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GROUNDBREAKERS日本農業の未来へクボタ堺製造所見学!モノづくりの「改善」に迫る【後編】

2022 . 08 . 05 / Fri

堺製造所を見学する3人の農業経営者、部品を使った組み立て工程の作業者、「笑顔」と書かれたボードを持つ若手社員、3人の農業経営者と2人の職長によるトークセッションの画像

写真・文:クボタプレス編集部

前編でクボタの堺製造所に潜入した、3人の農業経営者。後編では工場見学後、案内役を務めた2人の職長も加わり、モノづくりの「改善」に着目したトークセッションの様子を紹介します。

三人三様の農作業・農業経営の効率化

――工場見学はいかがでしたか。

高村昭広さん(以下、高村さん):
一つのラインでいろいろな機種を生産していく点に感心しました。あれだけアイテムが多いと、創意工夫がなければ実現できないのだと思います。

工場見学について語る株式会社アグリ知立代表取締役社長の高村昭広さん

株式会社アグリ知立 代表取締役社長の高村昭広(たかむら あきひろ)さん。

村上和之さん(以下、村上さん):
人が振り向かないとか、しゃがまないとか、簡単そうだけど実はすごくむずかしいことを、時間をかけ、工夫して仕組みをつくっていく根気強さが印象に残りました。

工場内の工夫について語る農業組合法人 野菜のキセキ理事の村上和之さん

農業組合法人 野菜のキセキ理事の村上和之(むらかみ かずゆき)さん。

――皆さんは農作業や農業経営の改善のために、どのような効率化を実践されていますか。

酒井貴弘さん(以下、酒井さん):
私たちの生産拠点である徳島県は、ほ場1枚が1~2反という大型機械を入れられない土地条件のため、その中でいかに効率的に作業を行い、コストを削減するかが課題です。作業時間のデータを集積して計算したり、どのような人の配置にすれば人件費が抑えられるのかを考えたり、従業員と意見を出し合いながら効率化を進めています。

農業作業の効率化について語るアイ・エス・フーズ徳島株式会社 代表取締役の酒井貴弘さん

アイ・エス・フーズ徳島株式会社 代表取締役の酒井貴弘(さかい たかひろ)さん。

村上さん:
私はKSAS(クボタスマートアグリシステム)を使っています。土地の収穫量、食味のデータなどを毎年蓄積し、収量のとれないほ場の施肥設計を数年続けることで収穫量を上げる。これも効率化の一つだと思っています。それから、自分たちの工場で玄米の精米や検査も行い、納品先に届けることで、できるだけモノの動きを少なくし、利益の最大化を図っています。

村上さんが使うKSASの管理画面

村上さんが使っているKSAS(クボタスマートアグリシステム)。パソコンなどでほ場管理や作業記録が可能。

村上さんが自社で精米や検査を行う工場内様子

農業組合法人 野菜のキセキでは精米や検査も自社で行い、モノの動きを最小限にすることで効率化を実践しています。

高村さん:
出てきた問題に対して改善していくのは、業界にかかわらず同じだと思います。例えば、当社の場合、作付け面積が急に増え、今いる人数だけでまかなうとなると、堆肥をほ場にまくだけでも大変です。そこで、飼料用の牧草を集めるのに使うロールベーラ*1を使い、堆肥をロール状にすることで効率化が図れ、コストが抑えられました。改善は一度で終わることではなく、実験を重ねることが必要だと思います。

  1. *1.干し草や藁などを圧縮し、丸く梱包する作業機(インプルメント)
ロールベーラを使いロール状にした堆肥

飼料用牧草を集めるロールベーラを応用してロール状にまとめた堆肥。

機械化・自働化が進んでも、人の感性は不可欠

堺本機製造部 本機製造二課 職長・濵﨑省治さん(以下、濵﨑さん):
今日ご覧いただいた「ムダ」についていえば、振り向くムダ、しゃがむムダ、そういう目に付くところをピックアップして改善していく方法もありますが、もう一つ、「課題解決型」の方法もあります。たとえば、5人でやるところを4人でやるためには、どこのムダを改善すればいいか、どういう作業配分にすればいいかなど、課題に対してひたすら計画をつくり、理想に近づけていくという。これも非常に重要な考え方だと思います。

改善にあたって重要な「課題解決型」について語る堺製造所職長の濵﨑省治さん

改善にはいろいろな方法があり、「課題解決型」も重要だと語る堺本機製造部 本機製造二課 職長の濵﨑省治(はまさき しょうじ)さん。

――酒井さんは最近、新工場を建てられたそうですね。

酒井さん:
収穫した青ねぎを搬入し、選果作業をして冷蔵庫に入れるまでの工程の中で、いかにムダを省くか、効率化や作業動線を非常に意識しながら設計しました。今取り組んでいるのは、一人当たりの生産性を上げることです。収穫してきたコンテナを1時間あたりどれだけ処理できるかをストップウォッチでカウントし、平均的な数値を出します。それを、新しい人が入った際の目標値として伝えています。

