1947年の耕うん機の発売以来、クボタは農作業をよりラクに生産性を高めるため、メーカーとして農作業を機械化していくことで日本の農業の近代化と発展、そして食の安定供給を支えてきた。特に、2000年近くも「手植え」が続いていた田植えに対する機械化ニーズが高まっていた1970年、クボタはついに田植機の量産化に成功する。手植えの約10倍の能率を発揮し、働き手不足や重労働から農家を解放していく。
1990年代になると、「乗ってラクに田植えできる高能率の機械」を求めるニーズが高まる。そこでクボタは画期的な機能を実現する。これまで1回転で1回の苗の植付けだったものを、1回転で2回の植付けを可能にしたロータリー式植付爪の開発だ。これにより植付けの高速化への道が開けた。1991年、ミラクルロータリー搭載S1を発売。乗ってラクに、しかも早く植えるという農家の声に応えた。すると今度は「田植え作業がスムーズになったが、あぜごえが大変」という新たなニーズが生まれた。そこで1998年「あぜごえアーム」を開発し、あぜごえやトラックへの積み下ろしをラクに、安心して行えるようにした。
1997年には画期的な製品、クローラ付きトラクタ「パワクロ」シリーズが誕生する。当時、湿田で高い走行性能を発揮するゴムクローラの装着されたトラクタが注目されていた。クボタもその必要性を感じてはいたが、開発精神である軽量・コンパクトにこだわり、さらに旋回時にほ場※1をクローラが掘り下げて傷めることにも抵抗感を持っていた。そこで発想したのが前輪はホイール、後部にクローラを装着した両方のメリットを併せ持つトラクタだ。水田でラクに早く耕し代掻きしたい、そんな農家に大きな反響を持って迎えられた。パワクロシリーズは今も進化し続け、多くの農家に支持され続けている。
時代は確実に農家の高齢化と働き手不足へと進んでいた。農業の構造も変わり始め、高機能高性能化・高付加価値化という農機によるアプローチだけでは難しい時代を迎えようとしていた。