稲作の半分を占めると言われるほど大切な水の管理。成長にあわせて水の量を調整しながら、田んぼに水を引き入れる工夫を重ねてきました。
成長に合わせて、水の量を調節し供給する
田植えの後は寒さから稲を守るために田んぼに水を入れます。夏が近づくとともに草丈はぐんぐんと伸び、種子から出た茎の根元から新しい茎が出てきます。これを分げつ(ぶんげつ)と言い、1本の苗の茎が5~6本、一株では20本以上になると分げつは止まり、穂を付ける準備をします。
稲作では成長に合わせて水の量を調節しますが、一番多くの水を必要とするのは穂が成長して実をつける7月中旬から8月下旬にかけて。昔から稲作の水管理の大切さは「水見半作」と言われ、水の管理は稲作の半分を占めるほど大切な作業だとされてきました。
水を供給するやり方としては、高い場所に灌漑(かんがい)用水路や溜め池を設けて、高い場所の田んぼから順次低い田んぼへ水を供給する方法が一般的です。逆に、低い場所の川から高い場所の田んぼへ水を上げるには、さまざまな工夫が必要でした。
写真提供:渡部景俊「農を支えて-農具の変遷-」(秋田文化出版刊)
水管理で使われた伝統農具
・水汲み桶(みずくみおけ)
杉や檜(ひのき)などでできた桶で、水が漏れないように隙間なくがっちりと作られています。縄のあるものは、2人で水を田んぼに汲み上げるための桶です。
・水まき桶(みずまきおけ)
畦(あぜ)と畦の間に水をまく桶です。桶の底の弁を柄で開け閉めして水の流れ出す量を調節しながら水をまきます。
長さ327mm・高さ540mm・奥行き352mm
・龍骨車(りゅうこつしゃ)中世以来使われている揚水器です。下部の細長い木箱を水に沈めて、連結した小板を巻き上げて水を汲み上げます。写真のように、連結した小板が龍の骨に似ているのでこの名が付けられました。手操り用と足踏み用があり、写真は手操り用です。
長さ2250mm・高さ865mm・奥行き3670mm
・踏車(ふみぐるま)十数枚の羽根と鞘箱(さやばこ)からなり、羽根板を踏んで羽根車を回し、水を順次押し上げます。決して楽な仕事ではありませんが、動力のない時代では最良の方式でした。体重が軽い場合は子供を背負って踏んだそうです。
長さ813mm・高さ1670mm・奥行き2270mm
裏技?水が登る用水路
水を低地から高地へ引き上げるめずらしい水路があります。まず、用水路の一箇所に、堰(せき)板と土で固めた部屋を作って、そこに水を溜めます。部屋に下部から流入した水が、上部から流出するわけですから、その高さの分だけ用水の水が引き上げられることになります。