長きにわたり社会主義政権による鎖国状態だったミャンマー(旧ビルマ)は、「アジアのラストフロンティア」と呼ばれ、海外からの投資が進んでいた。日本とミャンマーの友好の歴史は古く、2014年には外交関係樹立60周年を迎えており、クボタとも深い交流を続けていた。そして日本からミャンマーへの援助は、JICA(国際協力機構)を通じて行われており、ティラワSEZ(ティラワ経済特別区)の開発も、持続的経済成長のために必要な支援として2012年から始まった 。
ティラワSEZとは、先進のインフラ水準をつくり上げ、そこに海外資本を投入、ミャンマー国内の雇用をつくり全国へ展開していくといった新しい都市開発構想で、工業団地のみならず、住宅、大学、研究機関などを完備、また環境面でもスマートシティであることをめざしていた。先進都市ティラワを通じて、ミャンマーのこれからの姿を示していく。いわばこの経済特別区開発はミャンマーの未来を占うといえる重要なプロジェクトだった。
開発には、まず用地造成や電気や水道など、大規模で質の高いインフラ整備が求められた。しかし、ミャンマーでの工事は雨季の影響が大きく、工期が遅れることは当然と思われるほどであった。そのような状況においても、工期通りに作業を進めることこそが日本企業が持つ力をミャンマー、そして世界の国に示すことにつながる。両国の威信がかかったこのプロジェクトは「すべてはミャンマーと日本のために」という思いを持って、日本企業が一丸となって「JAPAN MODEL」 をつくり上げることとなった。
第一期の用地造成工事は五洋建設株式会社が受注し、クボタはサブコントラクタとして参画。取水・給水設備、浄水場、下水処理設備など、ティラワSEZの水環境関連設備の建設工事一式を担った。約3.5km離れた地にあるザマニ貯水池から、道路沿いに敷設したダクタイル鉄管※2で工場内の浄水場に引水し、各工場に配水。下水処理は、各工場から出る汚水を下水処理場に集め、浄化して調整池に排水するといったものだった。
東南アジアの国々でいくつもの水インフラの整備に携わってきたクボタは、お客さまと一緒になって考えることで、目に見える課題だけでなく、顕在化していない課題も発見し、解決策を提案することの重要性を知っていた。このティラワSEZのプロジェクトでも、浄水や下水処理のランニングコストを極力抑えたいという要望に、クボタ独自の処理方式を提案し、電気代を大幅に節約。お客さまの要望を超えるトータルなソリューションを実現した。この事例は、クボタにとってグローバル企業として世界へ、その真価を提示したプロジェクトになった。クボタはこれからも、現地の声に寄り添いながら、地域から水問題を解決し、その技術やノウハウを世界の課題解決へとつなげていく。