欧州は人口7億人を超える、アメリカと並ぶ巨大経済圏である。人々の環境意識は非常に高く、食や農業においてもそれは徹底している。中でもEU加盟国では共通の農業政策CAP(Common Agricultural Policy)※1の実現のため、持続可能で生産性が高く競争力のある農業への転換が、各農家に求められていた。さらに農産物輸出国であるフランスでさえも、1990年以降、農業者の人口が年々減り続け、農地も減少するなど、根本的な課題に直面していた。ほかにも余剰な窒素やリン肥料による土壌の汚染という問題もあった。このような状況の中で、いかに効率的に低コストで省力化して農作物を提供し、かつ環境負荷の少ない持続可能な農業を実現できるかが重要であった。
クボタは1974年フランスに拠点を構えて以来、中型・小型トラクタが、官公庁や個人が管理する公園や広大な庭園などの芝刈り用機器として高く評価されたこともあり、その分野では確かなブランドを築いていた。また、オリーブ畑やワイン用ぶどう畑、果樹園、畑作と酪農の混合農業でも、当時の欧州にはなかったサイズ感と使いやすさで中・小規模農家のニーズに応えてきた。そして近年、クボタは大型のトラクタを現地で開発・生産を始め、欧州の畑作農業市場へと本格進出した。それは将来的な世界の食料問題に対する取り組みでもある。クボタはM&Aや提携を行いながら、インプルメント※2との相互連携やスマート農業などトータルソリューションを提案し、欧州の持続可能な農業への挑戦を始めたのである。