日本農業の特徴は、高齢者が多く、小さな農地で作物づくりをしている小規模農家や兼業農家※1が多いことである。また、日本の国土の約70%は山林であり、平野部は人々の生活の場であるため、山の麓や斜面などを階段状に整地した小さな農地が数多くつくられているのも特徴といえる。これらは中山間地域※2と呼ばれ日本の全農地面積の約40%を占めている。このような農地は、人と自然が共生する美しい環境を作り、また土の流出や土砂崩れを防ぐなど重要な役割も担っている。ただ、小規模な農家や兼業農家ほど高齢化が進んでおり、将来的なことや体力的なことから農業をやめる人が増加していた。これらの農家とどのように向き合い、農業を続けてもらうのか。日本農業の活性化と食の未来だけではなく、環境や国土の保全にもつながる重要な課題である。
高齢化する兼業農家や中山間地域を含む小規模農家からは「新品でも低価格で、しかも基本機能や性能の確かな農業機械がほしい」という声があった。クボタは常に技術革新を続け、機能・性能を進化させて最適な農業機械によってあらゆる規模の農家の課題に応えてきたが、高齢化する兼業農家や小規模農家の声は、従来とは異なるニーズであった。「確かな基本機能・性能と低価格」、このバランスをいかに高い次元で実現できるか。そこには、圧倒的な価格で農家に喜んでほしい、そのような思いもあった。
ただ、すべてを一から設計していたのでは思うような価格を実現できない。いろいろと検討している中で発想したのが「クボタの総合力を生かせないか」ということだった。クボタはすでに、世界各地にグループ会社や工場、サプライチェーン、販売網などを築いていた。そしてそれぞれの国で、その国の農業の状況や農家の声に応じた最適な農業機械を提供してきた実績もある。そこで海外のさまざまな製品情報や現地での実績をはじめとする各種情報を集め、それらを応用して新たな農業機械の開発が始まった。設計から各パーツに至るまで、グローバルに展開するクボタの英知を結集。試行錯誤の末、2010年に誕生したのが「エアロスターワールド」シリーズである。発表と同時に、多くの小規模農家に評価いただいたのはもちろん、日本においてその圧倒的な価格は業界を驚かせた。クボタは兼業農家や小規模農家が求める農業機械を充実させることで、さらなる軽労化と農業の継続を応援するとともに、国土保全にも貢献している。