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PEOPLE

ラグビーチーム・クボタスピアーズ好調の要因に迫る選手のパフォーマンスを最大限に引き出す
フラン・ルディケHCのリーダーシップ論

2021 . 05 . 07 / Fri

練習前の円陣で選手やスタッフと肩を組むフラン・ルディケHC

文:クボタプレス編集部
写真:クボタスピアーズ、クボタプレス編集部

佳境を迎えるジャパンラグビートップリーグ2021シーズン、クボタスピアーズはチーム初の開幕5連勝をあげると、上位チームとも互角の試合を繰り広げ、レッドカンファレンス3位という成績でプレーオフに進出しました。

チームを率いるのは、クボタスピアーズの指揮を執って6年目のフラン・ルディケヘッドコーチ(以下、HC)です。2016年にHCに就任して以来、チームの順位を着実に上げてきました。

今回、クボタプレスではルディケHCにインタビューを実施。スポーツだけでなくビジネスの分野においても学びの多い、ルディケHCのリーダーシップ論を紐解いていきます。

理想のチームを作るために必要なこと

――今季、クボタスピアーズが好成績を収めている要因はどこにあると思いますか?

「継続力です。就任してすぐに結果を出すことはできなかったのですが、チームのバックアップもあり、少しずつチームの文化やプレースタイル、選手のマインドや姿勢が変わっていきました。我慢や信念が必要でしたが、ようやく結果が出てきました」

クボタスピアーズのクラブハウス内で、笑顔を交えながらインタビューに応じるフラン・ルディケHC

フラン・ルディケさん。南アフリカ共和国出身。同国のラグビーチーム・ブルズのHCとして2009年、2010年にスーパーラグビーを2連覇。その後フィジー代表のFW(フォワード)コーチを経て、2016年にクボタスピアーズのHCに就任しました。

――結果が出つつある今も、理想のチームを追い求めていらっしゃると思います。ルディケHCが考える理想のチームに必要な要素は何でしょうか?

「良い人材と環境、そしてプロダクトです。良い人材とは、チームへの忠誠心とタフさを兼ね備えた選手のことです。そんな選手たちに、楽しさと厳しさのバランスを取りながらハッピーに感じられる環境を用意すれば、自ずと成果はついてきます。良い人材と環境が整ったら、次はプロダクトです。ラグビーで言えばプレースタイルのことで、勝つための形を追求していきます。ビジネスで言えば、例えばクボタなら水道管や農機などの製品・サービスのことですよね」

――理想を追求する上で、HCに求められることは何でしょうか?

「ビジョンやゴールを明確にすることが重要です。それらが明らかになれば、プランとプロセスが明確になり、チームのモチベーションも高まります。リーダーは自分がどうしたいのかを考え、選手と共有する。その結果、彼らをエキサイティングな気持ちにすることができれば、目標達成に大きく近づくと思います」

――選手を指導する際に、自身で決めているルールや信念はありますか?

「まず正直であること。自分から相手を信頼し、取り繕ったりせずに接することで、相手からも信頼されるようになります。その上で、“Open Door Policy”と言っていますが、常に対話できる環境をつくり、面と向かって話をするようにしています。そして、相手に何かしてもらいたいなら、自分から働きかけること。まず自分から相手のためにベストを尽くすことで、相手もベストを尽くしてくれるようになります」

ルディケHCの指導者としての信念

  • 正直であること
  • 常に対話できる環境を築くこと
  • 選手のためにまず自分がベストを尽くすこと

選手のパフォーマンスを引き出すアプローチ

2016年にクボタスピアーズのHCに就任して以来、5年以上にわたりチームを指揮するルディケさん。選手のパフォーマンスを最大限に引き出すために、具体的にどのようなアプローチをとっているのでしょうか。

――HCに就任してから、チームを変えるためにどのようなことに取り組みましたか?

「まず全選手やスタッフと1on1(1対1での面談)を行い、チームをどのように感じているか、どこを変えればいいと思うか、自身に何が必要かといったことをヒアリングしました。その後、合宿でどんなチーム文化をつくり上げていくべきかを話し合いました。つまり、人と文化にフォーカスすることから始めました」

――選手の意見を吸い上げてチームをつくるのがルディケHC流ということでしょうか?

