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1950~1960年代

水道界への恩返し。
クボタの水処理事業はじまる

し尿処理施設 下水処理施設 ごみ焼却炉

事業部発足後に初受注した、広島県三次市のし尿処理施設

産業の急速な発展と人口の都市集中は、飲料水や工業用水の不足と、河川や海の水質汚染をもたらしました。パイプ事業を通じて長年水道界に支えられてきたクボタは、こうした水問題の解決の必要性を痛感し、水専門の研究施設の発足と水処理事業に乗り出します。

大阪・中之島で実施された水質調査の風景

急速に変わる生活環境を支えるべく、上下水やごみ処理などの研究を推進

水質保全法と工場排水規制法が制定された1958年ごろ、クボタは都市部の生活環境整備を進めるため、水処理技術の研究開発や技術者の養成を開始。さらに創業以来70年にも渡り、深いつながりをもってきた水道界の恩顧に報いるため、1961年に水道研究所を開設し、さまざまな試験装置や分析・計測装置など、充実した設備を整えました。ここでは河川水や地下水を浄化して飲料水や工業用水にする上水の研究や、し尿・下水・産業排水処理など水質汚濁防止の下水の研究とともに、排煙や都市ごみの処理に関する研究を進めました。

水道研究所の成果を事業化。新しい処理方式や装置を開発し、水処理技術が向上

水道研究所はクボタ発行の専門技術誌に研究内容を発表し、関連分野の学界や国公立機関に広く提供。1962年には、これまでの研究成果をもとに、水処理事業部を新設し、環境整備事業へ本格参入します。クボタの他の事業とは異なり、工場を持たず、技術を中核にし尿や下水処理施設などの受注から設計・施工までを行うソフトウエア主体の事業部門として出発しました。政府が下水などの環境整備を強力に推進したこともあり、初動は順調。その後も、節水タイプの無希釈好気性し尿処理方式など、新しい方式や装置を開発します。

1965年、福井市に納入した団地用の小規模下水処理施設

長年培った燃焼装置の技術を活かし、都市ごみ焼却プラントを開発・納入

ほどなく水処理に続き、都市ごみ処理にも進出しました。大正時代に開発した節炭機や給炭機で培ったストーカ(燃焼装置)の技術を活用して、1964年、機械化バッチ燃焼式の焼却炉を開発し、青森市に初納入。1968年には24時間稼働で日量90トンの全連続式焼却炉を静岡県御殿場市に納入しました。また翌1969年には、汚水の浄化過程で生じる汚泥処理用の噴流式汚泥焼却装置など、技術を広げて新しい処理装置を提供。高度経済成長下の急激な産業発展と都市人口の増加に伴い、顕在化してきた環境汚染問題の解決に乗り出します。

青森市に納入したごみ焼却施設1号機

1960~1970年代

高度成長のひずみと公害対策

高度成長のひずみとして懸念されていた環境汚染は、深刻な公害問題へと発展。1967年、政府は公害対策基本法を公布、さらに1970年、公害国会と称された第64回国会にて公害関連法令の抜本的な整備がなされ、産業界もこの規制強化に対応していきます。

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1960~1970年代

環境整備事業の拡充が
クボタ独自の技術を生む

汚泥掻寄機 浄化槽

原子吸光分析器による水質分析

政府による環境規制が強化され、クボタは社会環境整備関連の事業拡充を図ります。水処理装置や機器の独自開発を始め、創業当初からの燃焼技術を活かした都市ごみ焼却炉分野への本格参入。事業領域を拡大したクボタは、そこで新たな技術を獲得します。

公害問題に対処すべく、企業スローガンを改定。
社会環境整備関連の事業を拡充する

高度経済成長下における公害は切迫した社会問題になりました。これを受け、政府は1967年に公布された公害対策基本法などの法整備や環境庁の発足など、公害規制を強化。産業界はもとより地方自治体も具体的な措置を求められました。クボタは社会環境の整備と人間性回復という時代同行に合わせて、1969年「ゆたかな人間環境つくり」の新スローガンを制定し、社会環境整備関連の事業拡充を実施。従来のソフトウエア主体の事業展開に加え、し尿や下水などの水処理装置や機器の独自開発、都市ごみ焼却炉分野への本格参入を目指しました。

水処理技術の新たな潮流を捉え、新方式のトップメーカーに躍り出る

1970年ごろから、新たな水処理方式として、し尿を好気性微生物により、酸化分解処理する酸化処理法(好気性消化法)が普及し始めます。それまで主流であった嫌気性消化法のように、腐食性ガスが発生しないため、プラントの耐久性の向上や高い浄化効率を得られるのが特長。クボタはこれをいち早く採用、研究を重ね、酸化処理方式のトップメーカーに成長します。また、高度処理のさらなる要請に応え、凝集沈殿法による施設と窒素除去装置を有する設備を完成。その後、下水処理施設装置の自社開発を進め、この分野を拡充していきます。

