クボタの製品開発において、デザインが果たす役割とは
デザインセンター所長・各デザインチーム長座談会
クボタが新しい製品を生み出す過程では、営業・技術・品質保証・サービスなどのさまざまな部署が関わります。製品デザインを包括的に担当するデザインセンターもそのうちのひとつ。各部門が連携しながら、お客様にとって最良の製品を追求していく中で、デザインが果たす役割はどういったものなのでしょうか。クボタの製品開発におけるその役割を座談会を通じて紐解きます。(所属・役職は2020年3月当時)
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デザインセンター所長
加藤 寿人
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外観デザインチーム長
東川 嘉孝
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内装デザインチーム長
二神 元
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コミュニケーションデザイン
チーム長金子 友則
デザインの役割は、製品イメージの具現化と共有
クボタが新製品を開発する工程では、まず事業部が企画構想を立て、製品のコンセプトを固めていく段階でデザインセンターが参画します。
「開発の初期段階で製品のイメージを目に見える形で具現化し、関係者のベクトルを合わせること。これが製品開発においてデザインに求められる役割です」(東川)
開発工程では、関係部署がそれぞれお客様の立場になって完成をめざしていきますが、製品のイメージが部署ごとにバラバラで漠然としたままでは、コンセプトに即した製品を作ることはできません。各部署がひとつの目標に向かって開発を進めるためには、お客様が抱える課題と製品を作る目的を整理することが必要です。それをビジュアルでリードしていくのがデザインセンターの役割。(二神)
「開発に関わる全員が同じ完成イメージを持って開発を進めるためには、デザインによって具体化してわかりやすく提示すること。それによってプロジェクトの推進力に寄与すること。それがデザインセンターのミッションのひとつだと考えています」(加藤)
こうして完成した製品を展示会などでお客様に見せるプロモーション活動もデザインセンターが担当します。この分野を手掛けるコミュニケーションチーム長の金子は、自身のチームのことを「デザインセンターの中でアンカー的な存在」と表現します。クボタとはどんなブランドなのか、展示会などの場を通じて、機能・性能や見た目を含めた製品の価値を効果的にアピールする。こうしたユーザーコミュニケーションも、デザインの役割のひとつです。


真に役立つ道具としてデザインを考え抜く
「クボタの製品は道具なので、いくら見た目が良くても使ってもらえなければ意味がありません。私たちが常に心掛けているのが、作業に必要な機能を中心に考え、デザインをシンプルにしていくこと。その結果、道具として美しいデザインになっているのがベストです」(東川)
「情緒感も、機能を満たした上でなければデザインとしての意味をなしません。クボタのデザインは機能美を突き詰め、使いやすい製品を高品質で作り上げることをめざしています」(二神)
ユーザーのことを考え抜き、道具としての機能を追求すること。これがクボタデザインの本質です。クボタにおけるデザインとはカラーやフォルム、装飾など視覚的な要素だけでなく、操作のしやすさや作業に役立つ機能、そしてそれらが生み出すユーザーエクスペリエンスまでを包括しています。また、その実現に必要な技術やコストといった分野も踏まえた上でデザインに取り組みます。それは、あらゆる側面からユーザーの目線で考え抜かなければ、真に役立つ道具としてデザインすることができないという信念に基づいています。そして、そこに生まれる美しさこそがクボタらしさになるのです。

当たり前のように使われる製品をめざして
「色や形状、装飾などの視覚的なデザインだけが注目されるのではなく、機能美のある道具としてもお客様に認識されたい。デザインを意識させず、いつもそこに在って、使うのが当たり前のような製品になることがクボタデザインの理想です」(東川)
クボタでは技術者や営業とともに、デザイナーもお客様の元に赴き、現場でのニーズを知った上で製品開発を行います。農業機械であれば実際に乗ってみて、どれくらいの振動がある中でハンドルを握り、レバーを操作するのか? 女性が乗るためにはどれだけの力を使わないといけないのか? 実体験に基づいてお客様の立場を理解しながら、課題を整理し、無駄を削ぎ落とし、わかりやすさと使いやすさを徹底的に追求していきます。たとえ売上に影響しなくてもお客様の使いやすさを追い求めて、時にはコンマ1ミリの調整のために設計をすべて覆す場合も。そのようにデザインされた製品は、これまでお客様が長年使ってきた道具のようにしっくりなじみ、日常に溶け込んでいきます。
「お客様になりきって、見た目だけではなく、心地よさの中に魂を入れることを意識して私たちはデザインをしています。そこからさらに、どこまでお客様の期待を超えるものを作れるか、5年先10年先の未来を見据えた時に、そこに至るためには今どういうデザインであるべきなのかをバックキャストの思考で考え抜くのが、私たちのミッションです」(加藤)
