次のリンクより、本文、このサイトの共通メニューに移動します。

お問い合わせ

NEWS

世界とクボタの交差点 万博シリーズ第8回大阪・関西万博から見える、未来の食料・水・環境へのアクション ~アメリカ/インド~

2025 . 10 . 01 / Wed

写真・文:クボタプレス編集部

2025年4月より開催されている大阪・関西万博にて、世界各国が「思い描く未来」を紹介し、それにまつわる社会課題やクボタの関わりを描く「世界とクボタの交差点」シリーズ。

第8回となる今回は、先端技術とイノベーションで未来を切り拓くアメリカと、世界最多の人口を抱え、農業と食料の課題に挑むインドに焦点を当てます。クボタの技術がどのように両国と交差し、それぞれの社会課題に寄り添いながら新たな可能性を広げているのか。万博という国際舞台を通じて、その姿を見ていきます。

アメリカ合衆国 —共に創出できることを想像しよう—

アメリカのパビリオン

ニューオーリンズを拠点とする、トレイハン・アーキテクツ社が設計を行ったアメリカのパビリオン。左右に三角形の木造建物が2棟並び、その間にキューブが浮かぶ設計となっています。

『When life gives you lemons, make lemonade』
(人生があなたに酸っぱいレモンを与えたのなら、甘いレモネードを作ればいい):アメリカのことわざ

巨大な2つのスクリーンには星条旗や象徴的な風景が映し出され、堂々たる存在感を放つアメリカパビリオン。その2つの建物に挟まれ、宙に浮かぶように設計されたキューブ状の展示空間がひときわ印象的です。テーマは、「Imagine What We Can Create Together.」。

館内では、公式キャラクター“スパーク”がガイド役を務め、来場者を没入型展示へと誘います。留学や研究を通じた「つながり」、環境に適応した食料システムや先端素材、医療技術を紹介する「イノベーション」、全米の多彩な風景を巡る「旅」、そして月の石を含む「宇宙探査」と、アメリカが世界をリードする分野が展開されています。

その中でも特に人気を集めるのが、キューブ内部で再現されるNASAのロケット打ち上げ。部屋に入るとカウントダウンが始まり、ゼロの瞬間に轟音と炎、煙が会場を包み込みます。視覚と音響による迫力の演出は、月や火星、そして生命が存在する可能性に期待が寄せられている木星の衛星エウロパをめざす未来探査の世界へと来場者を導きます。

壮大な展示が映し出す「共創の未来」は、同国の豊かさと可能性を象徴しています。一方で、現実のアメリカ社会は課題に直面しています。広大な国土と豊富な人材を背景に世界経済を牽引してきたアメリカですが、その強大な姿の陰で、慢性的な労働力不足が深刻化しています。

農業分野では、2024年時点で約240万人分の職が空席とされ、農家の半数以上が人手不足を実感しています。こうした労働力不足は建設分野でも同様で、大工や配管工など技能職の不足が住宅市場やインフラ投資の足かせとなっています。

フェスティバルステーションで行われた、沖縄に駐留する第3海兵遠征軍音楽隊による演奏

フェスティバルステーションでは、沖縄に駐留する第3海兵遠征軍音楽隊による演奏が披露されました。同隊は、音楽親善大使団として、年間300回を超える演奏活動を展開しています(7月19日)。

こうした課題を背景に、農業と建設の両分野で機械化と効率化が加速。その現場のニーズに応えてきたのがクボタです。

北米では、従来の農業用途に加えて、家庭菜園やレジャーとして農業を楽しむ層にも市場が形成されています。こうした多様な顧客層に向けて、クボタはトラクタを中心とした製品群を展開しており、コンパクトトラクタや乗用モーアから、大規模農場向けの大型モデルやユーティリティビークルまで、幅広いニーズに応えています。

さらに建設分野では、コンパクトトラックローダやミニバックホーといった機械が技能労働者不足を補う存在として評価されています。その現場を支えているのがクボタのエンジン部門であり、建設を中心に産業分野で活用され、北米事業を下支えしています。

そして、水。干ばつや地震リスクを抱える西海岸をはじめ、アメリカでは水インフラの安定が社会の基盤です。クボタが提供する耐震性に優れたダクタイル鉄管「GENEX(ジェネックス)」や、液中膜による浄水技術は、上下水道の安全を支える存在として導入が進められてきました。農業や都市生活の裏側で、こうした「見えないインフラ」もまた、クボタの役割の大きな柱となっています。

一方で、クボタは未来に向けた挑戦も打ち出しています。万博内「未来の都市」パビリオンに展示されているのは、汎用プラットフォームロボット「Type:S」です。そのベース機となる「KATR(キャトル)」は、傾斜地でも荷台を水平に保ちながら走行できる全地形対応型プラットフォーム車両で、2025年1月にラスベガスで開催された世界最大級のデジタル技術見本市CESにおいて、「Innovation Awards®」の最高位「Best of Innovation」を受賞しました。荷重240㎏の荷台を備え、エンジンまたは電動の選択が可能で、遠隔操作にも対応するなど、農業・建設・災害対応といった幅広い現場での活用可能性が評価されました。

また、2024年にはハワイに現地法人(Kubota Rice Industry (Hawaii) Inc.)を設立し、日本から輸入した玄米を精米・販売する事業を開始しました。これまでレストラン向けが中心だった販路を家庭へと広げるだけでなく、日本の食文化をアメリカの暮らしへ届ける新しい価値を創出しています。今後はアメリカ本土への展開も視野に入れ、日米をつなぐ役割としての期待も高まっています。

