2010~2015年の6年間に日本の農家戸数は252.8万戸から215.5万戸に減少※1した。これは、毎年6万人超のペースで減っている計算である。こうした農業をやめる人の農地は国の政策もあって担い手※2に集まり、年々その規模が膨れ上がっていた。そこには、農地を効率的に高いレベルで維持管理すること、消費者ニーズにマッチした農産物を低コストで生産して提供することなど、従来にない課題が山積みであり、農業経営に新たな風が求められていた。
クボタは、これまでにも農業経営の規模や地域に応じた提案をしてきた。例えば日本農業の主流である稲作の大規模農家への直播の機械化一貫体系である。特に「鉄コーティング直播栽培技術(以下 鉄コ)※3」は、鉄をコーティングした種もみを直に水田にまくため、育苗や移植※4などの手間や時間を省け、効率化や低コスト化がそれだけで図れる。さらに、土づくりや畔※5づくりが素早くできるトラクタ、田植えと同時に除草剤散布などの作業もできる田植機、高速で高性能なコンバインといった農業機械と鉄コを組み合わせれば、大幅な作業時間の短縮や省力化、軽労化、低コスト化を実現できる。しかも、経験の浅い人でも作業が可能なため人材の確保にも有効だ。鉄コは、2007年に導入以来、全国の農家に普及が進んでいる。
また、経営の安定化には、年間を通じて安定した収入を確保することも必要である。日本の場合、稲作は春に苗を作り梅雨時に田植えをして秋に収穫する。収入に時期的な偏りがあるのだ。そこでクボタは、稲作と野菜作を組み合わせた複合経営※6を提案。その一つが、水田を米と野菜の輪作ができるようにする取り組みである。問題は、水を溜める水田と違い野菜作には通気性や排水性の良い土づくりが必要なことだ。実は、多くの農家から「野菜作で思うような成果が上げられない」という声を聞いていた。そこでクボタは、そのような悩みを持つ全国の農家の水田を調べた。原因は排水だった。クボタはすぐに研究に取りかかり、さまざまな試行錯誤を経て、最適に、かつ効率的に排水対策と土づくりのできる技術と機械を開発。野菜作の収量アップを可能にし、安定した収益の確保を実現した。同時に排水を改善すると質のいい米が穫れるというプラスの効果もあった。クボタは、持続可能な農業のために米と野菜を作る複合経営を支え、儲かる農業の提案を幅広い視点から進めていく。