久米島農業の未来

久米島農業の未来

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久米島農業に多くの水を供給できるようになったカンジンダム。それでも、解決していかなければいけない問題も多い久米島農業の未来について、お話を伺いました。

ヤンガー池の貯水量問題

山里昌伸さんと吉田政也さん

久米島町具志川土地改良区は、カンジンダムの設備と水質の管理を担っています。理事長の山里昌伸さん(右)と土地改良区派遣主査の吉田政也さん(左)にお話を伺いました。
山里昌伸さんは、はじめに紹介した農家・山里昌朝さんのご子息です。

山里昌伸さん
山里昌伸さん

山里さん:「まず、電気系統の故障がないように注意しています。例えば、菊農家はタイマーで水を供給しています。特に、(挿し芽を)挿してすぐの時期に水が切れたら大変なことになります。水質管理も重要です。夏場の暑い時期に藻が発生したりして、水が濁ったり腐ったりしたら、葉がダメになります」
水質管理の様子
水質管理の様子
水質管理の様子
山里昌伸さん

カンジンダムの水は空気を供給する曝気(ばっき)により、水質を清浄に保っています。久米島ホタルの会の生き物を活かした浄化機能と併せて、慎重に管理されています。

ハード面では、貯水量の問題が懸念されています。

吉田政也さん
吉田政也さん

吉田さん:「カンジンダムからヤンガー池にポンプアップして、その高さを利用した水圧でスプリンクラーを稼働させます。そのヤンガー池の容量が小さいのが問題としてあがっています。一日で上げた水が、一日で無くなっているんですよ。現在も第3期として、水を供給する面積を拡大中なので、計画の338ヘクタールへの供給ができた時点で、供給が追いつかなくなる可能性があります」

神の凹地(ウバーレ)

吉田政也さん

吉田さん:「久米島農業については、真剣に今後のことを考える必要があります。地力が落ちて、サトウキビも1反あたりの収穫量が下がっています。化学肥料と農薬の使い過ぎが原因と思われます」

久米島農業の将来については、南部農林土木事務所の川辺さんもおっしゃっていました。

川辺貢さん
川辺貢さん
沖縄県農林水産部
南部農林土木事業所
計画調整班班長

川辺さん:「カンジンダムは、効率のいいダムです。 昔の溜め池と今のダムを連携させたいい見本です」
カンジンダム
水路

川辺貢さん

川辺さん:「理想的な凹地(ウバーレ)がある。神様がこういう場所を与えてくれた、不思議なダムなんです。しかし、水を活かすための営農技術を新たに確立しないといけません。いままでの延長上では、活かしきれない」

吉田政也さん

吉田さん:「沖縄の失業率は8.8%ですが、我々が見た範囲では、久米島はさらに厳しい。働き口がないので、人口が減っています。人口流出を食い止めるために、なんとか農業を振興しないと。サトウキビ脱却をどう図るかが課題ですね。作物転換は、もう迫られています」
カゴに入ったオクラ
タンク

作物転換への挑戦の一つが、仲村渠(なかんだかり)さんのオクラです。

仲村渠さん
仲村渠さん

仲村渠さん:「カンジンダムができて、水の安定供給が可能になったので多角経営に挑戦できたのです。 サトウキビに加えて、サツマイモ、そしてオクラ」

そう、カンジンダムの使命は、常に安定的な水を農地に供給して、 台風の被害を受けにくい作物で儲かる農業を実現することなのです。

ヤギ
トラクタ
牧草をロール状にしてラッピングする作業

仲村渠さん

仲村渠さん:「いまは畜産も兼ねており、母牛が30頭います。子牛を出荷しますが、繁殖牛が増えると、久米島全体で牧草の栽培量を増やすことも可能です。水運びが省力化できた分で農地も拡げて、いまは20ヘクタール近いです」

多品目を作ることができれば、サトウキビの反収が減少した原因の一つである連作障害も、栽培する場所を毎年変更する輪作により、回避できます。

儲かる農業への挑戦

花を咲かすオクラ
仲村渠さん

仲村渠さん

仲村渠さん:「オクラは、今年から始めました。一日平均、30~40kg。この状態で出荷するんですよ。手をかけないで。だから高くなくてもいいよと。手をかける、つまり、選別が大変なんです」

仲村渠さんにとって、オクラにはもう一つの思いがありました。

仲村渠さん

仲村渠さん:「久米島の農業に刺激を与えるためにもやっているんです。自分、JAの支店運営委員もやっていますので。沖縄、久米島はあまりにもキビに頼りすぎているんじゃないかなと思います。キビの収穫は4月まで、それから後は(経費が)出て行くばかり、収入がありません。意識改革をしたいんですよ。農業を活性化させて、地域を盛り上げるのはそれしかないから」

サトウキビ生産実績は昭和59~60年期の122,040トンから平成21~22年期は68,700トンと減少しています。(久米島町ホームページから引用)

仲村渠さん

仲村渠さん:「カンジンダムができて、夢が持てるようになりました。人間、生きていくためには、米がなければ生きていけないし。どうしても土から得た物を食べて生きていくんですから。農家だけじゃなくて、人はみんな、そうですから。農業は根気強く、もうそれしかないんで。努力した分の見返りは、返ってくる。どれだけ愛情を注ぐかというのが基本だから、自分もがんばりますよ、夢、捨てないで」
山里邦夫さん
カーチーが吹く海岸

カーチー(乾いた風)が吹き通すんだったら、千里も吹き通す。

風を止めることはできませんが、農業人は水をコントロールすることはできます。
南部農林土木事務所、久米島ホタルの会、久米島町具志川土地改良区、沖縄県農業共同組合。さまざまな思いを受けとめるカンジンダムの水と、夢を持つ農業人の強さ。仲村渠さんのオクラ畑から、久米島農業の新しい時代が始まっていました。

<2012年6月29日※皆様の肩書きは2012年6月29日現在のものです。>

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