1960年代、欧州諸国は、北米や日本と同様に激しい環境汚染・公害を経験。1970年代から、水に関する法制度の整備を進めるなど、EC(欧州共同体)※2として歩調を合わせ、水質改善に取り組んでいた。その中でもイギリスは、約160年前から近代的な下水道建設に取り組み、1990年代には96%と高い普及率に達していた。しかしながら、それらの施設は老朽化が進み、処理場の規模によっては下水処理の精度に差が生じるようになっていた。
そのような状況の中、海岸・河口・入り江などへの厳しい排水基準を定めた「都市排水に関するEC指令※3」が1991年に発令され、当時加盟国であったイギリスでも、そのクリアに都市排水の処理方法が模索された。そして、その頃クボタが開発を進めていたのが、液中膜を使った新しい排水処理システムだった。その画期的な技術は、次世代の下水処理技術として注目され始めていた。
1995年、クボタは液中膜に生物処理を組み合わせたMBR(膜分離活性汚泥法)※4による下水処理実証プラントをイギリスの水会社に納入。そして、1998年には液中膜を用いたイギリスで最初の下水処理場が稼働を開始した。この最新の水処理システムは、下水の中の大腸菌をも除去する「高度な膜分離性能」や、大きな付帯設備や後処理を必要としない「優れたコンパクト性」、また10年規模で機能を維持できる「実績ある信頼性」が評価された。
クボタは、これをきっかけに、2001年ロンドンに液中膜による排水処理システムの販売会社Kubota Membrane Europe Ltd.を設立。このイギリスでの成功事例から、その後に欧州や中東へ、2000年代には北米やアジアから世界中へと広げていった。時代は水質の改善から、排水の再生とその利用を求めていた。クボタは技術で社会の要請に応えていった。