PEOPLE
SDGsの達成と共生社会の実現に向けて江戸川区とクボタスピアーズがめざす
誰もが安心して暮らせる街とは
2022 . 05 . 20 / Fri
写真・文:クボタプレス編集部
2022年からスタートした日本ラグビーの新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン(以下、リーグワン)」で、プレーオフに進出し初代チャンピオンをめざすクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、クボタスピアーズ)。スタジアム内で行われる試合もさることながら、チームは多くのファンが暮らす地域社会での活動にも積極的に取り組んでいます。
今回のクボタプレスでは、クボタスピアーズがホームタウンのひとつである東京都江戸川区と行っているSDGsに関する取り組みにフォーカスします。
地域のお店やSDGs関連のブースで賑わうスタジアム
2022年3月5日に江戸川区陸上競技場で行われた、クボタスピアーズ対静岡ブルーレヴズ戦。リーグワンでのチームの勇姿を取材するためにスタジアムを訪れた編集部ですが、まず目に飛び込んできたのはコンコース内に設置されたオレンジのブースの数々でした。地域の飲食店などの出店、スタンプラリーなどで賑わい、地元のお祭りのような雰囲気がただよっています。
フード類の他にも、江戸川区によるSDGs関連の展示や、「SDGsステーション」と名付けられたごみの分別回収スペースも設置されていたほか、最寄り駅の西葛西駅から江戸川区陸上競技場の間で、クボタスピアーズのビブスを着た人々による清掃活動も行われていました。
ここでひとつの疑問が浮かびました。ラグビーとSDGsにはどのような関係があるのか。そもそも、なぜ地域のお店や施設のブースが設置されているのか。この謎を解明すべく、私たちは急遽、クボタと江戸川区の関係者にお話を聞くことにしました。
SDGsを身近に感じてもらうためのリーグワン初の試み
リーグワンでは各チームが興行権を持ち、ホストゲームでさまざまな趣向を凝らした催しを行っています。「そうした中で、クボタスピアーズはクボタの企業スポーツとして、社会に向けて何ができるかを常に模索しています」と話すのは、クボタ 企業スポーツ推進部長の吉川禎延さんです。
「SDGsと聞くと、自治体や企業が取り組むイメージが強く、縁遠く感じる方がいらっしゃるかもしれません。クボタの中でも一般市民の方々に近しい存在であるクボタスピアーズが、試合会場やそれ以外の場でSDGsに積極的に取り組むことで、少しでも身近に感じていただくことができたらと考えています」(吉川さん)
クボタスピアーズと江戸川区は、2021年10月に「SDGs推進に係る連携と協力に関する協定」を締結しました。チームと自治体のSDGs単独での連携協定は、リーグワン初のことです。
この協定が結ばれる以前から、クボタスピアーズは江戸川区において、小中学生を対象にしたラグビー教室、試合会場での古着・古布のリサイクル、こども食堂や障がい者施設への食材提供などのSDGs推進活動を継続的に行っています。
「選手を含め、クボタスピアーズは社会の一員として、自らSDGs推進活動に参加しています。今後も江戸川区をはじめとしたホームタウンにおけるSDGsへの理解や取り組みを広げていくことに貢献し、ファンの方々とともに活動を積み上げていきたいと思います」(吉川さん)
江戸川区がめざす「誰もが安心して暮らせる共生社会」
「クボタスピアーズのお力を借りながら、私たち江戸川区もSDGsの推進に注力しています」と話してくださったのは、江戸川区長の斉藤猛さんです。
江戸川区は、東京23区で最多の区立小学校や老人クラブを擁し、区内在住の外国人の数も23区で一番多いなど、さまざまな年齢や立場の方々が暮らす街です。
多様なバックグラウンドを持つ区民の方々が自分らしくいきいきと暮らすために、江戸川区は人々が互いに認め、支え合う「共生社会」をめざしています。「誰もが安心して暮らせる共生社会は、『誰ひとり取り残さない』という理念を持つSDGsの達成により実現できるものと考え、SDGsに積極的に取り組んでいます」と斉藤さんは話します。
また、江戸川区は荒川、江戸川、東京湾に囲まれた街でもあります。「水の恵みとともに、温暖化などに起因する水害のリスクも存在します。SDGsで掲げられている環境面の目標は、持続可能な街をめざす上でも重要です」(斉藤さん)。
SDGs達成へのステップ
SDGsえどがわ 10の行動
クボタスピアーズをきっかけに、区民に生まれたSDGsへの気づき
江戸川区が取り組むSDGs推進活動にクボタスピアーズが関わることについて、斉藤さんは「SDGsそのものを知ってもらったり、行動する方が増えました」と語ります。
例えば、野鳥等保護区域である葛西海浜公園東なぎさを清掃する「東なぎさクリーン作戦」にクボタスピアーズの選手が参加した際も、区民の方々から多くの声が届いたと言います。「クボタスピアーズの選手のかっこよさに惹かれて、SDGsに興味を持つ方が増えていくと思います」「クボタスピアーズのファンとして、選手に参加していただけるのは本当にうれしいです」など、興味関心のきっかけとなっていることが分かります。
また、クボタスピアーズのホームゲームでは、応援グッズの配布やプラカードによる案内を、区内の障がい者の方が担っています。こうした活動は障がい者の方にとって、地域社会に参加するきっかけや自分の成長を実感する機会になっているそうです。
斉藤さんは「クボタスピアーズを通じて体験したひとつひとつの活動によって、区民がSDGsに興味を持ち、自分ごととして大切にしていただくことが、共生社会の実現につながると実感しています」と、これまでの取り組みを振り返りました。
ここにいてもいいと思える街であり続けたい
江戸川区が共生社会をめざす背景には、斉藤さんが江戸川区役所のいち職員として働いていた時代に感じた強い思いがあります。
福祉の現場に10年以上関わってきた中で、斉藤さんは身体機能が低下した方、気分が落ち込んでしまった方など、多くの方々を目にしてきたと言います。
「人間、誰しも弱ってしまう時があると思います。そういう方々にとっても、居心地の良い街、ここにいてもいいと思える街であり続けたいのです。それを突き詰めていくと、共生社会やSDGsの実現につながっていくと信じています」(斉藤さん)
強い思いのもと、SDGsの達成と共生社会の実現をめざす江戸川区とクボタスピアーズ。「この関係を大切にしながら、ともにパートナーとして歩んでいきたいと思います」と斉藤さんが話せば、吉川さんも「クボタスピアーズを通じて多くの方々がSDGsのことを知り、実践するきっかけになりたいと思います」と答えてくださいました。
編集後記
ラグビープレーヤーとしてのご経験もある斉藤さん。取材中、ラグビーというスポーツとSDGsの共通点についてお聞きした際、「ラグビーはさまざまな特徴を持つ選手がプレーする、多様性を体現したスポーツです。ともに生きるという区の理念と、誰ひとり取り残さないというSDGsの理念は、ラグビーそのものだと思います」というお答えがとても印象的でした。ひとつひとつの活動を積み重ねていく江戸川区とクボタスピアーズの取り組みに期待を寄せるとともに、自分もできることから始めてみようと思いを新たにする取材となりました。