1990年代の日本はバブル崩壊※1とともに始まった。また少子高齢化問題が浮上し、新たな世紀に向かいつつも日本は先行き不透明な時代となっていた。そのような状況の中、農業においても高齢化が大きな問題となり始めた。1960年代の高度経済成長期※2以降、若者が農村から都市へ流出し続け、新たな働き手や後継者がいないまま農家が年齢を重ねていったためだ。1990年には就農者の平均年齢はすでに約57歳※3となり、日本農業は高齢化産業となっていた。さらに、重労働であるため働き手不足や後継者不足も深刻になり、農業をやめる人が増加。農業全体としての生産力が年々低下し始めた。日本農業は、高齢化の流れの中で、将来の食や農業への不安を抱えたまま激動の時代へと突き進んでいく。
クボタは1947年の耕うん機の開発・販売以降、徹底した「現場主義」で農家の声を聞き、コンバインや田植機などさまざまな農業機械を次々に開発。農村の働き手不足をカバーすることで農業の発展と食料の安定供給、そして農家の暮らしに貢献し、結果として都市や経済の発展にも寄与することにもつながった。しかし高齢化が進む中で、それまでと同じように農家が農業を続けていくためには、さらなる軽労化や快適性、操作のしやすさ・見やすさなど、付加価値の高い農業機械が必要になっていた。クボタは高齢化する農家の悩みに応える農業機械の開発を急いだ。