座談会にお集まりいただいた鶴田祐一郎さん、宮本健一さん、新海智子さん、井本喜久の4人

2022 . 04 . 27 / Wed

PEOPLE

GROUNDBREAKERS 日本農業の未来へ農業をもっと楽しむ!
生産者コミュニティ最前線

写真・文:クボタプレス編集部

農業は歴史的に見ても、産地や集落の単位で協力して営まれ、円滑なコミュニティづくりが重要な課題でした。現在では、農協の生産者部会や若手農業者のグループなど、知識や経験を共有し合い、時には作業でも協力し合う農業者グループが大きな役割を果たしています。今回は、そんな農業者のコミュニティについて、実際にコミュニティ運営を行うゲストの皆さんによるトークセッションを通じて、学びを深めていきたいと思います。

そこで、農家に向けたインターネットを使用したラジオのPodcast(ポッドキャスト)、ノウカノタネを主宰する鶴田祐一郎さんにファシリテーター役をお願いし、若手農業者で組織された全国農業青年クラブ連絡協議会(以下、4Hクラブ)会長の宮本健一さん、農業女性向けオンラインサロンを主催する新海智子さん、農業のオンラインスクールなどを運営する井本喜久さんをゲストにお迎えして、テーマごとに自由に語り合っていただきました。

自分の考えを発信する場を持つことが、学びにつながる

ファシリテーターとして話題を振る鶴田祐一郎さん

福岡県で夏秋ナスを主に生産し、少量多品目栽培で果樹も栽培している鶴田祐一郎(つるた ゆういちろう)さん。農業におけるラジオ文化に着目し、2014年よりPodcastを利用して「ノウカノタネ」を配信。2021年3月には「Spotify NEXT クリエイター賞」を受賞。

鶴田祐一郎さん(以下、鶴田さん):
まず初めに、農業者がコミュニティに期待していることはどのようなことでしょうか。

宮本健一さん(以下、宮本さん):
私が会長をつとめる4Hクラブは若い農業者を中心とし、全国にクラブ組織を置いていますが、その活動を通じて感じるのは皆さんが「リアルでつながれる場」を求めていることです。ネットやSNSが発達しても、仲間の成功談や失敗談をじかに聞いて自分の糧にしたい人は多いと思います。だからこそ、リアルにつながって交流する場を求めて、皆さんが4Hクラブのようなコミュニティに参加するのではないでしょうか。

コミュニティに参加する意義を語る宮本健一さん

石川県で水稲とい草を栽培する宮本健一(みやもと けんいち)さん。全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)の会長。同クラブは、日本全国に約850クラブ、約1万3千人のクラブ員を擁しています。4Hとは腕(Hands)、頭(Head)、心(Heart)、健康(Health)の4つの信条の頭文字。

新海智子さん(以下、新海さん):
私は「ちゃんとした関係性」と「応援し合える場」としての役割が期待されていると感じます。最近都会に住んでいる方は、家族、職場に次ぐ第3のコミュニティとして「サードプレイス」を持ちましょうといわれますが、じゃあ農家の女性のサードプレイスは何かと考えると、家庭も職場も地域に密着しているので、サードプレイスを見つけること自体、時間も場所も制約があってむずかしく、だから窮屈に感じるのではないかと思います。そこで立ち上げた「KURASHI FIT オンラインサロン」では、農業女性が「こんなことをやりたい」という思いを投げかけると、「いいね、いいね」と誰かが応援してくれる関係があり、皆さんが本当に共感してもらえる場を求めていると感じています。

農家女性には共感の場が必要と語る新海智子さん

新海智子(しんかい ともこ)さんは長野県の川上村でレタスと白菜を栽培する傍ら、KURASHI FIT PROJECTを主宰。農業女性のためのオンラインサロン「KURASHI FIT オンラインサロン」を運営し、メールマガジンも発行しています。

井本嘉久さん(以下、井本さん):
参加者自身が悩んでいることを打ち明けられる仲間がいると、みんな心がホッとすると思います。だから、私が主宰するサロンやスクールでは、なるべくみんなにマイクを向けるようにしています。そうすると突然、堰を切ったようにしゃべり始める人もいて、「みんながしゃべれる場所」を潜在的に求めているのかなと思います。

語り合う場を求めてコミュニティに集まると話す井本喜久さん

井本喜久(いもと よしひさ)さんは代表取締役を務めるThe CAMPus BASEで、「世界を農でオモシロクする」をテーマに、オンラインサロンやオンラインスクールを運営。都会の人にも気づいてもらいたい農業の魅力について、発信を続けています。

鶴田さん:
コミュニティに参加するとき、勉強になるからといわれて参加する人は多いけれど、実は自分の考えを発信する場を求めているのかもしれない。それも固いコミュニティより、ゆるければゆるいほど心地いいのではという気がしますね。

