
白樺湖の築造から、観光産業の隆盛へとつながり、白樺湖エリアの農業は大きく変化しました。
この地の農家の方々と関東甲信クボタの営業所長にお話を伺いました。
白樺湖エリアの農業について
茅野市池の平土地改良区元理事長を務める両角磯司さん、コシヒカリづくりをする農家の両角清幸さん、株式会社関東甲信クボタ茅野営業所所長の中村春二さんにお話しを伺います。
ちなみに、柏原地区は120戸以上の集落ですが、その三分の二以上の方の姓が「両角(もろずみ)」であり、名前で呼び合う習慣があるそうです。ここでもそれにならい、「磯司さん」「清幸さん」と表記します。
3人にお話を伺ったのは磯司さんの事務所です。花をつくる温室に隣接し、南アルプスのさわやかな風が入る居心地の良い事務所です。
中村春二さん
株式会社関東甲信
クボタ茅野営業所所長
中村さん:「ここは気持ちいいね。天然のクーラーだね」
両角磯司さん
茅野市池の平土地
改良区元理事長
磯司さん:「そういうふうにつくってあるから。清幸さんは、いつもここに遊びに来ているんですよ」
両角清幸さん
清幸さん:「そうそう(笑)。そのへんで田んぼをやっていますので」
磯司さん:「眺めもいいでしょう。猫が幾匹もいますから、来たらどけてくださいね。うちの猫は人懐っこいから、すぐに膝に上がって抱けって言いますから」



磯司さんは米に加えて、この温室で花をつくられています。
磯司さん:「花も、値段が下がっていますね。世田谷、杉並、板橋の卸市場に自分で運んで、やっと採算が合うぐらいです」
中村さん:「それも、高速道路を使わないでね」
清幸さんは、以前は農業のかたわらで観光事業も経営なさっていたそうです。
清幸さん:「白樺湖の氷が壊れるんじゃないかって思うぐらい、スケートのお客さんが来て。自分もキャンプ場をやっていました。馬にお客さんを乗せたりもして」
磯司さん:「馬耕をやっていた馬を、観光用に転用していたんですよね」
清幸さん:「馬に鞍を乗せて、引いてね」
限界標高での米作り

磯司さん:「米作りは、生まれたときから親父と一緒にやっています。このへんは、標高1,040mくらいあるから、三分の一はお米が実らなくて立っていました。親父はいま百歳近くになるんですけれど、戦争から帰ってきて、戦後で食糧が足りないということで。それで音無川を溜め池にして温度を上げて、表面で温まった水だけを下に流して田んぼに入れようとなったんです。
うちは県推奨米のあきたこまちですが、清幸さんは、コシヒカリをたくさんつくっています」
うちは県推奨米のあきたこまちですが、清幸さんは、コシヒカリをたくさんつくっています」
清幸さん:「コシヒカリは10年ぐらい前に、最初に自分がこの地域に持ち込んでつくり始めました」
稲作が可能な限界標高は気候帯により異なりますが、日本では1,000mあたりと言われています。また、コシヒカリは寒さに弱い品種とも言われています。
中村さん:「以前は、コシヒカリの限界は800mと言ってましたけどね。それが清幸さんの場合、1,000mでも大丈夫なんですね」
お二人ともこだわりの米作りをして、直販をなさっています。
磯司さん:「お米は直販しています。ネットではなく、口コミルートです」
中村さん:「でも、皆さんのやり方だと量産はできないよね。手をかけすぎて」
磯司さん:「そう、できないね。できないけどね、先人の知恵をうまく取り込んで、籾摺り(もみすり)も自分で、機械でしています。籾摺りの機械って、よくできていますよ」
中村さん:「農業機械は、先人の知恵のいいとこどりをしているんですよね」