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香川の小学校跡地が生まれ変わった!「がっこうのイチゴ園 財田上」クボタ とスマート農業、地域再生の新しい形

2018 . 02 . 23 / Fri

「がっこうのイチゴ園 財田上」クボタ とスマート農業、地域再生の新しい形

文・写真:クボタプレス編集部

街をやわらかに桜が覆い、まっ赤で可愛らしいイチゴが食卓やカフェのメニューを彩る頃…… 思い浮かべると、心なしか寒さが和らいで気分も華やぐようです。春の風物詩のひとつ・イチゴは、寒くて成長の遅い時期に甘く、今こそイチゴ狩りに絶好だとご存じでしたか。

“まったく新しい試み”のイチゴ園が本格スタートしたとの知らせを受け、1月半ば、編集部は香川県三豊(みとよ)市に飛びました。さぬきうどんならぬご当地いちごブランド『さぬきひめ』を求めて、訪れた先は意外にも、小学校の跡地[2016年3月に約120年の歴史を閉じた旧財田上小学校]。かつて子どもたちの運動場だった場所に建つ「がっこうのイチゴ園 財田上」では、折しもオープニングイベントが行われ、地域振興の場らしい賑わいを見せていました。中四国クボタが立ち上げた未来型観光農園について、詳しく伺いました。

「がっこうのイチゴ園 財田上」へようこそ! 駐車スペースには農業の現場でおなじみ、オレンジ色の車体が。

「がっこうのイチゴ園 財田上」へようこそ! 駐車スペースには農業の現場でおなじみ、オレンジ色の車体が。

以前は校庭だった場所に建つ、広さ28a (2,800平米)の施設。外は雪化粧でも、ビニールハウスの中は20℃で春の陽気。

以前は校庭だった場所に建つ、広さ28a (2,800平米)の施設。外は雪化粧でも、ビニールハウスの中は20℃で春の陽気。

はじめに

日本の食料自給率は、近年およそ40%にとどまります(※農林水産省調べ)。全国で加速する農業就業人口の減少が主な要因です。農家のほとんどを占めている高齢者の離農と世代交代の難航、新規参入のハードルの高さなど、山積した問題の解決は立ち遅れています。創業以来、日本の農家と歩みを共にしているクボタは、トラクタやコンバインの開発・提供といった現場作業の直接的支援を超えて、“持続可能な農業経営モデルを提案し、地域を活性化する機会をつくり出す”事業に着手。そこで、中四国クボタがクボタファームの香川県展開を手掛けることに。「がっこうのイチゴ園 財田上」は、その最初の取り組みです。

意外な場所選び なぜ学校の跡地で?

――これまで農業改革特区での農場運営耕作放棄地の再生支援をはじめ、クボタファームは、地域に根差したさまざまな農業課題に貢献してきました。かなり特殊なケースや農法でも成果を上げていますが、今回は廃校利用と聞き、驚きました。

「2016年4月にプロジェクト始動・9月には定植したいと候補地を探すも、選定に苦慮しました。水源が遠い、井戸掘りを要する、アクセスが不便、平地でない、水はけが悪い…… ファーム開設の条件になかなか合いません。三豊市で6つの小学校が3月をもって同時閉校になると知ったのは、そのころでした。2015年の12月、市から企業/個人で跡地を管理または使用してくれるところはないかと公募が始まると、飛びつくように応募したんです」(以下、中四国クボタ営業担当 竹内直己さん)

腰ほどの高さの細長い台が全部で47レーン。清々しい葉の間から赤いイチゴが手元に垂れ下がる、高設養液栽培の様子。

腰ほどの高さの細長い台が全部で47レーン。清々しい葉の間から赤いイチゴが手元に垂れ下がる、高設養液栽培の様子。

がっこうのイチゴ園 財田上」の成り立ちとコンセプトについて語る、中四国クボタの竹内直己さん。

「がっこうのイチゴ園 財田上」の成り立ちとコンセプトについて語る、中四国クボタの竹内直己さん。

――よほどメリットがあると判断されたのですね。

「学校の敷地は『農地』でないため、農地所有適格法人の設立・要件の遵守がなくとも、農業を営めます。法人化、つまり別会社をつくって出資するとなれば、手続きから認可取得までの時間が余計にかかってしまい、スケジュール的に不可能です。早い開始が重要でした。
次に、校庭を使えること。運動場の土地はフラットで硬く、水はけもよいので、ビニールハウスの敷設に適しています。
また、旧財田上小学校の近くには道の駅があって、1日に800人ほど訪れています。幹線道路にも通じ、アクセスに恵まれている点から、道の駅との協力で観光客を見込めるのではないかと。観光と廃校活用に尽力されていた当時の三豊市長(横山 忠始氏)が、クボタの農業支援の理念や、行政・地域に密着した観光農園のコンセプトに賛同くださり、私たちは好条件の揃った場所を得ることができました」

