試合開始前、ピッチに向かって走り出すクボタスピアーズの杉本博昭選手

2022 . 06 . 30 / Thu

PEOPLE

フラン・ルディケHC、杉本博昭選手に聞くプロセスにフォーカスする。クボタスピアーズ流「壁の乗り越え方」

文:クボタプレス編集部
写真:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ、クボタプレス編集部

クボタは創業以来、食料・水・環境に関わる世界の課題解決に、ものづくりを通じて取り組んでいます。クボタのTVCMや新聞広告で使われている「壁がある。だから、行く。」は、その企業姿勢を表現したフレーズの一つです。

この「壁がある。だから、行く。」は、クボタのラグビーチームであるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、クボタスピアーズ)からも感じ取ることができます。日本ラグビーの新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン」が開幕した今季、クボタスピアーズはどのようにして壁を乗り越えてきたのでしょうか。チームを率いるフラン・ルディケヘッドコーチ(以下、HC)と、クボタスピアーズ一筋12年目の杉本博昭選手にお話を聞きました。

自分たちがコントロールできることにフォーカスする

クボタスピアーズの指揮を執って7年目のルディケHC。今季はチーム最高タイかつ初の単独3位という成績を収めました。経験豊富な指揮官は、コロナ禍や主力選手のケガが重なる中、目の前の壁に対してどのように向き合ってきたのでしょうか。

――今季、チームで掲げた目標を教えてください。

「『Proud Billboard ~強く、愛されるチームをめざし、ステークホルダーの『誇りの広告塔』となる~』というビジョンを引き続き掲げています。このビジョンを達成するためのプロセスにフォーカスして、選手のスキル面やメンタル面のレベルアップに取り組んできました。チームの順位は、その結果です」

ミーティングルームで椅子に座りながらインタビューに応じるクボタスピアーズのフラン・ルディケヘッドコーチ

フラン・ルディケさん。南アフリカ共和国出身。同国のラグビーチーム・ブルズのHCとして2009年、2010年にスーパーラグビーを2連覇。その後フィジー代表のFW(フォワード)コーチを経て、2016年にクボタスピアーズのHCに就任。以来、チーム力と順位を着実に向上させています。

――シーズン中、チームが乗り越えなければならなかった壁はどのようなものでしたか?

「新型コロナウイルスへの対応は大きな壁でした。練習メニューの変更を余儀なくされ、検査にかかりきりで練習ができない週もありました」

――そのような状況に対して、どのようなマインドセットで臨みましたか?

「自分たちがコントロールできることにだけフォーカスしました。アクシデントが起きるとついネガティブに考えてしまいますが、まずは状況を受け入れ、ポジティブに捉え直します。例えば、コロナやケガで主力選手が出場できない状況でも、若手選手にとってはチャンスです。そういったポジティブなマインドセットが、チーム全体に浸透しました」

――昨年からニュージーランドのメンタルコーチにメンタルトレーニングを受けていると聞いています。どのような内容ですか?

「メンタルコーチからは『ABC』というメンタルスキルを教わりました。AはAware(気づく)とAccept(受け入れる)を表していて、まずは状況を受け入れ、コントロールできるか見定める。BはBreathe(深呼吸する)で、深呼吸して自分ができることを考える。CはChoose(選択する)、正しい選択をするという意味です。このメンタルスキルによって、選手たちがプロセスに集中できるようになりました」

「次は勝とう」とは一度も言ったことがない

――今季、リーグ戦では一度も連敗していません。試合に負けた後はどのようにチームをリカバリーしていきましたか?

「負けた理由をクリアにして、改善することに集中します。そのためには、正直なフィードバックが必要です。例えばブレイクダウンが上手くいかなかったら、具体的にどこが良くなかったのか、どうしたら改善できるのかを選手に伝え、改善点にこだわって練習していきます」

――敗戦から得られた修正点にフォーカスするということですね。

「はい、選手たちに『次は勝とう』とは一度も言ったことがありません。常に自分たちがコントロールできるプロセスにフォーカスし、勝つためにこなすべきタスクに則ってプレーしていこうと話しています。選手も、そのプロセスをたどれば結果はついてくるという意識を持っていると思います」

――ルディケHCご自身が壁にぶつかった際にも、同じようにアプローチするのでしょうか?

「もちろん私もがっかりすることや挫折することもありますが、その中で自分のマインドセットをコントロールすることに重きを置いています。自分の哲学みたいなものですね」

――壁にぶつかった時、支えになっているものはありますか?

