TECHNOLOGY
GPSが導く無人のトラクタ・田植機・コンバインクボタの「農機自動運転」はここまで来た! 農業の未来を担う、その実力とは
2017 . 04 . 27 / Thu
文:クボタプレス編集部
ハンドルを握ることなく人を目的地へ運んでくれる注目の先端技術、「自動運転」。乗用車にバスやタクシー、トラックなども加わり、モビリティの概念を根本的に変えつつあります。実は、そんな自動運転を “農業機械”で実用化するべく、クボタが研究開発を進めているのをご存じでしょうか。
GPS(全地球測位システム)を駆使し、人が乗らずに農作業を行う自動運転トラクタ、田植機、コンバイン。その中でも、自動運転トラクタは2017年6月からモニター販売を、2018年には一般販売をそれぞれスタートする計画で、国内メーカーが自動運転農機を販売するのはこれが初となります。
そもそも、なぜクボタは自動運転農機を開発したのか。「日本の農家は数が減り続け、同時に高齢化も進行しています。少ない人数で広い面積の農作業をこなす必要がありますが、熟練した技術を持つ人をなかなか新たに確保できない。そんな背景から、農作業に慣れない人でも使いこなせる農機への要望が以前から強かったんです」と、自動運転農機の開発担当者は言います。
「私たちクボタが目指しているのは、慣れていない人でも農作業ができ、安全で、かつ低コストで生産性も高い“高精度な次世代農業”。自動運転農機が製品化されれば、農業のさらなる効率化につながります。いまは大変な仕事といわれている農業ですが、IoTの活用によって農作業は機械が担い、人間は創造性を発揮する作業に専念する時代が遠からずやってくるでしょう」
そんな来るべき次世代農業の嚆矢となる自動運転農機とは、いったいどんなものなのでしょう。2017年1月、京都府郊外の圃場(ほじょう=農作物を育てる田畑や農園のこと)でのトラクタ・田植機・コンバインの自動運転実演会場へ、編集部は向かいました。
誤差数cmで進むトラクタ 無駄をなくし作物も踏まない
のどかな京都郊外のほ場に並んだオレンジ色のトラクタ・田植機・コンバイン。GPS(全地球測位システム)を採用し、自動運転が可能な3台です。
まず、農作業に最適な自動運転ルートを決めるために、人がトラクタに乗り込み、手動運転で圃場の外周を走って「圃場マップ」を作成。車載GPSで高精度な圃場マップが完成したら、いよいよ自動運転の始まりです。
自動運転は、周囲に監視する人がいることが前提で、リモコンで自動運転農機のスタート・ストップを操作する仕組み。走行ルートや、決められた範囲を耕すといった農作業自体はすべて自動で行われます。
そして、自動運転で耕うん作業をスタート。見事に決められたエリアを耕しながら進んでいきます。常にGPSで位置を計測しながら、なんと数cm以内の誤差になる様に制御しているとのこと。クルマの自動運転と異なり、センターラインなどの目標のないほ場では、無駄なスペースに無駄をつくらず、かつ植えた作物を踏まないようにするには、より高い運転精度がもとめられるのです。
田植機は自動で苗を補給するポイントへ
トラクタによる耕うんの次は、自動運転田植機による田植えです。田植機は圃場の広さを自動計算して、まずは8条植え(8列植え)で3コースを完了。直進性能が高いため、苗は曲がることなくすーっと一直線に植えられていきます。
最短距離を探して自走 作業効率◎なコンバイン
田植えが終わり、自動運転のコンバインが登場。コンバインも圃場マップを使い、圃場の稲を刈り取っていきます。
自動運転トラクタ+野菜移植機で一人二役!
そして最後が、「自動運転のトラクタでの畝立て+手動運転による野菜移植機」という組み合わせ作業です。畑の土を細長く盛り上げた畝(うね)をつくる、「畝立て」のインプルメント(トラクタがけん引する作業機械)を装着した自動運転トラクタが登場。そのすぐ後ろに、人が運転する移植機が続きます。
誰もが安全に、効率的に農業を営むことができる可能性を持つ「農機の自動運転」。国内だけでなく、海外にも向けた技術であることは言うまでもなく、過酷な気象条件での運用・人材不足の解消・生産性の向上など、世界の食の問題を見据えたテクノロジーにクボタはまさに今、挑んでいるーー。そう実感させられた実演現場でした。