バリアフリーのイチゴ園が誕生

――開設場所を得てから、何をつくるか決定したのでしょうか。

「もともと施設栽培を前提に、獲得した農園の広さに見合った栽培品目を絞り込む段取りになっていて、イチゴに決まりました。ハウス面積28a(2,800平米)のうち、栽培面積は20a(2,000平米)。大切にしたポイントは、たくさん栽培して生産性を上げることではありません。観光農園が目的ですから、畝の幅を110cm~120cmと広く取り、緑色のシートがあるところは、下に板を敷いてフラットな車いす専用レーンにしました【写真】。そして、もうひとつのこだわりは、高設養液栽培です。地面に腰を落とす姿勢を取らなくても、誰もが簡単に摘み取れる“バリアフリー”を実現しています。
人生の一時代を育んだ学び舎を失った地元の皆さんの想いに寄り添い、思い出が形に残るよう『がっこうのイチゴ園 財田上』と名付け、この地域とクボタの新たな挑戦が始まりました」

閉校した小学校がビニールハウスのイチゴ園に?! 意外性の強い印象を受けますが、グラウンドは好条件の揃った土地。農地でないため別途法人化や認可申請は不要、土質が硬く水はけに優れる、近くに道の駅がある、など。

閉校した小学校がビニールハウスのイチゴ園に?! 意外性の強い印象を受けますが、グラウンドは好条件の揃った土地。農地でないため別途法人化や認可申請は不要、土質が硬く水はけに優れる、近くに道の駅がある、など。

香川ブランド『さぬきひめ』は、こんなイチゴ

あまおう、とちおとめ、とよのか、女峰、ひのしずく、紅ほっぺ、ももいちご…… イチゴの品種をどれくらい挙げられますか。各地の名産は全国約40品種も存在するそうです。香川県代表は『さぬきひめ』。どのような特徴のイチゴなのか気になります。ここから先は、栽培のスペシャリストにお話を伺いました。

――こちらで扱っている品種とその特徴はどんなものですか。

「香川県推奨の『さぬきひめ』を栽培しています。甘味と酸味の絶妙なバランス、柔らかな口あたりがとても好評 です」(以下、「がっこうのイチゴ園 財田上」栽培担当 内海良範さん)

――『さぬきひめ』の完熟した果実は、糖度が14度になるそうですね。甘味が強い品種の特性に加えて、糖度を高める栽培の工夫があるのでしょうか。

「温度管理のたまものです。ヒートポンプを導入して、イチゴの最適温度といわれる20℃を確保します。ところが、1日中ずっと一定にしておけばよいわけではなくて。20℃以下の時間もあるなか、ゆっくり熟させると、よい甘さを引き出せます。高温だと成長は早いですが、糖度が下がる。今までに『早い。初物だ!』と喜んで買ってみたら、旬や中晩成の味ほどではないな――と感じたことがあるでしょう。短期間に成長を強いると、おいしさは損なわれやすいのです」

手間のかかる子ほどかわいい、丹精込めて育てています

幼少時から農業に親しみ、農業大学校で習得した先進の技術・知識を生かして、栽培の現場をリードする内海良範さん。

幼少時から農業に親しみ、農業大学校で習得した先進の技術・知識を生かして、栽培の現場をリードする内海良範さん。

さぬきひめの手入れの様子

葉が増えて風通しを遮られると、アブラムシなどの害虫が発生しやすくなります。手作業による適時ケアは不可欠です。

――立ち上げからオープンまでに苦労された点、栽培の課題を聞かせてください。

「農業経験者は揃っているものの、私も含めて皆、イチゴ栽培は初めて。天候と色づきの関係とか、実際に経験してみないと判断しかねる状況が多々ありました。最適な環境づくりに関して、JAや農業改良普及センターに指導を仰いだり、イチゴ農家の方と頻繁に連絡を取って状況を見ていただいたりしました。
栽培の課題は、生育タイミングに合わせた適切な手入れで、実に手作業が多いのです。葉の数を決めて間引かないと実が小さくなりますし、風通しを遮られて害虫が発生してしまいます。4人という少人数で、効率よくケアしているんですよ」