機械とエンジンが農業や建設といった産業基盤を支える柱だとすれば、水インフラの整備や日本産米の供給は暮らしの安心と多様性の豊かさを支える取り組みです。産業を支える力と、暮らしを支える力。その両方に関わるところにこそ、クボタの「世界と交差する姿」があります。

インド —伝統と未来を紡ぐ力—

インドのパビリオン

伝統と未来をつなぐ象徴としてインドパビリオンの入口には、インドの自立と平和の象徴である手紡ぎ糸の輪「チャルカ」が展示されています。

『बूँद-बूँद से सागर भरता है।』
(一滴、一滴によって海は満たされる):インドのことわざ

外観には蓮や菩提樹をモチーフとしたデザインが取り入れられ、屋上には72,576個のLEDライトを配した「ジオライト・メッシュ・ルーフ」が設けられています。日没後には光の粒が一斉に点灯し、建物全体が浮かび上がるように輝き、荘厳な夜景をつくり出します。昼夜でまったく異なる表情を見せる建築は、訪れる人々に強く印象を残します。

館内に足を踏み入れると、多民族・多宗教・多言語国家であるインドの伝統と革新が交差する展示が来場者を迎えます。精緻な館内の装飾や飾られた陶器や布地は地域ごとの文化の厚みを伝え、鉄道模型のジオラマは巨大市場を支える力強さを映し出します。さらに、スパイス香る料理を提供するレストランも併設され、来場者にこの国の日常と伝統の息づかいを感じさせます。

また、世界で初めて月の南極付近に降り立った月探査機「チャンドラヤーン3号」の縮尺模型の展示は、科学大国としての一面を強調し、宇宙開発の分野で存在感を高めるインドの姿を象徴しています。

インドパビリオンのテーマは「バーラト(インドの国名を指す言葉)―体験し、記憶し、受け継がれるもの—」。伝統文化と最先端科学を同じ館内に並置することで、多様性と未来志向を一つの意図で紡ぐ姿を示しています。

インドの人口はおよそ14億を超え、2023年には中国を抜いて世界最大となりました。若年層の比率が高く、平均年齢は28歳前後とされ、経済面では、2024年の実質GDP成長率が6%台を維持し、世界でも有数の成長スピードを誇ります。特に情報通信技術(ICT)や製造業振興の「メイク・イン・インディア」政策が進展し、グローバル企業の投資先としても存在感を高めています。

しかしながら、国民の約4割が農業に従事し、農業は今なお人々の暮らしを支える主要産業ですが、作物の収量不足やインフラ整備の遅れ、気候変動による干ばつや洪水といったリスクが、食料供給を不安定にする要因となっています。

さらに都市部では、急速な人口集中により住宅・交通・水インフラがひっ迫。経済成長の勢いと同時に、雇用の創出、農業の効率化、都市インフラの整備といった課題が山積しています。

強大な人口規模と成長力を誇るインドは、まさに「可能性」と「課題」を同時に抱える国。その課題をどう克服し未来へとつなげていくかは、世界全体の持続可能性に直結しています。

インドの魂を宿した古典舞踊と民族舞踊を披露する日本人プロフェッショナルグループ

インドの独立記念日に行われたナショナルデーの式典では、3組の日本人プロフェッショナルグループが、インドの魂を宿した古典舞踊と民族舞踊を披露しました(8月15日)。

インドは世界最大の農業従事人口を抱え、食料生産の大部分を小規模農家が担っています。こうした現場に対して、クボタは農業機械の提供を通じて生産性向上と効率化に貢献してきました。トラクタや田植機、コンバインといった機械は、労働集約的な作業を支える大きな力となり、担い手不足や気候変動による作付けリスクに立ち向かう手段となっています。

しかし、インド市場でクボタは、参入当初は現地の使用実態に十分に対応できず、課題も抱えていました。現在は、悪路での荷物運搬を含む多用途に対応できる「マルチパーパストラクタ(多目的型トラクタ)」を投入し、さらに現地の大手農業機械メーカー、Escorts社との提携を通じて事業基盤を拡充しています。両社の強みを組み合わせることで、軽量高性能と重量級の価格競争力を兼ね備えた幅広いラインアップが整い、2022年には子会社化を経て「Escorts Kubota Limited」が誕生。現地開発・現地生産の態勢が強化されています。

いまやインドでは、日本流の“カイゼン(改善の積み重ね)”に通じる考え方が少しずつ取り入れられ始めています。販売会社や農家が小さな変化に気づき、「製品が変わってきた」と語る姿は、日本で培ってきた企業文化が現地に広がりつつある様子がうかがえます。

そしてインドを拠点に、視線はすでに世界へ向けられています。欧州やアフリカへの輸出、現地サプライヤーとの連携、さらには優秀なエンジニア人材の採用。挑戦の舞台は一国にとどまらず、世界の食と農の未来を見据えた展開へと広がっています。

壮大な物語を映像で体感させるアメリカ、伝統と革新を一つに紡ぐインド。アプローチは異なっても、その根底には「人と未来をどうつなぐか」という共通の問いかけがありました。

クボタは、アメリカでは農業・建設・水インフラを支える力として、インドでは小規模農家の現場に寄り添う力として、それぞれの国と確かに交差しています。人の営みと未来を支える力、その両面で世界の課題に応える姿を静かに示しています。

そして、「世界とクボタの交差点」万博シリーズもいよいよ最終回へと向かいます。これまで描いてきた国々との交差点を振り返りながら、クボタが未来社会に投げかけるメッセージを、あらためて見つめます。

SHARE

  • Facebook 公式企業ページ
  • #クボタ hashtag on Twitter