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世界とクボタの交差点 万博シリーズ第3回大阪・関西万博から見える、未来の食料・水・環境へのアクション ~ポルトガル/バングラデシュ~
2025 . 06 . 11 / Wed

写真・文:クボタプレス編集部
2025年4月より開催されている大阪・関西万博にて世界各国が「思い描く未来」を紹介し、それにまつわる社会課題やクボタの関わりを描く「世界とクボタの交差点」シリーズ。
第3回では、海洋国家として長い歴史を持つポルトガルと、気候変動による課題と向き合うバングラデシュを取り上げます。クボタの技術がどのように交差し、未来への道をともに描こうとしているのか。万博という国際的な舞台を通じて、その一端を探ります。
ポルトガル共和国 —海と果樹に囲まれた国で、息づく技術—

隈研吾氏が設計したポルトガルのパビリオン。約1万本の吊り下げられたロープが海の波のように揺らめき、海洋保護のメッセージを体現しています。
『Devagar se vai ao longe』
(ゆっくり行けば遠くまで行ける):ポルトガルのことわざ
大航海時代から今日まで、海を越えて世界とつながってきたポルトガル。今もなお、「海とともにある」という価値観が、国民の暮らしの中に息づいています。
ポルトガルが掲げる“ブルーエコノミー”の理念を象徴するかのように、パビリオンテーマは「海:青の対話」。設計は日本の建築家・隈研吾氏が手がけ、リサイクルされた漁網と約1万本のロープが風に揺れる外観は、静かに呼吸する海の気配が、建物全体に満ちているようです。
展示空間は、「知識の共有」と「持続可能なパートナーシップ」の2つのテーマに分かれています。「知識の共有」では、500年前にポルトガルと日本をつないだ航海の記憶が、多様な手法で紐解かれます。「持続可能なパートナーシップ」では、海洋保護や再生可能エネルギー、気候変動への対応といったテーマが、映像や没入型の展示(インスタレーション)を通じて来場者に問いかけられます。
EU最大級の排他的経済水域を持ち、海とともに歩んできたポルトガルは、その海という資源を軸に、持続可能な未来のビジョンを具体的に描き出しています。
一方で、ポルトガルにはもう一つの顔があります。地中海性気候を生かした果樹栽培の国という側面です。柑橘類やブドウなど多彩な果樹が育つこの地では、環境に配慮した病害虫の防除や農薬使用の最適化といった課題に対して、新たなアプローチが求められています。

ナショナルデーではポルトガルの人気歌手ディノ・デ・サンティアゴ氏が登場し、カーボベルデとポルトガルの音楽を融合させた楽曲を披露しました(5月5日)
そうしたなか、クボタは2024年、隣国スペイン・バレンシアのスプレイヤーメーカー(薬剤噴霧用インプルメント)、フェデ社をグループに迎えました。AI技術を活用し、果樹一本一本に合わせて薬剤の噴霧量を調整する自走式自律スマートスプレイヤーや、作業履歴を地図で可視化するシステムは、環境負荷を抑えつつ高精度な農業の実現に貢献することが期待されています。
スペインと地続きで、同じような気候・地形条件を持つポルトガルでは、果樹栽培におけるスマート農業の導入が今まさに始まりつつあります。果樹栽培に対応したクボタの「ナロートラクタ」とインプルメントの連携が注目され、これらの技術は、ポルトガルの風土と調和しながら、未来への礎を築きつつあります。
海と果樹、ふたつの自然資源に囲まれたポルトガルにクボタの技術が静かに根づきはじめています。
バングラデシュ人民共和国 —水と暮らしをつなぐ、明日を支える力—

「いのちをつなぐ:伝統とイノベーションが調和する国」をテーマに掲げるバングラデシュのパビリオン。展示の中心には、伝統工芸である繊維製品が数多く並びます。
『জীবন মানে চলতে হবে, না হলে বন্ধ হবে।』
(歩みを止めると、道は閉ざされる):バングラデシュのことわざ
バングラデシュ館の入口では、ジュート(黄麻)製のバッグが来場者を迎えます。同国は世界第2位のジュート生産国であり、輸出量においては世界トップを誇ります。館内では、繊維、革製品、医薬品といった身近な産業が一つひとつ丁寧に紹介され、展示全体からは「暮らしの中で培われてきた誇り」が感じられます。
展示パネルには、「世界で最も肥沃な土地を持つ国」や「心を込めたクラフト」といった言葉が並び、「より良く生きるためのウェルネス」というフレーズからは、未来への挑戦と持続可能な発展の意志が伝わってきます。
一方で、海外で働くバングラデシュ出身者は世界に約1,550万人おり、同国は世界第7位の送金受取国でもあります。こうした事実からは、世界とつながりながら懸命に暮らす人々の姿が浮かび上がってきます。

カントリーデーの催しでは、バングラデシュの伝統楽器を用いた演奏と歌が披露され、観客が手拍子でリズムに加わる場面では、会場全体が一体感に包まれました(5月11日)。
バングラデシュは、1972年に日本と外交関係を樹立して以来、親日国として知られています。2023年には、両国の関係は「戦略的パートナー」へと格上げされ、インフラ整備やODAを通じた協力関係が深まっています。
そうした関係の象徴ともいえるのが、クボタが関わった「カルナフリ上水道整備事業」です。
南東部チッタゴン市において、2012年から2019年にかけて実施されたこの事業では、総延長およそ100kmにわたる上水道管が敷設されました。ヒ素を含む地下水の問題や、水道インフラの整備遅れといった課題を背景に、安全な水を安定的に届けることを目的としたプロジェクトです。
クボタはこの事業を通じて、配管技術の提供だけでなく、現地の人材への技術指導や安全教育の徹底にも力を注ぎました。軟弱な地盤や掘削時の湧水、交通渋滞といったさまざまな困難を乗り越えながら、工事は着実に進められました。整備の結果、チッタゴン市の水道普及率は約47%から85%へと大きく改善し、安全で安定的な水の供給が地域の暮らしを静かに支え続けています。
私たち日本では当たり前とされる「きれいな水」。その信頼を支えてきたのは、今も変わらぬ水インフラ技術の力です。
万博シリーズ第3回では、海とともに歩むポルトガルと、水とともに暮らすバングラデシュを紹介しました。異なる自然環境のもとで育まれてきた知恵と技術は、それぞれのかたちで“自然とともに生きる”という価値観を映し出しています。
クボタは、「食料・水・環境」という暮らしの根幹を支える技術を通じて、世界のどこかで起きている課題に対して、静かに、しかし着実に応えていきます。そして、次の交差点では、どんな未来が広がっているのでしょうか。
開かれる扉の先で、また新たな国との出会いが待っています。