働き方改革で、より休める農業へ カギを握る「スマート農業」の今

2019 . 09 . 24 / Tue

PEOPLE

クボタファーム紅農友会の目ざす農業とは!? 働き方改革で、より休める農業へ
カギを握る「スマート農業」の今

文・写真:クボタプレス編集部

365日休みなく農作業をするという考え方は、今は昔。ロボット技術や情報通信技術(ICT)で効率化を図るスマート農業の推進により“メリハリ”という発想が生まれ、農業の現場にも「働き方改革」の兆しが見られ始めています。そこで、2017年よりICTを導入し、会社と地域農業の発展を目ざしているクボタファーム紅農友会を訪れ、スマート農業の可能性や現状の課題、今後の展望を探りました。

今回お伺いしたのは…
株式会社クボタファーム紅農友会 (くれないのうゆうかい)
日本の農家が抱える課題が複雑化する中、農業のICT化や省力化を推進し、先進的な取り組みで持続可能な農業の確立と地域貢献を目指す農業法人。富山県内でもトップクラスを誇る約130ha(約1,300,000平米)の圃場では、稲作を中心に、野菜や果物などの栽培も手掛ける。

業界初の自動運転トラクタを導入済み。畑作作業における活用も検討されています。
直進キープ機能付田植機や食味収量コンバイン、農薬散布用ドローンなど、ICTを活用した農機も積極的に採用しています。

最盛期を迎えたトウモロコシの収穫作業

7月中旬から8月初旬に収穫のピークを迎えるピュアホワイトというトウモロコシ。

――少し遅い梅雨明けを目前に控えた7月中旬、富山県高岡市にあるクボタファーム紅農友会では、トウモロコシの収穫作業の真っ最中。早朝6時、背丈ほどに成長した葉をかき分けながら、5人のスタッフが次々と穂をもぎ取っていきます。こちらで栽培されているトウモロコシは、糖度17度を誇るピュアホワイトという品種。約40a(約4,000平米)の圃場でその時期を迎えた純白のトウモロコシは、人の手により約1週間かけて収穫されます。一見する限りでは従来の作業風景と変わりませんが、スマート農業はどこに活かされているのでしょうか?

純白の粒はフルーツに似た甘味を有し、生のままでも食べられるほど。
収穫されたピュアホワイトは、その日のうちに選別・箱詰めされ、市場やスーパーへ。

作業の見える化で、変わりつつある働き方

「昨年に比べて管理する圃場は5.5ha(約55,000平米)ほど増えましたが、全17名の従業員の作業時間が繁忙期の3~6月には平均2日間も短縮しました。それだけ作業効率が上がっているということですね」と話すのは、クボタファーム紅農友会 専務取締役兼農場長の山口義治(やまぐち・よしはる)さん。「26年の歴史をもつ紅農友会が2017年に株式会社クボタファーム紅農友会としてスタートをきる際、休日を定めた年間カレンダーを作りました。それをもとに、1日ごとの作業目標を定め、計画的な農業を進めています」。その“計画的な農業”を可能にしているのが、ICTを使って圃場管理や作業の進捗状況を見える化するKubota Smart Agri System(KSAS)と呼ばれる営農支援システムの存在だといいます。

「全従業員が目標意識をもって一緒に作業達成の喜びを感じられるような、笑顔あふれる職場づくりを目指したい」と山口農場長。

クボタファーム紅農友会がKSASを本格的に活用し始めたのは今年のこと。「本格稼働に2年かかりましたが、今ではKSASに入力された日報データをもとに、毎日朝礼で作業の進捗状況や達成度を共有しています。『この圃場の作業は終わっていて、ここはあと何日くらいかかるか』などの目安が一目でわかるので、従業員も1日の目標が立てやすい。そうした作業の見える化が、日々の作業の効率につながっているのではないでしょうか」と、山口農場長は言います。事実、その日入力された日報を見ながら、翌日の作業内容を相談するといった光景も見られ始めているそう。わざわざ事務所に戻って日報のページをめくらずとも、農機に備え付けられたタブレット端末を使い、現場に居ながらにして振り返りができるのも作業の時間短縮につながっているようです。

「ほかにも、計画平均と実際の数値の比較が1つの画面上で行えたり、売上状況や肥料の仕入れ価格といった詳細な数字もKSASで管理できます。農業においてもコストパフォーマンスを考えることは大切です。昨年より収量を上げるために、もっと作業効率を高めるべきか、もしくは同等の収量を保ちながら肥料や農薬の仕入れを抑えるべきか、経営上でもKSASはまだまだ役立てられると思っています。使いこなすには時間がかかりそうですが、皆さんのボーナスにも関係してくることですからね、私たち経営陣も真剣に取り組まないと(笑)」(山口農場長)

