日本の水道事業は「“市町村経営”と“独立採算制”」が原則である。しかし、少子高齢化にともなう人口減少がますます進んでいくとともに、節水機器の普及や使用水量減少などの影響により水道料金収入は減少傾向にある。さらに事業体職員の高齢化により人材も不足しており、自治体の努力だけでは21世紀の水インフラを維持運営していくことは困難とも言える。
このような状況の中で今必要とされているのは、そのための資金と人材の確保であり、民間の資金をはじめ、経験、知恵を活用できる官民連携である。それは自治体と民間で対話と提案の場を増やし、情報やノウハウを共有・習得することで水道事業の状況改善につなげ、さらに民間の事業機会の拡大による経済成長を期待するものである。
2002年頃からは上水道だけでなく下水道も含めた老朽化する施設更新を機会とした、新しい維持管理をめざす官民連携が推進されてきた。その手法には公共が資金を調達し、設計、建設、運営を民間事業者に委託するDBO(デザイン・ビルド・オペレート)※2や民間の資金とノウハウを活用するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)など、自治体の状況や民間に委託する内容に応じてさまざまな方式がある。いずれも公共施設などの設計、建設、維持管理および運営に民間の技術力とノウハウを生かし、公共サービスの提供を民間主導で行い、効率的かつ効果的な公共サービスを提供する方式だ。クボタでもこういった要請に、これまで水関連の総合メーカーとして提供してきた製品やサービス、さらに管理運営といった領域までを担える総合力で応える体制構築を行った。
2017年、下水道の水処理施設において日本初のPFI事業である大阪市海老江下水処理場改築更新事業に参画。設計・建設、保全管理業務までに関わるPFI事業として次世代の下水処理場のモデルケースとなることが期待されている。また2020年には、水道施設などの設計、建設さらに運転管理までを一つの事業としたDBO方式で岡山県備前市・坂根浄水場および三石第一加圧ポンプ場整備事業に参画。これは、人体に悪影響を及ぼすクリプトスポリジウム※3などへの対策強化のための紫外線処理施設導入を含む水道施設のDBO方式としては日本初の事業案件でもある。今後必要性が高まる上下水道全般での民間連携に、クボタはこれまでの経験の活用による合理的な設計、建設・施工の品質確保、さらに運営へその連携を深めることで、上下水道事業の安定的・効率的な運営に貢献していく。