工場内で青ねぎを選別している様子

作業動線に配慮して設計したアイ・エス・フーズ徳島株式会社の新工場。

――機械化や自働化による効率化を進めるにあたり、何かポイントはありますか。

エンジン製造部組立課 職長 横田健さん(以下、横田さん):
まずは作業分析がいちばん大切になると思います。これからダイバーシティが進んでいく中で、単純作業や重量物を運ぶ仕事は自働化を進める一方、人に頼らなければならないところは人がやるべきです。そういう感性を育て、それを後輩に引き継いでいく。

効率化を進めるなかで、人を育てる大切さについて語る堺創造所 職長の横田健さん

堺エンジン製造部 組立課 職長の横田健(よこた たけし)さん。

村上さん:
自働化と人の感性の兼ね合いは農業においても重要なポイントです。作物自体も生きているので、人の感性をしっかり育てていかないと次のステップには進めません。自働化が進む工場でも同じなのだなと感じました。お米の場合、年1回しか作業の経験が積めないので、一人前になるには5~6年かかってしまう。どのようにすればその期間を短縮し、早く人を育てられるのかを、もう1回熟考してみたいと思います。

人材育成に役立つ動画のマニュアルづくり

高村さん:
クボタさんは一つの工程を誰でもできるようにしていますが、私たちも本当はそれが理想です。ただ農業は工程が多いので、工場のリリーフマンのように、すべての工程を網羅できる人材を増やすことが必要でしょうね。いずれは全員のスタッフがリリーフマンになれることを目標にやっていきたいです。

いろいろな工程にヘルプ対応可能なリリーフマンがエンジンを組み立てている様子

いろいろな工程にヘルプで入れるリリーフマンは、工場では重要な人材。農業においても、リリーフマンの育成が重要だと高村さんは言います。

濵﨑さん:
教える人によって教え方が変わることがあると思うのですが、そのギャップをどのように埋めていますか。

酒井さん:
確かに、教える人によって教え方が全く違い、教えられる側がこんがらがってしまうことがあります。それを防ぐためにも、これからは動画で作業工程のマニュアルを作成しようと考えています。すべての工程を撮るのはむずかしいかもしれませんが、新しく入った従業員には機械操作の仕方などを動画で学んでから作業に取り組んでもらうといいと思います。

教える人によって教え方が変わらないための工夫について語る酒井さん

動画による作業工程のマニュアルの作成が、教え方のばらつきを防ぐ鍵になると言う酒井さん。

横田さん:
私たちの職場でも、一つのラインで動画の標準化表を試験的に作成中です。スマホ世代は紙にだらだら書いたものより、スマホで見るほうが興味を持ってくれます。生産する型式が追加されるので編集が大変ですが、根気よくやっていくしかないかなと思っています。

高村さん:
弊社でも以前、動画をつくりましたが、それは新人に見てもらうというよりは、新人自らが作業の様子を撮影することで勉強の機会にすることが目的でした。農機を運転しながら撮影し、説明もすると、いろいろ気づくことがあり、成長につながります。私が教えるより、自分たちで気づいてやってくれると、全体が自主的に「じゃあ、今度はこれ、ちょっとやってみようか」となります。今後は戦力になる若い人たちをいかに育てるかがいちばん大事ですね。

若手の育成について語る高村さん

人に教わるより、若い人が自ら学ぶことの重要性を語る高村さん。

「地べたのGAFA」の一翼を担いたい

――最後に、本日感じたことや今後の抱負、未来の農業・工業について一言ずつお願いします。

横田さん:
工場では、アイドルタイム(価値を生まない動作)が90%、ファンクションタイム(価値を生む動作)が10%といわれており、つまり90%は改善の余地があるということです。農家の皆さんに日本の農業を今以上に盛り上げてもらうために、私たちも全力を尽くしていかねばと思っています。

濵﨑さん:
農業経営のむずかしさと、その中でどうすれば日本の農業がうまく回るかということまで考えていらっしゃる皆さんのお話を聞いて、安心安全で高品質な製品をお客様にお届けすべきだと改めて感じました。

GROUNDBREAKERSとトークセッションし、より良い製品をお届けしたいと感じた横田さんと濵﨑さん

GROUNDBREAKERSの皆さんの努力を知り、もっと改善を進めてよい製品をお届けしたいと感じたと語る横田さんと濵﨑さん。

酒井さん:
技術革新が急速に発展する中、農業においても栽培技術や機械が進化しています。私たちも今後、農業経営を通して、今までとはまったく違った新しい農業の形を次世代に残していければと思っています。

高村さん:
自動車は電動化などの変化を遂げる一方、自動車産業に異業種が次々に参入してきている現状を考えると、農機で積み上げた実績があるクボタさんなら、自動車産業に参入できるのではないかと期待したいぐらいですね。

村上さん:
クボタの北尾社長が経済紙で「地べたのGAFAになる」とおっしゃっていました。海外進出しているクボタと同様、私たち農家も国内のモノが余っているとなれば別の行き先も模索しなければならない。それには、今後は強い農家同士が手を組むことで前進していけるのではないでしょうか。私たちも「地べたのGAFA」の一翼を担ってがんばっていきたいです。

今後の抱負を語る村上さん

「地べたのGAFA」の一翼を担いたいとしめくくった村上さん。

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