ITの進展により、「あったらいいな」と思っていたことが現実のものとなり始めた。例えば、「自動で掃除ができたらいいのに」という願いは掃除ロボットになった。また、風呂の湯沸かしや空調の調整、留守番時の防犯なども外からスマートフォンでできるようになった。あらゆる分野で自動化、無人化が進んでおり、農業にもその波が押し寄せていた。
日本農業は高齢化や働き手不足、後継者不足など根本的な課題がいまだ解決されていない。ただ、農業機械が自動で作業をしたり、農地や生産の管理、栽培技術やノウハウなどがデータ化できれば、自然相手の農業を誰もができるようになり、日本農業の長年の課題解決が大きく前進する。そんな夢の技術をクボタは実現し始めている。それが「データ活用による精密化」と「農業機械の自動化による超省力化」をめざすクボタの「スマート農業」である。まず2014年にKSAS(Kubota Smart Agri System)というデータ活用の中心となる営農支援システムを発表した。このシステムは、農地や生産の管理、気象情報や日々の作業情報の管理はもちろん農業経営に関わるさまざまなことをデータ化できる。米の場合、一枚の水田のどの辺りでおいしい米が穫れたのか、食味※2の分布まで分析でき、計画的な施肥によって米の高付加価値化を可能にする。これまで熟練者の経験と勘に頼っていたことを「見える化」したことで、経験の浅い人でも経営の効率化や計画的な生産だけではなく、高品質な農産物がつくれるようになったのである。
同時に農業機械の自動化も急いだ。2016年には、GPSを利用した直進で自動操舵できるオートステアリング機能を開発し田植機※3やトラクタなどに搭載した。実は、農業機械をほ場※4でまっすぐ走らせるのはベテランでも難しく、気を遣う。それを、両手を放してでもできるほど容易にし大幅に軽労化。しかも誰もが操作できるため人材確保にもつながる。また、数cm以内の誤差で制御できるため人間よりも精密に作業ができ、無駄な燃料や肥料の使用もなくなり、省エネや環境保全、低コスト化も実現する。さらに夢の農業機械に大きく近づいたのが、2017年に登場した「アグリロボトラクタ」だ。有人監視下ながら無人の自動運転作業ができる。ほかにも、水管理システム「WATARAS※5」や農業用ドローンなどさまざまな自動化農業機械を開発。すべてをKSASと連携させることで自動化農業機械の一貫体系を築き、魅力的な儲かる農業の実現に向けて着実に進んでいる。