農家が語るこれからの白樺湖のお米

農家が語るこれからの白樺湖のお米

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お話を伺った農家の磯司さん、清幸さんは、できるだけ昔ながらの製法で米作りをされています。
どうして、昔ながらの製法にこだわるのか、理由を聞いてみました。

昔の知恵を活かした米作りが口コミで広がる

田んぼを見回る中村さん、磯司さん、清幸さん
用水の水を掬う磯司さん

両角磯司さん
両角磯司さん
茅野市池の平土地
改良区元理事長

磯司さん:「昔の人のやり方で、(米作りを)やっています。糖分がしっかりと溜まって、籾(もみ)が太ったところで青いまま刈り取りをして、それを今度は稲架(はさ)に掛けて、天日で干します。風と太陽の光で乾燥させます。稲架(はさ)に掛けると穂が下になるから、上の木の栄養分が全部、穂に行って溜まる。まだ生きていますからね。稲穂がそれをもらって、もっと実る。やっぱりね、おいしいですよ。
口コミで『お米売ってくんない』っていう方が来るんですけれど、じゃあ食べてみてよって言って」

中村春二さん
中村春二さん
株式会社関東甲信
クボタ茅野営業所所長

中村さん:「食べると、分かる人は分かる。ラベルで食べる人もいますけれどね」

両角清幸さん
両角清幸さん

清幸さん:「一番よく分かるのは、子どもさんにあげると、磯司さんのお米だったらおかわりをする」

両角磯司さん

磯司さん:「それで、『本当に旨えわ、またくれ』って言われるけど、うちの食べる分がなくなるから、今年はこれだけにしてくださいって。一袋増え、二袋増えって、増えていく。ということは、他の人も食べているということですよね。『おれの分も買ってきてくれ』と。昔の人のやり方は、えらいものだなと思うんですよ」
害虫に食われた稲
稲に隠れる猫

磯司さんの田んぼは、害虫にやられていました。

両角磯司さん

磯司さん:「ベロムシ(イネドロオイムシ)だらけ。稲の葉っぱを食べるから、葉っぱが白くなるんですよ、農薬を使わないから」

磯司さんの田んぼには猫もいました。

両角磯司さん

磯司さん:「じっと構えてさ、カエルとりをしているんですよ(笑)」

「収量は多くなくていいから、いいお米をつくりたい」

雑草の花
笑顔の中村さんと清幸さん

清幸さんの田んぼは雑草だらけで、雑草の花まで咲いていました。

両角清幸さん

清幸さん:「こだわっているので、放ったらかしてあります」

中村春二さん

中村さん:「い草って言って、畳表になる草ですね。除草剤をざっとまけば消えますよ。消えるんだけれど、農薬を使いたくないんですよね」

両角清幸さん

清幸さん:「自分の米は、消毒でも何でも少なくして。収量は多くなくていいから、いいお米をつくりたいと思ってやっています」

両角磯司さん

磯司さん:「なるべく肥料も少なくして。多収穫にすると、やっぱり食味は落ちるわけですよ」

中村春二さん

中村さん:「お米って正直なもので、肥料をたくさんやると収量って上がるんですよね。それなりに」

両角磯司さん

磯司さん:「一つの田んぼのなかでも、本数を少なくして、お米の木がゆうゆうと育ったっていう感じにするとね、いいお米がとれます」

両角清幸さん

清幸さん:「本当にその通り。自分は、とにかく、“あっただけ儲け”、というつくり方をやっているんです」

両角磯司さん

磯司さん:「こっちの人の田んぼなんかきれい」
隣の田んぼ
清幸さんの田んぼ

雑草がなく、株間には水が見えているお隣の田んぼ(写真左)。清幸さんの田んぼの株間は、雑草に埋め尽くされています(写真右)。

「時代にぴったり合うんじゃないかと思う」

ストーブに乗せられたヤカン
湧水のコーヒー

両角磯司さん

磯司さん:「コーヒー飲んでいきます?湧水のコーヒー。清幸さんはいつも来るので、マイカップがあるんです(笑)」

磯司さんの事務所で南アルプスの湧水のコーヒーをいただきました。

両角磯司さん

磯司さん:「収量をとろうと思ったら、いくらでもできますよ。私たちは収量を追っていません。六十五歳を過ぎると体が衰えてくるから、その分病院でお金を使ったら同じですから(笑)。(収量を上げて)お金をもらうより自分の体に合った仕事をして、ここの高原のいい空気を吸って、太陽の光を浴びて、四季折々の生活をするほうがいい。いま、食料の形が変わってきていますよね。パン食とか、太るから食べないとか。若い方たちが農業で生計をたてていきにくくなっている。私の息子も外に働きに出ています。これからは付加価値米がいいと思います。清幸さんと私がつくっているようなやり方が、時代にぴったり合うんじゃないかと思います」

清幸さんは、にこにこしながら頷いていました。

コーヒーを飲みながら談笑する中村さんと清幸さん
コーヒーを飲みながら談笑する磯司さん、清幸さん

両角磯司さん

磯司さん:「肥料で大きくしないで、穂がちょうどいい高さに実って、南アルプスといっしょに穂の垂れ具合を眺めて、ああ、お前たちよくきれいに実ってくれたなあ、ああ、これはうまいお米ができるって」

中村春二さん

中村さん:「手塩にかけて」

両角磯司さん

磯司さん:「精白するとね、本当に透き通ったきれいな水晶みたいなお米になりますよ。そこまでやってみて、ああ、自分のお米、うまくとれたなって」

戦後の食糧不足の時代に、白樺湖(蓼科大池)築造により収量増大を果たしたこの地にあって、いま「南アルプスといっしょに穂の垂れ具合を眺めて」と、詩人の心でお米を慈しむ磯司さん。

「(雑草も)こだわっているので、放ったらかしてあります」、収量についても、にこにこしながら「あっただけ儲け」と考える清幸さん。 かつて「水口立ち」を克服したこの地で、温水溜め池に守られて、「時代にぴったり合う」米作りへの挑戦が始まっています。

白樺湖

(2014年7月16日※皆様の肩書きは2014年7月16日現在のものです。)

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