砂漠地帯にあり、降雨量の少ない中東の国カタールでは、水資源の多くを地下水や、海水を淡水に変えるシステムに依存している。そして、2000年以降の経済成長と人口増加を背景に、急速に都市化が進展。増え続ける水需要に対して、安全で安心できる飲料水を大量に供給できる水インフラの整備が、最も重要な社会課題のひとつとなっていた。
2014年、カタール政府はそのような課題を解決するために、「上水道メガリザーバープロジェクト」を立ち上げた。渇水などの非常時に備えて、首都ドーハ市民の「命の水」といえる生活用水7日分を蓄えるという、世界が注目するチャレンジであった。このプロジェクトでは、総延長約500kmの送水管路や、世界最大級のポンプ場が求められ、クボタは必要とされた管路全体の3分の2に当たる量のダクタイル鉄管やポンプの提供を担うこととなった。
このプロジェクトでは、50年以上の耐久性を備えた「世界トップクラスの製品を使いたい」というカタール水電力公社トップの強い意向で、厳しい審査が行われ、クボタがサプライヤーに決定した。それは、1970年代からのカタールをはじめとした中東諸国の水道整備事業への貢献、さらにクボタにしか提供できない9mのダクタイル鉄管が、気温が50℃、さらに砂漠の砂に大量の塩分が含まれるといった厳しい環境の中でも、優れた耐久性と防食性を発揮することで漏水のリスクを抑え、淡水化した貴重な水を確実に、長い距離を運ぶことができる水道管として認められた結果であった。
また、このプロジェクトでは、約3万3,000本にもおよぶ大量のダクタイル鉄管を、1年半という短期間ですべて納品することとなった。これほどの大規模で短納期の案件は、クボタにとっても初めての経験だったが、生産拠点であった日本の京葉工場とともに達成した。
クボタはこれまで日本国内で培われた技術や実績を生かし、国や地域ごとに異なるニーズに対応しながら水インフラの整備に貢献してきた。これからも世界で、命を支える水を運ぶという使命に挑戦し続ける。