水は世界中どの国においても貴重な資源だが、特に砂漠の国オマーンでは、その希少性は一気に跳ね上がる。オマーンの国土は砂漠・土漠地帯が82%を占め、全土が砂漠気候で、河川はない。平均降水量は年100mmと極めて少なく、こういった地理的・気候的要因から、慢性的な水不足にさらされてきた。オマーンでは1970年代半ばから、海水淡水化プラントが国内各地に建設され給水網も整備されたことで、国民に安全な水が供給されていった。しかし、首都マスカットを中心に人口増加・都市化が進んだ結果、次の課題となったのが水の再利用である。限りある水資源を無駄にすることなく再利用するための、高度な排水処理が求められた。この課題に応えたのが、クボタの液中膜※2である。
マスカットのアルアンサブ下水処理場では、微生物による生物処理に膜による固液分離処理を組み合わせた排水処理方式であるMBRによる下水処理プラントが2010年から稼働を開始し、処理水再利用の一翼を担ってきた。そして新たに立ち上がったプロジェクトが、下水処理場の大規模な拡張工事だった。
2016年初頭に始まったこの工事は、決して容易なものではなかった。施設の運転を止めることはできないため、事前に段取りと手順を組み立て、液中膜の置換を行う工事は下水処理を継続しながら行われた。工事は着実に進められ、2018年5月に完工し、稼働を開始。下水処理量は拡張前の1日5.7万㎥から12.5万㎥へ大幅に増大し、これによってアルアンサブ下水処理場はその当時、中東地域のMBRとしては最大規模の処理能力を有することになった。
今回のプロジェクトに導入されたMBRは、中東地域においても、水の再利用により水不足を解消するためのキーテクノロジーであることは間違いない。すでにクボタのMBRは、欧州やアメリカ、中国、東南アジアに納入され、さまざまな国や地域で活躍している。今後もクボタは、液中膜をはじめとした製品、技術力、ノウハウを駆使して、世界の水問題に取り組んでいく。