日本の3倍以上お米を食べる国、ミャンマー

日本の3倍以上お米を食べる国、ミャンマー

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年間約2,642万トンの米生産量(籾ベース・FAO(国連食糧農業機関)統計)、一人当たり210kg(FAO統計)の米消費量といずれも日本の3倍以上であるミャンマーは、米の国と呼ばれています。GDP(国内総生産)の約4割を農業が占め、全人口の約6割が農村に居住し、就業人口の約6割が農業に従事するとされている農業大国です。

(※2017年9月に行った取材に基づきます)

ミャンマーの街並み
ミャンマーの屋台

最後のフロンティア、ミャンマー

地理的にはインド、中国に囲まれる形で両国と長い国境線を有するミャンマーは、タイ、ラオス、バングラデシュとも国境を接しています。地形は東西約1,000kmに対して南北約2,000kmと細長く、ベンガル湾、アンタマン海に面しています。国土面積は約68万k㎡、人口5,344万人(FAO統計)。日本の1.8倍近い国土に、日本の約半分の人々が暮らしています。

1930年代、ミャンマーは世界最大の米輸出国でしたが、1962年の社会主義政権以降はその地位を失いました。国内米価を海外市場から遮断して、米を内需向けに低価格で安定供給することを優先し、結果として米輸出大国の地位を放棄したとも言われています。
しかし、2011年に民政移管が実現し、米輸出大国復活に向けて農業灌漑省、農業機械化局を中心に機械化などに挑戦しています。

食堂の様子

ミャンマーは、ビジネスの世界において「最後のフロンティア」と呼ばれ、さまざまな国からの参入が始まっています。農業の側面では、アジアで最もお米の生産拡大の潜在能力を秘めた国であり、東南アジアの食料安全保障への貢献が期待されています。
世界有数の米所であるヤンゴン周辺の田んぼをはじめ、コンバインによる稲刈り、精米所の現場など、急激な変化を続けるミャンマーの米作りをレポートします。

世界で一番“寄付”をする仏教徒の国

2017年に世界銀行が発表したさまざまな世界指標のなかで、ビジネス環境としてミャンマーは190カ国中で171位でした。唯一世界No.1なのが寄付指数です。ミャンマー人は食事を倹約してでも、お寺などに積極的に寄付をします。国民の約9割が敬虔な仏教徒で、男女問わず多くの国民が一週間程度の出家をすることでも知られています。
「徳」を重んじ、いさかいを嫌う、穏やかでやさしい国民性です。微笑みの国という言葉がありますが、農場でも精米所でも、「ミンガラバー(こんにちは)」と挨拶をすると、誰もが微笑みながら、ときには笑み崩れるようにして「ミンガラバー」と応えてくれます。

スーレー・パヤー(仏塔)
ヤンゴンのランドマーク、スーレー・パヤー(仏塔)
チャウッターヂー・パヤー(仏塔)の寝仏
チャウッターヂー・パヤー(仏塔)の寝仏

仏教の国ですから、ヤンゴンの町には「スーレー・パヤー」など多くのきらびやかな仏塔が立ち並びます。お釈迦様の化身とされている仏塔は、日本の五重塔のように町のどこからでも見えるような場所に建てられて、人々が拝む対象となっています。

朝昼晩、お米が欠かせないミャンマーの食文化

ミャンマー料理
食事中の女性

日本における、年間一人当たりの米消費量は、1960年が114.9kg、2015年は54.6kgとなっています。対してミャンマーの年間一人当たりの米消費量は約210kgで、日本の3倍以上もお米を食べている計算になります。
昼食と夕食にはお米が欠かせず、日本と同じくお米と副菜を一緒に食べるのがミャンマーの一般的な食卓のスタイルです。

モヒンガ―
おかゆを混ぜる店主

朝食として人気があるのが、米で作った麺にスープをかけて食べるモヒンガ―(写真左)です。屋台で食べるのが一般的で、基本は500チャット(約50円)、これに揚げ物やゆで卵などをトッピングすると600〜800チャット(約60〜80円)となります。ヤンゴンでは魚(ナマズ)ベースのスープが一般的で、他の地方では豆ベースもあるそうです。
屋台では、大鍋で作ったおかゆ(写真右)なども売られていて、このまま食べるそうです。

お米と黒糖から作ったお菓子
モレサ

甘くておいしい、お米と黒糖から作ったお菓子(写真左)。食べてみると、米粒の食感が少し残っていました。これも500チャット(約50円)です。
ココナッツミルクを入れて飲みながら食べる、お米のお菓子モレサ(写真右)なども売られていて、朝食からお菓子まで、さまざまな形でお米が愛されています。

この5年間の労働力不足で、ヤンゴン周辺では田植えの姿が消えた

牛
牛

ミャンマーの食文化にお米は欠かせないわけですが、米作りには少しずつ変化が現れているようです。

ヤンゴン周辺の田んぼでは、あちらこちらで牛が放し飼いにされて、草を食(は)んでいました。近くで田んぼの刈り株を燃やしていた農家にお話を聞くと、ミャンマーでは農業の機械化が進み、道が無くて機械が入っていけない田んぼだけに牛を使うという状況になっているそうです。

ヤンゴン周辺の田んぼでは、5年ほど前から田植えをする姿が見られなくなったそうです。その理由は労働力不足にあり、原因は2つあります。
1つは海外への出稼ぎです。正確な統計はないそうですが、一説によると、隣国のタイだけでも400万〜500万人のミャンマー人が出稼ぎに行っていると言われています。
もう1つの原因はヤンゴン、マンダレーといった大都市を中心に建築ブームが起きており、そこに出稼ぎに行っているからです。農村から人が減り、田植えができなくなって、田んぼに直接種をまく「直播栽培」に転換していっているようです。

農業の発展に貢献するミャンマー仕様のトラクタ

クボタミャンマーの外観

2015年、クボタはミャンマー農業の機械化や農業経済発展に貢献することを目的にクボタミャンマーを設立しました。本社はヤンゴンから南東約23kmのティラワ工業団地にあります。
今回は同社のヤンゴン事務所を訪れて、クボタミャンマーの村田豊一社長にお話をお伺いしました。

村田豊一社長
村田豊一社長

村田社長:「ミャンマーとクボタには長い歴史があります。1953年に戦後賠償として、クボタは耕うん機をミャンマーに輸出しました。1962年に耕うん機工場を、1978年にディーゼルエンジン用の鋳物工場を作りました。2011年、タイのサイアムクボタがディストリビューターを通じてミャンマー国内で農業機械を販売し、2015年にクボタミャンマーを設立しました」

村田社長:「ミャンマーの農業については、種籾(たねもみ)の品質、肥料のやり方、農薬の使い方などさまざまな課題がありますが、まずは整地から始めなければなりません。手刈りなら田んぼがでこぼこしていてもかまいませんが、コンバインで稲刈りをするには整地されている必要があります。ですから、ミャンマーのトラクタの9割ぐらいに整地用のドーザーを装着しています。まず土地を平らにすることが、ミャンマー農業発展の第一歩なのです」

村田社長と地域営業兼事業開発マネージャのソーヨータさん
村田社長と地域営業兼事業開発マネージャのソーヨータさん
トラクター

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