圃場ごとに作業進捗が色分けされた画面を見ながら、具体的な指示出しを心掛けているそう。

現場に芽生えた課題意識と次なる一手

KSASによる作業の見える化で、日々の目標が立てやすくなり、年間休日92日を定めるクボタファーム紅農友会。これまで慣れ親しんだやり方を一新するようなKSASの本格導入を、現場のスタッフの目にはどう映っているのでしょうか。4名のエリア長にお話を伺いました。

現場で指揮を執るエリア長の4名。クボタファーム紅農友会では、管理する圃場が増えてきたことから、昨年11月より稲作と畑作に分かれ、チーム体制で農業を行っています。

KSASを現場スタッフにも浸透させていきたい

稲作を担当するエリア長の竹田明紘(たけだ・あきひろ)さん。

「品種別に進捗率が管理できるようになったのは大きく変わった点ですね。以前は、その都度現場で地図を広げたり、作業が終わった段階で事務所に戻り、1日を思い出しながら日報を書くといった非効率さがありましたが、KSASなら専用端末で確認・入力ができ、作業の見通しがつきやすくなりました。その分、おおよその帰宅時間も見えるようになりましたね。早くKSASでの作業に慣れ、現場スタッフにも浸透させていきたいと思っています」(竹田さん)


気持ちに余裕が生まれ、前向きな姿勢に

畑作を担当するエリア長の石井洋一(いしい・よういち)さん。

「普段は植え付け順に作業を進めていくわけですが、KSASでは植え付けされた品種別に圃場を表示できるので、以前のように資料を探す手間がなくなりました。圃場サイズがすぐに確認できることも、肥料や畝の数を出すうえで重宝しています。先々の計画を立てて作業に取り組めるようになったのは、大きな成長だと思いますね。私自身も自発的に新しいチャレンジをしようという気持ちでいっぱいです」(石井さん)


全社員一丸となってKSASと向き合うべき

稲作を担当するエリア長の橘 和裕(たちばな・かずひろ)さん。

「今はまだ作業の進捗状況をパソコンで確認しながら、直接現場にも行って自分の目でも確認している状況です。KSASの本格活用にはまだまだ課題があると思いますが、会社がスマート農業を掲げているわけですからね。全社員が一丸となってKSASを活用していく体制づくりが、持続可能な「儲かる農業」への近道だと思っています。それが実証できれば、クボタファーム紅農友会が本当の意味でのいいお手本になりますよね」(橘さん)


KSAS活用のカギは現場とのコミュニケーション

稲作を担当するエリア長の源 和久(げん・かずひさ)さん。

「これまでは、『一日の作業は時間内にやれるだけ』というファジーさがありました。それがいまでは、圃場一枚当たりの平均作業時間から算出した具体的な指示が出せるようになり、一歩前進したと思っています。見通しの立たない作業ほど、モチベーションが下がることもないですからね。モチベーションを上げて生産性を高めるためには作業の見える化はもちろん、やはりコミュニケーションも必要不可欠。どうすればKSASに表示される『達成率』や『進捗率』を現場スタッフに自分事として捉えてもらえるか、その解決方法を一緒に見つけていかなければなりません。この問題を解決するなかで、コミュニケーションやチームワークが必然的に生まれてくるはずです」(源さん)

KSASがもたらした働き方への意識改革

2013年より、国家プロジェクトとして推進されている農業のスマート化。今回お伺いしたクボタファーム紅農友会も、本格的なスマート農業化に向けて、どう全社員の足並みをそろえるべきかを模索し始めたばかり。一方で、今回お伺いした4人のチーム長のお話からは、農業現場での働き方に対する確かな意識変革の兆しを感じ取ることができました。KSAS導入による「作業の見える化」と芽生えた課題意識。その課題解決に向けたコミュニケーション志向の高まりが、生き生きとした職場環境につながっていく手掛かりとなるだろうと思います。

従来手法からの転換には、往々にして障害や戸惑いがつきものです。しかし、その壁を乗り越えた先には、本質的な働き方改革を伴った新しい農業の形が見えてくるはず。「年がら年中、圃場に出て作業するのが当たり前のイメージが農業にはあるかもしれませんが、スマート化が進むほど、『今度の日曜日も休みです』と取引先に公表することが当たり前になってくるでしょうね」。そんな山口農場長の言葉からも、今後の農業の可能性を大いに感じる一日でした。

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