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世界とクボタの交差点 万博シリーズ第4回大阪・関西万博から見える、未来の食料・水・環境へのアクション ~スペイン/タンザニア~
2025 . 06 . 23 / Mon

写真・文:クボタプレス編集部
2025年4月より開催されている大阪・関西万博にて、世界各国が「思い描く未来」を紹介し、それにまつわる社会課題やクボタの関わりを描く「世界とクボタの交差点」シリーズ。
第4回では、かつて黒潮を通じて日本とつながり、そしていま、新たな技術で地球規模の課題に向き合うスペイン、そしてアフリカの大地で未来を耕すタンザニアを取り上げます。クボタの技術がどのように交差し、未来への道をともに描こうとしているのか。万博という国際的な舞台を通じて、その一端を探ります。
スペイン王国 ―海から太陽へ、黒潮に導かれた共創―

スペインのパビリオンでは、太陽が海に反射する様子が象徴的に表現されています。内部は、「黒潮」をテーマに、日本とスペインの歴史的なつながりを巡る構成となっています。
『Más vale pájaro en mano que ciento volando.』
(手にある鳥は、空を飛ぶ百羽よりも価値がある):スペインのことわざ
「海」と「太陽」を象徴に据えた建築設計が印象的なスペインパビリオン。来場者はまず「太陽の広場」から入場し、巨大スクリーンに投影される現代アーティストたちの映像作品に迎えられます。
館内は一転して、深海を思わせる静かで神秘的な空間へと変わります。そこでは海洋生物の生態、ブルーエコノミー、カナリア諸島での藻類由来のバイオ燃料や化粧品の研究などが紹介されます。さらに、ドン・キホーテの風車を彷彿させるホログラムによる風力発電の展示も登場し、スペインの歴史的イメージと現代技術が融合します。
こうした展示は、スペインが育んできた自然観と、地球規模の課題への取り組みについて、来場者が「没入体験」できる仕掛けとなっています。
パビリオンのテーマは「黒潮、二つの国をつなぐ一つの海の中へ」です。1609年、御宿沖(千葉県)で遭難したスペイン船サン・フランシスコ号の乗組員が現地住民に救助された出来事、そして1613年、支倉常長らが太平洋を越えてスペインをめざした慶長遣欧使節。こうした史実が示すように、日本とスペインは、黒潮という大いなる海の力によって結ばれてきました。
現在のスペインでも、海と太陽の恵みを生かした農業が、地域社会の基盤を支えています。ブドウ、オリーブ、リンゴなどの果樹栽培が広く根づく一方で、気候変動による乾燥化、EUにおける環境規制の強化、他にも高齢化や人手不足といった、日本と共通する課題にも直面しています。

ナショナルデーでは、フラメンコダンサーのロシオ・モリーナ氏によるモダンフラメンコのショーが行われ、フラメンコの革命児が生演奏で織りなす情熱的なステージは観客を魅了しました(5月16日)。
こうしたなか、注目されているのがICTを活用したスマート農業の取り組みです。クボタは、作物ごとの状態に応じた農薬散布の最適化、作業記録のデジタル化、そして作業者の健康を守るキャビン安全技術の導入などを通じて、スペイン各地で農業の高度化を支えています。とりわけ、自立走行型の高精度散布機は、環境負荷低減と生産性向上の両立を実現する次世代農業の象徴として期待されています。
こうした技術は、スペインの農家たちにゆとりある暮らしをもたらしています。シエスタ(スペインの習慣である長いお昼休憩)を楽しみ、豊かな時間を過ごす。そんな日常の光景もまた、クボタのスマート農業の挑戦によって支えられているのかもしれません。
「自然と調和しながら、限りある資源を次世代へどうつないでいくか。」
スペインにおけるクボタの取り組みは、そんな問いに対する答えを示しています。
タンザニア連合共和国 ―アフリカの大地で耕される共創のかたち―

コモンズ-B館において出展しているタンザニアのブースでは、アフリカを代表する現代アート、ティンガティンガ絵画が展示されています。
『Polepole ni mwendo』
(ゆっくりは、かえって歩みが早い):タンザニアのことわざ
大阪・関西万博において、タンザニアは「Commons-B パビリオン」にて出展しています。ここは24の国と地域が共同出展する“共創”の場で、それぞれの文化や課題、そして未来への希望が交差する空間です。
タンザニアの展示では、動物をモチーフにしたティンガティンガ絵画をはじめ、タンザナイトの展示や紅茶・コーヒーの試飲体験が楽しめ、伝統衣装や革製品、織物といった手仕事の美しさも紹介されています。
国土の25%を国立公園が占める豊かな自然、キリマンジャロ山やセレンゲティ国立公園といった世界遺産の存在もまた、同国が持つ固有の魅力が展示の随所に反映されています。こうした展示を通じて見えてくるのは、多彩な自然資源と文化の蓄積を、自国の強みとして次世代に伝えようとするタンザニアの姿です。
東アフリカに位置するこの国では、国民の約8割が農業に従事しており、農業は人々の暮らしの基盤となっています。主な農作物には、トウモロコシやキャッサバなどが挙げられますが、近年ではお米の役割が改めて見直されつつあります。保存性や調理のしやすさに優れたお米は、食料の安定供給だけでなく、将来的な輸出を見据えた基幹作物として期待されています。

ナショナルデーには、アフリカ音楽とアラブ音楽が融合した「タアラブ」のステージや、伝統衣装と打楽器に彩られたダンスパフォーマンスが披露されました(5月25日)。
こうしたなか、クボタの農業機械、特にコンバインの導入は、現地の農業に大きな変化をもたらしています。かつては収穫から脱穀までに数日を要していた作業が、わずか1日で完了するようになり、生産性の向上は農家の労力を軽減しただけでなく、子どもたちが学校に通える時間を生み出すなど、生活全体に波及効果をもたらしています。
さらに、タンザニア北部にあるキリマンジャロ農業研究所では、農業指導者や普及員を対象にした研修が行われており、日本との技術協力の歴史が、いまもなお息づいています。1970年代に日本の協力で設立されたこの研究所は、今なお地域農業の「知」の拠点として機能し、アフリカにおける技術普及の一翼を担っています。
「アフリカには世界に食料を供給できる可能性がある。足りないのは、土地ではなく“技術”なのです。」
地球規模での食料問題が深刻さを増すなかで、タンザニアは受け取る側ではなく、“育て、届ける側”へと静かにその歩みを進めています。クボタによる農業機械の導入と技術支援は、その歩みにそっと寄り添い、確かな道を耕し続けながら、アフリカの大地に未来の種をまき続けています。
海と太陽の恵みに包まれたスペイン。アフリカの実り豊かな広大な大地を耕すタンザニア。異なる風土に育まれた二つの国で、クボタの技術はそれぞれの未来と交差しています。高度化が進むスマート農業も、収穫の喜びを守る基礎的な技術も、そこにあるのは「ともに耕し、ともに築く」という共創の姿勢です。
クボタはこれからも、命を支えるプラットフォーマーとして、世界中に溢れる小さな希望に目を向け、丁寧に育てていきます。