地域の交流や全国周知に貢献する観光農園に

――『さぬきひめ』で作ったお菓子など、加工品はありますか。

「はい、個人的にタルトを作ってみました」

――タルトは製品化されないのですか。

「友達や知人に差し上げているだけなんですけれど、おいしいと言われています(笑)
商品では、販売用果実を道の駅と地元の洋菓子店、結婚式場に納品しているほか、加工品むけに手作りジャム店と契約して、このイチゴ園で瓶詰めを販売しています。
クボタファームの最終目標は、生産から販売までをパッケージとすることです。栽培や設備の課題を改善してイチゴ園の運営が軌道に乗ったら、将来的にはここをイチゴ栽培研修やスマート農業のモデルスペース*としてPRしながら、販路も開拓していきたいと考えています」

――販売関連や道の駅との連携以外にも、観光農園ならではの取り組みを何かしていますか。

「バス会社・旅行会社や観光庁などに働きかけ、バスツアーやパック旅行にイチゴ狩りのプランを提案しています。イチゴはやはり、特別感のある果物だと思うんです。中でもとりわけ、私たちは香川県で育成された『さぬきひめ』に強い愛着と思い入れがあります。地域の皆さんはもちろん、全国から多くの方が興味・親しみを感じて『がっこうのイチゴ園 財田上』へ足を運んでくださることを願っています」

表面は柔らかく、果肉に程よい張りがあり、甘味と酸味のバランスが絶妙な『さぬきひめ』。「がっこうのイチゴ園 財田上」のイチゴ狩りシーズンは、5月のゴールデンウィーク頃までお楽しみいただける予定です。

表面は柔らかく、果肉に程よい張りがあり、甘味と酸味のバランスが絶妙な『さぬきひめ』。「がっこうのイチゴ園 財田上」のイチゴ狩りシーズンは、5月のゴールデンウィーク頃までお楽しみいただける予定です。

「がっこうのイチゴ園 財田上」は、ゴールデンウィーク頃まで営業予定です。新鮮な『さぬきひめ』を味わいに、訪れてみては。

  • 施設内には、省エネ型の空調設備や光合成を促す二酸化炭素発生装置、病害虫を抑制する緑色のLED照明を導入。ICTを駆使したデータ管理システムにより、温度・湿度・二酸化炭素濃度などをスマートフォンで効率よく確認できる、スマート農業の実験場にもなっています。

■「がっこうのイチゴ園 財田上」開所式

惜しまれつつ119年の歴史に別れを告げ、2016年3月に閉校した財田上小学校が、姿を変えて、再びみんなの笑顔を育む場所に!「がっこうのイチゴ園 財田上」の開所式が、2018年1月13日に行われ、“夢と希望あふれる香川づくり”を推進中の浜田恵造 香川県知事も激励に駆けつけられました。
当日は、旧財田上小学校最後の卒業生を含む、三豊市立和光中学校の生徒さんをご招待。「慣れ親しんだ小学校がなくなって悲しかったけれど、今日またこの場所に来て、友達とおいしくイチゴを食べました。ありがとうございました」と楽しそうな様子でした。イチゴ狩りでは、クボタの糖度計「フルーツセレクター」を使って、糖度の計測にチャレンジ。摘み取ってきた果実が糖度12度以上だった生徒さんには、イチゴ園オリジナルシールをプレゼントするゲームで競い合い、盛り上がりました(集合写真は、見事獲得のシールを掲げたところ)。
このイチゴ園が、行政・地域と連携して豊かな未来を拓く一助となるよう、中四国クボタの挑戦は、これからも続きます。

明るい笑顔がこぼれます

まっ赤でツヤツヤのイチゴを手にして、一足早く春の気分。明るい笑顔がこぼれます。

4人の表情。

「おぉ、うまいな~」「摘みたて最高!」そんな会話が聞こえてきそうな4人の表情。

「フルーツセレクター」で糖度計測体験

クボタの「フルーツセレクター」で糖度計測体験。この生徒さんたちの中から、未来の科学者が現れるかも。

浜田恵造県知事[右]とがっちり握手を交わす、中四国クボタの林繁雄社長。

「ぜひ強い農業に」。浜田恵造県知事[右]とがっちり握手を交わす、中四国クボタの林繁雄社長。

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