籾を玄米にする「籾摺り(もみすり)」の作業には、木摺臼(きずりうす)や土臼(どうす)といった道具を併用しながらさまざまな工夫がこらされてきました。
専用臼の登場が食習慣も変えた
脱穀(だっこく)が終わると、籾(もみ)から籾殻(もみがら)を除去して玄米にする籾摺りが行われます。
弥生時代は竪臼(たてうす)に籾を入れて竪杵(たてぎね)でついて行われ、その後、木摺臼(きずりうす)や土臼(どうす)が使用されました。こうした古来の杵つき作業による半搗米(はんつきまい)の食習慣は、籾摺り用や精米用などの専用臼の登場により、籾摺りと精米の2作業に分かれて、白米食が行われるようになったようです。
籾の乾燥が不十分だと臼ひき作業に耐えられず籾が砕けます。籾摺りではこの砕け米の発生率が大問題で、木摺臼と土臼を併用しながら、さまざまな工夫をこらしました。土臼は、作業効率は優れているものの砕け米が多く、精白するときにも損になる、と評価されていたようです。しかし、砕けたお米も無駄にせず、家での食用にしていました。
籾摺りで使われた伝統農具
・木摺臼(きずりうす)動かせる上臼と、固定された下臼に分かれています。上臼と下臼との摩擦によって籾殻を取り除きます。摺面には、臼の中心から周辺に向かって浅い溝が刻まれています。上臼の半回転を繰り返すと、脇から玄米がこぼれてきます。土臼に比べて摺面がやわらかいため、砕け米が少ないのが特長です。
長さ580mm・高さ280mm・奥行き580mm
・土臼・唐臼(どうす・からうす)木摺臼と土臼は形の上ではあまり違いはありません。木摺臼は引き網で回転させるのに対し、土臼は遣り木によって回転させました。
竹籠の中に土などを入れて上下の臼を作ります。籾摺りをするときは、一人が箕などで籾を投入します。籾を上臼の供給口から下臼の上部に落とし、遣り木を2~3人が持って上臼を回転させます。回転する上臼と固定されている下臼の摺り歯の両面での摺り合わせによって籾摺りをします。玄米と籾殻は臼の外に放出されます。唐臼とも呼ばれ、元禄時代に中国から伝来したと言われています。 土臼による臼ひきは重労働だったのと、ひく人数が複数のため、調子を合わせるためにも、この作業をしながら「臼ひき唄」を歌いました。
長さ560mm・高さ630mm・奥行き560mm
全自動籾摺り機の仕組み
300年以上も前の電気がない時代にも、工夫により自動の籾摺り機が実現していました。
獣を脅かす鹿威し(ししおどし)の原理を応用したもので、水槽に水がたまって重くなるに従って、傾いて反対側の先端の杵を持ち上げます。傾きが大きくなると水はこぼれ、同時に持ち上がっていた杵は落ち、臼に入れた穀物をつくという仕組みでした。