中国は1978年から2008年まで30年間にわたって、実質GDP年平均約10%の高成長率で急速な発展を遂げてきた。生活水準の向上にともなって生活排水が増加し、都市部での下水処理場の稼働数は2008年時点で1997年の5倍に達していた。そして2010年には、2,832ヵ所の下水処理場が稼働し、汚水処理率は77.4%まで上昇。一方、農村部の下水処理整備は大幅に遅れていた。61万以上の行政村のうち、97%の村では排水管渠(かんきょ)や汚水処理システムが未整備のままで、生活・産業排水による水質汚濁が深刻な問題になっていた※2。都市部だけでなく、広大な農村地域においても早急な排水処理技術・システムの開発と整備が必要となっていた。
この課題を解決するには、浄化槽が最適だとクボタは考えた。浄化槽は下水道管路の敷設の必要がないオンサイト水処理システム※3で、高度な処理水質が期待でき、そのコンパクトさから導入が比較的容易である。しかし、当時の中国では浄化槽の認知度は低かった。そこでクボタは、2011年にプラントエンジニアリング事業をはじめ、膜装置や浄化槽などの機器販売を行う久保田環保科技(上海)有限公司を設立。農村部を中心とした水質改善への取り組みを開始した。
まず、中国市場にマッチした小型浄化槽を、将来的に現地で生産することを見据え、パーツを送り現地で組み立てることを決定。クボタから直接エンジニアが足を運び、組み立てや販売の指導を行い、言葉の壁を越え現地スタッフも積極的に作業に取り組んだ。また、浄化槽は軽量素材のため、輸送中に一部が破損してしまうという思わぬトラブルにも直面した。しかしそのような課題にも、コストをかけずに破損の発生を防ぎ、供給できるように出荷方法を工夫することで、輸送破損は大幅に削減された。
クボタの浄化槽が中国各地へ浸透する道は、切り開かれたばかりだ。広大な国土を持つ中国には、下水の浄化を求める地域はまだまだ多い。そして地域の実情に見合った最適な方法で対応することが重要となる。オールクボタの技術で、世界のさまざまな水問題の解決に貢献していく。