「その通りです。選手は自分ごととして捉え、責任感が生まれると、役割を果たすために情熱を持って取り組んでくれます。私個人だけでは思いつかない良いアイデアがたくさん集まりますし、全員がコミットすることでチームの土台はさらに盤石なものになっていきます」

クボタスピアーズのグラウンドで、練習中に身振り手振りを交えながら選手とコミュニケーションを取るフラン・ルディケHC

選手との対話に重きを置くルディケHC。練習中も、選手と1対1で話しアイデアを引き出すためのサポートを行います。

――選手が責任と情熱を持ってパフォーマンスを発揮するために必要なことは何ですか?

「失敗してもいい環境をつくることが大事です。失敗を糧にすることで、次に同じ状況を迎えたときの判断が良くなり、自信につながります。子どもを育てることと同じで、この環境が安全だと思ったら成長する機会が増えますし、責任を持って取り組んでくれるのです」

――選手によってコミュニケーション方法を変えたりしますか?

「選手の性格を把握し、異なるアプローチをします。事実だけ伝えた方がいい場合もあれば、少し感情的に伝えた方がいい場合もあります。いずれにせよ大切なのは、相手をリスペクトし、正直であることです。相手をケアしながら正直に話し、あなたには価値があるんだ、チームにとって大切なんだという姿勢で接すると、選手もラグビーへの取り組み方を見つめ直し、パフォーマンスを向上させてくれます」

就任以来、綿密なコミュニケーションによって選手一人ひとりへの理解を深めてきたルディケHC。そのアプローチによってチームが変わっていく様子を、コーチや選手も感じ取っています。

「一番驚いたのは毎日一人ひとりと握手をすることです。フランがやるから他の人もやるようになって、お互いの距離が縮まって会話が増えました。他のチームからも、スピアーズは本当に雰囲気が良いですねと言われます」(佐川聡スクラムコーチ)

「最初は選手も指示に従う感じでしたが、ここ2~3年で大きく変わりました。フランが一人ひとりとしっかり向き合い、受け入れてくれるので、ミーティングや練習中に選手から発言することがすごく増え、信頼関係も深まりましたね」(立川理道選手)

クボタスピアーズのグラウンドで、選手とグータッチを交わすフラン・ルディケHC

練習の合間にも選手とのコミュニケーションをとり続けるルディケHC。

勝ちは心に留めるもの、負けは頭に留めるもの

――来シーズン以降、チームをさらにレベルアップさせるために取り組んでいることを教えてください。

「ニュージーランドのチームのメンタルコーチから、メンタルトレーニングを受けています。“under pressure”ではなく“with pressure”、つまりプレッシャーの下でプレーするのではなく、プレッシャーとともに戦う。時にうまくいかないときでも冷静になれるタフなメンタルを鍛えています」

――ルディケHCも長い指導者歴でうまくいかない時期を過ごされたことがあると思います。そこから学んだことはありますか?

「私も完璧ではなく、失敗をたくさんしていますが、良い学びだったと捉えるようにしています。勝ちは心に留めておくもの、負けは頭に留めておくものです。劇的な勝利は感謝とともに心に留め、負けは冷静に原因を考えて対処する。そうすることで、人もチームも成長できると考えています」

クボタスピアーズのクラブハウス内で、インタビュイーをまっすぐに見つめながら力強く話すフラン・ルディケHC

「今日よりも明日を良くすることを考えています。ミスやチャレンジを恐れず、毎日を良くしていきたいのです」と力強く話すルディケHCが印象的でした。

インタビューの最後に「選手を育てることでチームが成長するように、人を育てることでビジネスも成長していくと思います」と、ビジネスパーソンへのメッセージを届けてくれたルディケHC。「小さな目標をコツコツ達成しながら今も成長を続けている」と指揮官が語るクボタスピアーズの2021シーズンプレーオフ、そして来季以降のさらなる躍進に期待がかかります。

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