種籾(たねもみ)の塩水選(えんすいせん)と消毒

種籾(たねもみ)の塩水選(えんすいせん)と消毒

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中身の詰まった良い種籾(たねもみ)を選ぶために塩水につける「塩水選(えんすいせん)」を行います。
種籾の中身とは、おもに胚乳(はいにゅう)のことです。胚乳は発芽から初期生育にかけて必要な栄養源なので、この胚乳が多い方が良いわけです。胚乳が充実した種籾は発芽率が高く、根に活力があり、活着にも優れています。

良質な種籾とは

種籾の構造

胚乳が少なく軽い籾なのか、胚乳が多く重い籾なのか、見ただけでは区別はつきません。そこで、塩水選を行います。まずは、籾を塩水につけます。すると、胚乳が多い籾は重いので沈みます。浮き上がった軽い籾を取り除き、底に沈んだ重い籾を種籾とします。

塩水選の様子

塩水選は、明治時代に開発された方法で、良質な種籾の選別が簡単にできるようになったため、当時の収穫量が一割も増えたと言われています。

塩水選の手順

種籾についているヒゲ

種籾についているヒゲのような芒(のぎ)を除去します。芒があると、種まき機に引っかかるなどして、播種(はしゅ)ムラができてしまいます。脱芒機(だつぼうき)などを使って芒を除去しますが、少量の場合は種籾用のネットに入れた状態で、手袋をして揉むだけで除去できます。

升で種籾候補をバケツに移す

次に、種籾候補を、枡(ます)を使ってバケツに移します。この枡は一升(1.8リットル)入る一升枡(いっしょうます)です。

バケツをかき混ぜる

バケツにホースで水を入れ、ぐるぐる掻き混ぜます。
すると、塩を混ぜる前の段階で、かなりの量の籾が浮き上がってきました。

浮いた籾を取り除く

浮いた籾を取り除きます。真水での作業を繰り返してから、塩水による作業に移ります。いもち病やばか苗病にかかっている籾も浮きやすい傾向にあり、塩水選を行うとかなり取り除けるようです。

塩を混ぜる

塩を混ぜていきます。塩は台所で使っている普通の食塩です。塩水を舐めて、塩加減を判断します。

浮き上がった籾を取り除く

塩水を掻き混ぜて、浮き上がった籾を取り除きます。水に塩を溶かすと、水より比重の重い塩の影響で、水の比重が上がり、物質は浮きやすくなります。真水のプールより、塩水である海の方が、体が浮きやすいのも同じ原理です。比重とは、物質の密度と標準物(一般には摂氏4℃の蒸留水)の密度との比です。

底に沈んだ籾

一般に、塩水選の塩分濃度は、生卵を浮かべて頭がのぞく程度とされています(写真右)。その状態での塩水の比重は1.13です。真水の比重1.0では浮かなかった、比重1.0以上で1.13以下の籾が浮き上がることになります。そして比重1.13以上の重い籾、つまり中身の詰まった良い籾が底に沈んだままとなります。この底に沈んだ籾を種籾とします。

同じ作業を繰り返す

水を捨て、もう一度水と塩を入れて、同じ作業を繰り返します。 浮く籾が無くなると、今度は塩分を洗い流すために、真水できれいに種籾を洗います。 塩水選が完了すると、写真右のように澄んだ水になります。

種籾の消毒

種籾の消毒作業

塩水選が終わったら、種籾を消毒します。
バケツに2種類の薬剤を入れて棒で掻き混ぜ、消毒します。この薬剤は、種籾を害虫から守るものと、いもち病やばか苗病などの病気から守るものです。

消毒が完了した種籾

約1時間半の作業で、消毒ができました。このまま一昼夜つけておきます。その後、種籾を日陰で広げて、8時間程度、自然乾燥させます。

塩水選で取り除かれた軽い籾

これは、塩水選で取り除かれた軽い籾です。やはり目で見ただけでは、重い籾との区別はつきません。

雀のエサになる軽い籾

塩水選で取り除かれた軽い籾は、スズメのごちそうとなります。

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