環境問題への取り組みは、1970年から世界的な広がりを見せていた。アメリカでも1970年にEPA(環境保護庁)※2が設立され、環境に関する主要な法律が施行されていった。Clean Water Actもその一つで、河川や領海への汚染物質を含んだ水の排出を規制し、水質の基準を設定する目的で制定された。また、そういった排水の水質規制強化と同時に、アメリカでは老朽化した既存施設の拡張や統廃合による下水処理場の大規模化が進んだ。ただ規模の拡大はコストの増大を意味する。今後、大規模処理施設が増加していく中で、水質基準を守りながら、高度な排水処理にかかるコストをいかに抑えるか、という課題への解決が求められていた。
クボタは1980年代後半から、MBRの膜分離装置として用いられる液中膜※3を開発。省スペース・省エネルギー・高度処理能力を兼ね備えた製品として、主に中小規模の施設への導入を強みとしていた。さらに2005年、Kubota Membrane U.S.A. Corporationを設立。日本で長年培った排水処理エンジニアリング能力を生かし、アメリカで求められる大規模処理施設にも対応した処理技術の開発と、エネルギー効率の向上、さらに液中膜の本体サイズの多様化を実現したことで、大規模処理施設での採用も増加している。2013年、オハイオ州カントン市においてMBRでは当時北米最大規模となる水再生処理施設を受注したのも、その一つである。
また、水の処理を行う現地の気候や水質、微生物の種類や量とその特質に適合したMBR処理システムを設計するため、2016年、同水再生処理施設内に水・環境分野でクボタ初の海外研究開発拠点クボタ北米水環境研究所を設立。低水温域での液中膜の性能向上や省エネ運転の実現など、効率よく稼働させるための研究開発も行っている。クボタは今後も、求められる基準をクリアしながら地域のニーズに合わせた水処理システムを提供し、国境を越え世界各地で水環境の保全に貢献していく。