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未来農業を創る『KSAS』のソフトウェア技術者に聞く「IoT・人工知能・クラウド・自動認識を農業に」ソフトウェア技術による革新

2018 . 07 . 30 / Mon

「IoT・人工知能・クラウド・自動認識を農業に」ソフトウェア技術による革新

文・写真=クボタプレス編集部

創業以来、日本の農業と共に歩み、米づくりを支えるクボタ。業界に先駆け2014年、食味・収量センサ搭載コンバインと営農支援サービス『Kubota Smart-Agri System (以下、KSAS)』を開発しました。農業従事者の高齢化と世代交代、農地の集約化や耕作放棄地の解消といった課題が山積みのなか、「稲作における精密農業」は次世代型ソリューションと見込まれ、ますます期待が高まっています。その早期実現と普及、さらなる進化に向け、クボタはこの分野の研究に日夜取り組んでいます*1
ICTを活用し、データに裏打ちされたスマート農業を営むメリットは、生産効率向上や作物の食味改善、農作業の軽労化、農家の収益アップなど、多岐にわたります。「IoT、人工知能、クラウド、自動認識などのICTで農業は変わる。これからイノベーションは、いくらでも起こせる」と説明するのは、ポストハーベスト技術部のソフトウェアエンジニア、中西正洋さんです。農業機械メーカーのクボタで、ソフトウェアエンジニア――何だか斬新な響きがしませんか。農業の未来を創る仕事の特色、クボタで実感している日々のやりがいを語ってもらいました。

  1. *1.データ活用による日本型精密農業へのクボタの挑戦に関する記事はこちら
『KSAS乾燥システム』を牽引している中西さん

インターネット家電の立ち上げに携わった経験を生かし、現在『KSAS乾燥システム』を牽引している中西さん。農業のICT化に自らの技術や経験が役立っていることに、やりがいと喜びを感じています。

意外なイメージ? クボタでソフトウェア技術者

国内外でトップクラスのシェアを誇るクボタの農業機械や各種産業機械は、頑強さと信頼性が圧倒的な強み。従来は、その根幹をなす機械・機構設計、機械を制御する電気・電子設計、また品質管理の技術やノウハウが、注目を集めてきました。そこに昨今、新たな主流が加わったといって過言ではありません。ICT技術の急速な進化とソリューション市場の拡大により、ソフトウェア技術の重要性も顕著な高まりを見せています。製品導入のユニークなメリットを生み出し、ユーザーの課題解決や目標到達を支援する仕組みは、高度なソフトウェア技術に裏打ちされたプラットフォームとプロセスによるもの。“次世代スマート農業といえばクボタ”と掲げる黎明期に、躍進を担う専門家として迎え入れられたのが、中西さんでした。

――ソフトウェア技術に一貫したキャリアを築いてきたと聞いています。

「クボタに入社したのは2016年で、現在3年目です。それ以前は16年ほど、携帯電話端末(フィーチャーフォン)のメインメニューや待ち受け画面、その着せ替え機能の開発などを経て、エアコンや冷蔵庫をはじめとするスマート家電のインターネット接続やその事業化を手掛けていました」(以下、中西さん)

――ICTのつながりがありますね。しかし、家電業界で量産品を扱うのと、農機のクボタで精密農業に関わる研究開発をするのとでは、かなり異なります。転身のきっかけは?

「もともと好奇心の塊で、新しい技術や時代を反映したニーズに関心があり、前例のない開発に挑戦する機会を常に求めていました。それに、目先の利便性を創出することにとどまらず、飢餓に苦しむ人々を救うような社会貢献とつながりをもちたいと、ずっと考えていたんです」

――新天地に飛び込んだ当初は、プロジェクトのあり方や自身の担当領域などに、戸惑いましたか。

「スマート家電とスマート農業のための機器。製品は変わっても、中核となる部分、例えばCPU性能などはほぼ同じです。ソフトウェア技術者として育んだ実績とスキルで、柔軟に対応できました。もちろん、『今までと違う!』と工夫を要する相違点もあり、それらはクボタでキャリアを積むに当たって、求めていたやりがいに直結する変化でした」

総合力のクボタ/農機ならではのアプローチ

――クボタで『KSAS』のポストハーベスト分野*2での開発リーダーとなり、これまでとの違いをどんな点に最も感じましたか。

「PC・携帯電話・複写機などの情報機器は移り変わりが早く、買い替えのサイクルに見合う耐用年数は、だいたい5年前後です。一方、農家さんは農業機械を一度導入したら、10年くらい使います。国内外で業界をリードするクボタ製品の高耐久性ゆえに、情報技術の進化のスピードと合わないことがあるのです。具体的には、新しい通信への対応、ソフトウェアの自動アップデート、これから発生する未知のセキュリティ問題への対策も考慮して、開発・製造を行います」

――部署をまたぐ技術連携、その取りまとめの経験はありましたか。

「前職でインターネット家電を立ち上げた時、最初は1人で対応していました。クラウド技術やIoT技術を組み合わせた家電が市場で脚光を浴びるにつれ、次第に大きなチームになり、やがて異なる家電事業部を横断するプロジェクトに。その全体をまとめていました。
当時の経験がこちらで生きていると思います…… といっても、 “総合力のクボタ”は、スケールが違いますね。全社一丸で農機への無線技術搭載を研究し、実用化に成功。誕生した業界初のICT農機が、KSAS対応のトラクタやコンバインです。『無線LANで情報端末(KSASモバイル)を介してKSASクラウドと通信を行い、機械の稼働状況や圃場*3ごとの作物・作業情報を蓄積・分析する機能』を製品化しています。クボタは、世界初の事例や先端技術のパイオニアとなることもかなう、チャンスのある職場環境ですよ」

  1. *2.収穫後に作物の処理を行う農業分野。
  2. *3.ほじょう:農作物を育てる田畑や農園。

収穫後に高品質という名の差をつける『KSAS乾燥システム』

――ポストハーベスト分野におけるKSASの取り組みについて、教えてください。具体的に、どういった機能を作り出し、農業の担い手を支援しているのでしょう?