青森市に納入した窒素除去装置付し尿処理施設

日本特有のごみの性質に対応した新たな燃焼装置を開発

生活水準の向上に伴い、ごみの量が増えただけでなく、その質も多様化しました。欧米諸国と比較すると、日本の都市ごみは水分が多く、低カロリーで高比重であるため、その焼却技術をより難しいものにしていました。日本のごみの性質に対応するため、独自の反転ビーク・ロストル(多段扇形反転火格子)を採用した焼却炉を1972年に開発。これはロストル(火格子)を90度回転させ、ごみをひっくり返しながら燃焼・移送させるもので、高い燃焼効率を実現しました。これにより、当時としては比較的大型の焼却炉の受注を重ねることができました。

ごみをひっくりかえし、燃焼効率を高める反転ビーク・ロストル

1970~1980年代

下水道普及率の向上を目指して

高度成長下、都市化やインフラ整備が急進されたものの、1975年度末時点で下水道普及率は23%と、70%以上を誇る欧米先進国に遠く及ばない状態でした。政府は第4次下水道整備5ヵ年計画を策定。普及率40%を目指して、大規模な整備を開始しました。

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1970~1980年代

生活環境の充実化を目指し、
下水汚泥処理分野へ進出

汚泥処理 下水処理 排水処理 浄水処理

下水の浄化過程で生じる汚泥を処理する、汚泥焼却システム

政府が策定した第4次下水道整備5ヵ年計画を受け、クボタも下水処理事業の拡大へと舵を切ります。水処理事業部から下水事業部を分離独立させ、下水処理の各工程に必要な装置や機器の開発へ重点を置き、下水処理における日本の生活環境の充実化を目指します。

汚泥の処理・処分問題に着目し、下水処理の一貫メーカーとしての地位を確立

政府の第4次下水道整備5ヵ年計画により、全国の下水処理施設が次々と運転されるに伴い、今度は下水の浄化過程で生じる大量の汚泥の処理・処分問題が顕在化します。クボタはこれらの動きにいち早く着目し、汚泥の一連の処理システムに必要な装置として、縦型遠心濃縮器や汚泥熱処理装置、ベルトプレスフィルター、汚泥熱焼却溶融炉などを相次いで開発。新製品が各自治体に採用され、水処理重点の色彩が濃かったクボタが、汚泥の処理もできる下水処理の一貫メーカーとして認められるようになりました。

汚泥熱処理装置

農山村、観光地、そして海外へ。海を越え、クボタの水処理技術が活躍

都市部のように、今まで公共下水道だけでは整備しきれなかった農山村や観光地などにも、1981年頃から小規模下水処理施設が普及し始めます。この流れに対応すべく、クボタは小スペースで維持管理が容易な接触酸化法や回分法などの高度な水処理方式を開発し、農山村や観光地へこれを提供。また、国内にとどまらず、下水処理施設の輸出拡大を推進し、1978年の台北市下水処理施設の受注を皮切りに、シンガポール・インドネシアへの下水処理施設も受注します。これは当時、業界でもまだ数少ない輸出事例となりました。

1978年に海外1号物件として受注した台北市下水処理場

水道普及率が90%を突破。クボタの技術が「おいしい水」を実現

1980年から、クボタは加圧脱水機や砂ろ過装置などを開発し、浄水市場に本格参入します。この頃には、すでに水道普及率は90%を超え、量よりも質の向上が求められるようになりました。「おいしい水」を実現するためにオゾンと活性炭を組み込んだ高度処理に特長を打ち出し、1985年に大阪市の柴島浄水場に実証プラントを納入。同じ頃、産業排水処理施設・し尿処理の技術の応用、ごみ埋め立て地の浸出液処理技術の開発にも重点を置き、排水処理施設の分野においても業界を牽引し、トップメーカーの地位を確立します。

大阪市柴島浄水場に納入した「おいしい水」の実証プラントにおける試飲風景
(写真:大阪市水道局提供 )

おいしい水道水を“恒久的に”提供実現へ 高度浄水処理時代の扉を開く

クボタはオゾンと活性炭を組み込んだ高度浄水処理で水道水の品質を飛躍的に高めました。しかし、その高度浄水処理を恒久的に存続するには、技術改良の余地がありました。そこで独自開発したのが活性炭吸着池用下部集水装置「ポーラスボトム」。この装置は空気と水の同時洗浄により、活性炭などのろ材に溜まる汚れを効率的に洗浄することができ、おいしい水道水をより身近なものにしました。やがて、ポーラスボトムは国内で粒状活性炭処理されている全処理水量の約90%に活用されるという圧倒的シェアを占めるようになりました。

1990年代~

水問題は次のステージへ。
水を取り巻く環境の変化

1990年代から、地球温暖化などの世界的な環境問題が顕在化し、人類はその問題を解決すべく、その方法を模索し始めます。また、国内では上下水道の普及率は年々向上し、施設の新設や増設は一段落。改築更新や運営管理が中心となる時代へ突入します。

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1990年代~

時代が求める多様なニーズが
クボタの水処理技術を磨く

液中膜® MBR 回転式表面溶融炉 KSIS

北米最大級のMBR施設を納入した米国カントンの水再生処理施設

水処理分野で確固たる地位を築いたクボタは、国内外で生じる多様なニーズに応えるべく、その技術を磨き、革新的な製品を生み出していきます。温暖化など世界的な問題から国内の水環境をめぐる問題まで、クボタはその一つひとつに寄り添って解決していきます。

