの低含水率化を可能とした。脱水汚泥中の水の大半を液体のまま除去することから、水を蒸発させて除去する加熱乾燥と比較して省エネルギーなシステムであることが特長である。また、システムから発生する資源化物の肥料としての適用性を確認した結果、従来の汚泥由来の肥料と比較して作物の生育性、収量において優れた結果を得た。本システムの導入候補となる中小規模の下水処理場では、財政が逼迫する中で、設備の導入、更新において低ライフサイクルコスト(以下LCC)であることが求められている。本方式は、従来の汚泥資源化技術よりも低いLCCを達成しており、コスト競争力でも優位性を発揮することが可能である。
- 下水汚泥
- 省エネ
- 肥料化
- 関連するSDGs
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液中膜SPの産業排水への適用膜システム部
液中膜SPは2011年に下水市場向けに上市して以降、北米、欧州、中東、日本等の下水処理分野で約50件の納入実績がある。クボタでは、2017年、日本の中大規模産業排水分野での拡販を目的に国内大手食品会社工場にて液中膜SPを用いた実証実験を行い、施設設計諸元及び膜のメンテナンス性等を確認する活動を実施した。その後、同工場への産業排水向け1号機を納入することができた。本稿では液中膜SPの産業排水適用に向けた活動について報告する。
- 膜分離活性汚泥法
- 液中膜®
- 産業排水
- 関連するSDGs
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樹脂製フランジの研究(株)クボタケミックス 開発部
日本の工場の多くは高度成長期に建設され、約50年経過している。また、沿岸地域にも多く建設されているため、使用管材の多くを占める鋼管は、腐食・漏水が懸念されている。クボタケミックス(以下「KC」という)では、工場内配管材の樹脂化を目指し、この市場の開拓を進めている。顧客が配管部材に要求する性能として、発注者からの耐食性と工事業者からの施工性がある。本稿では、金属部品の樹脂化により耐食性・施工性を向上させるとともに、形状の工夫により強度確保・更なる施工性向上を図った樹脂フランジについて報告する。
- 圧力管路
- フランジ
- 繊維強化樹脂
- 腐食
- 関連するSDGs
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新製品紹介
- クラウド型管路管理システム 【WATERS-Cloud】
- AIが人の代わりにデータを分析して異常運転を検知「マンホールポンプAI異常運転検知機能」