「現在は、『KSAS乾燥システム』に携わっています。農業経営に利益をもたらすことを狙いとするKSASのシステムの中で、刈取から乾燥調製までのプロセス(刈り取る→運ぶ→仕分けて乾燥させる→出荷する、の部分)をICT化することがミッションです。

『KSAS乾燥システム』では、KSASに登録された圃場の中から、その日に刈り取る圃場を選択し、当日の刈取計画を立てます。計画は作業者のスマホに作業指示として送信され、乾燥施設から遠く離れた圃場にいても、指示に従ってスムーズに刈取作業の開始/終了が行えます。
コンバインは、コンテナに排出する籾の食味(タンパク値)・水分・収量データを自動収集し、クラウドに送信しています。その値を使って、乾燥システムが仕分け(乾燥機に籾を投入)のアドバイスを行います。タンパク値の低い米が美味しいので、低タンパク値の籾を集めて乾燥させれば、意図的に低タンパク米が作れて、ブランド米創出や収入アップに役立ちます。また、水分値のバラツキを抑え、乾燥後の水分ムラをなくし、乾燥後の品質向上や乾燥時間の短縮と燃料費削減対策にも効果的です。

以前は、刈り取ったコメをJA(全国農業協同組合連合会)の乾燥施設に出される方が多かったのですが、近年、自分で設備を保有する方も増えてきました。そこで、この『KSAS乾燥システム』も含む施設型ソリューション『クボタライスセンター』を用意し、農業経営を応援しています」

全国に赴いて、汲み取った要望をカタチに

――農家の方の立場に寄り添ったソリューションができるまで、エンジニアが自ら調査やテストに赴くのは、クボタの特色。それは、ソフトウェアのエンジニアも同じでしょうか。

「はい、もちろん同じです。圃場からクラウドへログインしていますよ。全国各地の農業の現場を訪ねて、解決すべき課題や改善のニーズを丹念にヒアリングしています。担い手農家さんと共に、フィールドでの収穫や乾燥施設での実作業を吟味しつつ、一人ひとりの意見や要望にお応えすべく、企画・製品化を立案します。社内の研究所/技術センターや他部署のプロも交え、開発・試験・改善を経て、販売も含め実用化に至る全工程に、1人のエンジニアが携われるのです。各農家との信頼関係が育まれますし、『営農をしっかりサポートして、農業の未来づくりに役立ちたい』との思いと意欲が増します。自社製品への愛着も自然と深まります。それらを成長の糧に、アップグレードや次の開発に励む毎日は、とても楽しく充実していますね。自分のもつ技術を存分に発揮して、やりたいことをすべてやっていると感じます」

品質も収益も高まるソリューションを

「農業の担い手さんたちにとって、使いやすく安全で、効率化・省力化ができ、品質も収益も高まるソリューションを」と各地の現場で、徹底的に追求します。

――現場に出向く以外には、どのように研究や調査をしていますか。

「外部からの情報収集に関しては、学会・展示会によく行き、市場のニーズ、競合の動向や関連分野の新しい技術や試みについて、目を光らせています。他社の技術者とも熱く議論します。ポストハーベストの次にある販路拡大や流通、最終消費者に近いサービスも、近い将来クボタから提供できるよう、既にアプローチを始めています。
また、クボタは組織力で取り組む社風です。日頃からポストハーベスト技術部は、農業ソリューション営業部、クボタ農機の販売や施設の充実を担うクボタアグリサービスなどと、交流があります。抜きん出た機械・機構・制御技術をもつクボタにあってのソフトウェア技術だからこそ、連携が最大限に力を発揮しますし、ますます日本の次世代スマート農業をリードすることが可能だと思います」

これからの展望

――クボタの内外で培ってきた経験・スキルを生かして、今後、挑戦したいことは?

「現時点、『KSAS乾燥システム』がICTで主に可能としているのは、刈取計画・仕分け・遠隔監視です。乾燥機の充填率や運転状況をモバイル端末でモニタリングでき、異常検知の際には直ちにメール通知する機能も実現しました。それまでは乾燥時の火気に注意して、夜間不眠で動作を見張る必要があったのに、これでゆっくり寝られる! と実際に導入された方に好評です。
次の段階は、自動化の推進でしょう。日本の農業従事者不足は大きな問題となっています。クボタは最近(2018年6月)、国内メーカー初の自動運転アシスト機能付・KSAS対応『アグリロボコンバイン』の市場投入を発表しました。ポストハーベスト分野でも、自動化技術を積極的に採り入れたいですね。興味津々です。
個人的には、かつて音声認識を手掛けていたことから、農作業中の情報機器操作の必要をなくす音声操作にも、興味をもっています。そして、詳しくお話しできませんが、もしできたら便利で面白いと模索中のアイデアも、たくさんあります。これから『KSAS乾燥システム』はどのような進化を遂げていくのか。楽しみに見守っていてください。得意のIoT、人工知能、クラウド、自動認識の知識や経験を活かして、引き続きさまざまな農業課題の解決に励んでいきます」

夢を現実にする第一歩です

オフィスにて、国内外の市場ニーズ・競合の動向・関連分野の新しい試みなどについて、情報共有しながら、企画を検討しているところ。夢を現実にする第一歩です。

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