中水が解決する水問題。「新たな水」を生む魔法の技術、高分子ろ過膜「液中膜®」

クボタはこれまで廃棄されてきた排水を処理し、上水でも下水でもない、中水として再利用することで水資源を有効活用するべく、高分子ろ過膜「液中膜®」を1991年に発売します。これは膜の微細孔を利用して活性汚泥と処理水とを分離する膜ろ過装置で、これに生物処理を組み合わせた「膜分離活性汚泥法(MBR: Membrane Bio‐reactor)」は沈殿池を必要とせず、施設のコンパクト化を可能にしました。MBRは「利用可能な新たな水」を生み出す高度な排水処理技術として、さまざまな工場や施設に広く普及します。

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精密ろ過を実現する液中膜®のユニット

液中膜®を海外へ積極展開。次世代の下水処理技術として欧州で注目される

欧州では都市排水に関するEC指令の発令以来、海岸・河口・入り江などへの厳しい排水基準をクリアすべく、対策を模索していました。世界市場開拓に注力していたクボタは1998年、液中膜®による下水処理実証プラントをイギリスの水道会社・ウェセックスウォーター社に納入。その高い処理能力に加え、制御・メンテナンス性、省エネ性能が高く評価され、次世代の下水処理技術として、欧州全土から注目されます。これがきっかけとなり、2001年、ロンドンにKubota Membrane Europe Ltd.を設立しました。

ウェセックスウォーター社の液中膜®による排水処理システム実証プラント

日本の下水処理の歴史が動き出す。国内初、MBR法採用の大規模施設がついに誕生

イギリスでの成功事例から、世界的にMBRが注目され始め、欧州・北米にとどまらず、中東やアジアへとニーズが広がります。日本では当初、電力消費量の課題から、小型下水処理施設に導入が限定されていましたが、クボタは省エネ型の大規模MBR施設を2005年に開発。国内初のMBR下水処理場として、兵庫県に福崎浄化センターが誕生しました。2011年の国内最大級の堺市三宝下水処理場、2013年には米国カントンの水再生処理施設に北米最大級のMBR施設を納入し、国内だけでなく、海外にもクボタのMBRが普及していきます。

日本初のMBR下水処理場である福崎浄化センター

国内不法投棄廃棄物処理への貢献。再生を目指す島と共に歩むクボタ

1990年代に瀬戸内海の豊島で発覚した産業廃棄物不法投棄は、深刻な社会問題となりました。これを受け、2003年に豊島の隣にある直島に「香川県直島環境センター」が建設され、廃棄物の処理が開始されます。ここで活躍しているのがクボタの回転式表面溶融炉。多様な廃棄物処理が可能で、ダイオキシン類を分解・無害化し、廃棄物から鉛や亜鉛等を分離・濃縮して、残った灰をスラグに変えて、再利用できます。「豊島の不法投棄廃棄物を未来へ残さない」。豊島再生プロジェクトの一端に、クボタのごみ処理技術が活かされています。

年間300日以上稼働するクボタの回転式表面溶融炉

「人と環境と経済にやさしく」省エネ・省スペース・低コスト追求、技術の極限に挑戦

限りある資源と予算、厳しさの増す環境基準。さまざまな制約のなかで、設備や機器装置の新設は容易ではなく、昨今の要請は改築更新や運用管理へとシフトしています。クボタは維持管理性向上を目的とし、ステンレスベルトを用いたコスト縮減型の「ベルト型ろ過濃縮機」を開発しました。優れた省エネ性、高い濃縮濃度と回収率の確保、短時間での効率的な濃縮処理が特長で、本体動力が小さく、CO2排出量の抑制にも貢献。建設費や維持管理費の低減、場内スペースの有効活用、優れた耐久性による長期的な安定稼働が可能になりました。

ろ過性に優れたステンレスベルトで濃縮される汚泥

クボタ半世紀のノウハウとIoTが融合。水環境トータルソリューションKSIS始動

2017年、クボタは半世紀に渡り、培ってきた水処理技術を結集させ、製品・プラント機器単体から、システム・アフターサービスまで含めた新サービス「KSIS(Kubota Smart Infrastructure System)」を発表しました。水・環境インフラのすべてにIoTを搭載し、機器の監視から診断、メンテナンスまでを一貫してサポート。5千件の遠隔監視システムと1万台の通報装置を設置し、独自のシステムで水環境施設を見守ってきたクボタだからこそ実現できる次世代のソリューションです。

KSIS監視画面のイメージ。水位や流量などの状況が一目でわかる

世界の人たちに安全な水を。日本を支えた水処理技術を世界へ

世界最高水準と言われる日本の水インフラ。クボタは高い水処理技術でそれを支えてきました。しかし、世界を見渡せば、今なお7億人が安全な水を利用できていません。長年、水問題に真摯に向き合い、水に困る人に寄り添い、培ってきたクボタの水処理技術で、今後も世界の水問題を解決していきます。