世界で起きたマグニチュード6.0以上の地震のうち約18%が日本周辺で発生※1しているという。また、今後も首都直下型地震や東南海地震などの発生が懸念される中、自治体には大きな震災が発生した場合、「命」を守るためのさまざまな対応が求められている。特に緊急用の飲料水の確保は最も重要であり、何よりも優先されなければならない。しかし、それを難しくしているのは大量の水を安心して飲める状態で貯蓄できる仕組みと、そのコストである。
その対応策の一つとして導入されているのが、水道施設の一部をそのまま貯水槽とする「耐震型緊急用貯水槽」だ。それは、水道の配水管路の一部に大口径のダクタイル鉄管を組み込み 、「貯水槽」とするもので、通常時は水道配水管路として使用されるが、地震などの災害時にはその鉄管の両端の仕切弁を閉鎖し、その中に貯留された水を緊急用水源として活用できる仕組みだ。大きな特徴は、普段は水路として機能しているので水の停滞がなく、常に清浄水を確保できることにある。
また、ダクタイル鉄管は粘り強い性質で外部からの強い力や腐敗にも強い鋳鉄であることから、耐震性・耐久性を持ち、水密性も備え、大きな余震にも耐えうる構造となっている。さらに、管路の長さを変えることで、貯水規模および形式が選択できるため、設置場所の制約も少ない。もともと地下の管路を活用する方式なので校庭・公園・広場・駐車場・道路下などに埋設すれば、地上は一時避難場所などに有効活用でき、経済的である。そのうえ、施工も簡単で、工期も比較的短くて済むため、全国の自治体でそれぞれの実情に見合った導入が進んでいる。
2005年、首都圏の人口密集都市である横浜市が、「みなとみらい21地区」に日本最大級の「災害用地下給水タンク」を導入。それは約17万人の3日分の災害時の飲料水を確保できるものだった。その後各地の自治体からの受注も増加。さらに2014年度には、東日本大震災の被災地である青森県五戸町、宮城県塩釜市、福島県鏡石町をはじめ、全国23ヵ所で新たに耐震貯水槽を設置した。クボタは耐震型緊急貯水槽をはじめダクタイル鉄管の可能性を追求し、災害時にも水インフラが維持できる都市の整備に貢献していく。