「私はクリスチャンなので、神様の存在が支えです。壁にぶつかっても、神様が自分に学ばせようとしている、理由があって今の状況があるという考え方です。船の錨(いかり)のようなもので、人によってはそれが別の何かになると思います。挫折してしまいそうな状況に陥っても、錨を下ろし、自分自身にフォーカスすることが、壁への立ち向かい方です」

――最後に、チームとして来季以降、壁を乗り越えた先にめざすものを教えてください。

「ファンであるオレンジアーミーのサポートは大きなモチベーションになっています。チームに関わるみんなのために、クボタスピアーズはすごいと思われるようなラグビーをしていきたいですね。そのために来季もプレシーズンからハードワークをこなし、さらにエキサイティングなラグビーをめざしていきます」

インタビュー中、笑顔で話すフラン・ルディケヘッドコーチ

インタビューの最後に、日本語で「不死身」「誰も置いていかない」と話したルディケHC。壁が立ちふさがっても諦めないこと、チームに関わる人々全員で乗り越えていくという思いを表現してくれました。

大ケガを機に杉本選手に芽生えた、プロセスへのこだわり

今季、全試合に出場し、クボタスピアーズの公式戦通算100キャップも達成した杉本選手。過去に大ケガを経験したこともある杉本選手に、壁の乗り越え方を聞きました。

――今季は杉本選手にとって、どのようなシーズンになりましたか?

「個人的には、とても成長できたシーズンでした。ケガもなく、チーム100キャップを達成できたことは誇りに思います。一方で、試合に出てパフォーマンスを維持し続けることは難しかったですね。その点で、自分はまだまだ成長できると感じました」

トレーニングルームでインタビューに応じるクボタスピアーズの杉本博昭選手

杉本博昭(すぎもと ひろあき)選手。大阪工業大学高校(現、常翔学園)から明治大学を経て、2011年にクボタスピアーズ船橋・東京ベイに入団。アキレス腱断裂の大ケガを機にNo.8(ナンバーエイト)からHO(フッカー)に転身し、周囲を活かすプレーでチームを支えています。

――開幕前には、どのような目標を掲げていたのでしょうか?

「以前と変わらず、リーグナンバーワンのHOになることです。そこには、優勝チームのHOになるという思い、マルコム・マークスという世界トップレベルのHOがチームにいる中で試合に出続けるという思いを込めています」

――チームメイトに同ポジションの世界的な選手がいても、その目標を達成しようという原動力はどこから生まれるのでしょうか?

「僕は2014年にアキレス腱断裂の大ケガを負いました。当時トップリーグイーストに降格していたチームが、再昇格した直後のことでした。もう自分のラグビー人生は終わりだと失意の中で入院していたら、当時の全選手、スタッフがお見舞いに来てくれたんです。その時に、こんなに温かいチームはない、一人じゃないんだと心から思えました。みんなのため、このチームのためにもう一度がんばって恩返ししようと、心の火を再び灯してくれたのがクボタスピアーズでした。その思いが、今も原動力になっています」

ロッカールームで、杉本博昭選手のチーム100キャップを祝うTシャツを着用しながら、記念写真におさまるクボタスピアーズのチームメンバー

今季、杉本選手がチーム100キャップを達成した際、チームメイトはお揃いのTシャツを着用して祝福しました。

――その時に、ナンバーエイトからフッカーへのポジション変更を決意されたそうですね。

「はい。それ以来、うまくいかないことがあっても、その原因やプロセスにこだわるようになりました。スクラムやラインアウトスローイングに失敗したら、なぜできなかったのか。ケガをしたら、ストレッチやウォーミングアップが足りなかったのか、前日の疲労が残っていたのかと、原因やたどってきたプロセスにフォーカスし、突き詰めていくようになりました。その積み重ねで、今があると思っています」

――ポジション変更のように、未知の領域にチャレンジする時には、どんな心構えでいるのでしょうか?

「プライドを捨てることです。私の場合、『No.8の杉本』という看板を下ろしたら、いろいろなことに挑戦したり、周りの人にアドバイスを求めたりすることができるようになったんです。信念があれば前に進むことができますし、若手にも信念があるならチャレンジした方がいいと伝えています」

グラウンドで夕日を浴びながら、ラインアウトスローイングの練習を行う杉本博昭選手

チームや支えてくれた人へ恩返ししたいという思いを胸に、杉本選手は日々努力を積み重ねています。

――ここ3年、クボタスピアーズは多くの壁を乗り越えて、好成績を残しています。その強さの秘密は何でしょうか?

「フラン(・ルディケHC)の存在だと思います。フランが確固たるチームの文化をつくり上げたことで、軸がブレない、壁にぶつかっても軌道修正できる強いチームになりました。みんなが一生懸命ラグビーに打ち込む成熟したチームになったので、自信を持って試合に臨むことができるようになっています」

――最後に、そんなクボタスピアーズを応援しているオレンジアーミーの皆さんへのメッセージをお願いします。

「ファンと選手がお互いに牽引しあうことができれば、チームはより強く成長していきます。私たちは来季も優勝に向かって突き進みます。オレンジアーミーの皆さん、これからオレンジアーミーになろうとしている皆さん、ぜひ一人でも多くの方々にスタジアムに足を運んでほしいと思います」

編集後記

2016年にルディケHCが就任して以来、クボタスピアーズは、そのチーム文化やプレースタイルを着実に進化させています。チームが進化する中で育まれてきた「自分がコントロールできることにフォーカスする」という考え方は、私たちにとっても、壁を乗り越えるためのヒントになるのではないでしょうか。「壁がある。だから、行く。」の体現者として、クボタスピアーズのさらなる躍進に期待を抱かずにはいられないインタビューとなりました。

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