1990年に約50億人だった世界の人口は2020年には約78億人に増加、2050年には約95億人になると推測されている※3。それにともない食料不足の不安が高まり、世界共通の課題となっている。解決のためには、アジアに約90%が集中する稲作はもちろんのこと、世界で広く行われ、かつ耕作面積が稲作の約4倍にもおよぶ畑作農業をより効率化していくことが求められている。特に欧州は、大規模な畑作農業地域であり、欧州の畑作農業に貢献することは、世界共通の課題解決につながる。
欧州の畑作農業には大型の畑作用農業機械が必要であり、この分野ではクボタは後発だった。しかも競合他社も多い。これを乗り越えるには、これまでなかった発想と技術が不可欠である。クボタは欧州畑作市場についてのさまざまな調査を始めた。そこで着目したのがインプルメントだ。インプルメントとはトラクタに牽引され、草刈りや施肥など作業ごとに取り替えて使う専用の機器である。欧州では農場のスケールや農作物ごとに多様なインプルメントが使われていた。また現地の農家からは「効率的な農作業をしたい」という声も多く聞いていた。このような調査結果をもとにクボタが発想したのが、動力源であるトラクタと作業をするインプルメントを連携させ一体にして運用するというアイデアだった。
2012年、クボタは欧州で長い実績を持つ老舗のインプルメントメーカー、Kverneland Group(以下 KVG)を仲間に迎えいれた。KVGは「ISOBUS(イソバス)」というトラクタとインプルメントを情報通信でつなぐ国際通信規格を提唱し、その開発を行った中心的存在だった。クボタも独自の精密農業(スマート農業)の開発を進めており、KVGは欧州畑作農業への本格進出を果たすための強力なパートナーとなった。2015年にフランスで開発した、スマート農業の技術を盛り込んだクボタ初の畑作用大型トラクタ「M7001」シリーズとの相性は抜群で、ISOBUSを通じインプルメントと一体となって運用できる「トラクタ+インプルメント」の独創的なソリューションは高い評価を獲得した。それは、より効率的に、より便利に、よりシンプルになど、農家へのさまざまな価値の提供につながった。クボタはさらに、トラクタの大型化・高出力化と、トラクタとインプルメントとの自動化を推進するなど、スマート農業を通してより効率的な畑作農業と、無駄の出ない精密な作業による環境負荷の低減を進めながら食料の増産に貢献していく。