井本さん:
アウトプットできる場所を持つことこそが、本当の学びにつながります。しかも、個人で誰でも気軽につくれるのが、現代のコミュニティのいいところですね。

共有する理念を言葉にすることが継続と成長のコツ

鶴田さん:
運営者にとって、そのコミュニティを持続させ、さらに成長させるのはとてもむずかしいことだと思いますが、皆さんはどんな工夫をされていますか。

宮本さん:
私はリーダーがしっかり「想いや意味」を伝えていく、その連続が継続・成長を生むのではないかと思っています。

新海さん:
私のモットーは、楽しいことしかしない、辛いことはしない。楽しいことを続けているとコミュニティがつながっていく、というのが理想です。

鶴田さん:
私もPodcast「ノウカノタネ」を7年間、「楽しくなくなったらやめよう」と思いながらやっていたら、ずっと続いてきたので、それは共感できます。

共有する理念を言葉にすることが大切と語り合う鶴田さん、宮本さん、新海さん

井本さん:
物事を動かしていくには「楽しい」「おもしろい」という気持ちが必要で、それには「何のためにやっているのか」ということをメンバーの誰もが言えるように、「理念を言語化する」ことが必要だと思います。そういう共通の理念があるコミュニティは必ず持続していきます。

コミュニティの二つのキーワードは「共通点」と「共感」

鶴田さん:
地域の仲間と新しい団体や勉強会をつくる際、どのように立ち上げるとうまくいくと思いますか。

新海さん:
コミュニティは大きく二つに分けられると思っています。一つ目は「共通点のコミュニティ」、二つ目は「共感点のコミュニティ」です。いわゆる地縁によって結びついたコミュニティは前者ですが、それに対し、たとえば今、私がやっているオンラインサロンは「もっと自分らしい暮らしをつくっていきたい」という思いを同じくする農業女性が集まっているので、後者に当たります。

新海さんが主宰する「KURASHI FIT オンラインサロン」に集まる農業女性たち

農業女性の自分らしい暮らしをサポートするオンラインサロン「KURASHI FIT オンラインサロン」は「共感点のコミュニティ」だと新海さんは言います。

井本さん:
私も同感です。コミュニティには大小にかかわらず、誰かが成功したら「おお、よくやった!」「素晴らしい」と言える、つまり自分のことを誇りに思えると同時に、周りのことも素敵だなと思える「Well-being」の精神があることが基本だと思います。

新海さん:
ただし、共感のコミュニティに複数入っていればいいのかというと必ずしもそうではなく、共通と共感のバランスが大切な気がします。

コミュニティに必要なのは「共通点」と「共感点」と述べる新海さん、井本さん、宮本さん

鶴田さん:
確かに、共感だけし合っていても何も生まれないですね。宮本さんはご自分が創設メンバーではなく会を継続させている立場ですが、何かコミュニティの立ち上げに大切だと思う点はありますか。

宮本さん:
そうですね、一言で言うと、「情熱とワクワクを伝える力」でしょうか。あとは、共感して集まってくれた人を大事にすることは大切なのではないかと思います。

メンバーの成長や業界の向上が自分の喜びになる

鶴田さん:
農業という本業がありながらコミュニティを運営するということは、大きなコミュニティになればなるほど大変だと思いますが、皆さんは何をモチベーションに運営されているのでしょうか。

宮本さん:
私はもともとホテルで働いていました。そのときの、目の前の人が喜んでくれたら自分もうれしいという気持ちがそのまま今につながっていて、メンバーが成長したり業界がよくなったりするのを見ることが喜びになり、それがモチベーションになっていると思います。ただ苦しいときもあるので、損得ではなく善悪だと自分に言い聞かせて、頑張っています。

全国青年農業者会議で肩を組み、互いを鼓舞する全国の若手農業家のみなさん

4Hクラブがコロナ前に主催した「全国青年農業者会議」の様子。若手農業者で組織され、身近な経営課題やより良い技術を検討するためのプロジェクト活動を展開。

新海さん:
私はどうすれば農業女性がもともと持っている力を発揮できるのかに非常に興味があって、オンラインサロンはそれを実現するための実験の場なので、苦になることはあまりなく、楽しいことしかしていない感じです。

鶴田さん:
最後に、それぞれのコミュニティの今後の展望について、一言ずつお願いします。

宮本さん:
4Hクラブというコミュニティの主役は私たち役員ではなく、各地区にいるクラブ員のかたたちだと思っているので、今後は各地区のクラブ員がより自主的、自発的な活動と挑戦を行い、団体として成長していくことが目標です。地域のリーダーが全国に点在することで、農業によってその地域の価値を上げる。僕たちは「All for 4H」の姿勢で、それをあと押ししていきたいです。

新海さん:
住む場所や人間関係には関係なく、自分らしい幸せな暮らしを自分でつくれる農業女性を増やしていきたいですね。そういう人たちから幸せな波紋が全国に広がり、すごく元気で楽しそうな地方の女性の姿を、都市部の人たちや自分の子どもに見せることで、生きるってこんなに楽しいんだという雰囲気をさらにつくっていけたらと思っています。

井本さん:
一言で言うなら、「懐かしい未来をつくりたい」。今「コンパクト農ライフ塾」というオンラインのスクールを運営していて、農的暮らしや自然とともに生きていくおもしろさに気づく人たちを増やし、都会からそういう人が集まる場をつくりたいと考えています。農村にいる自分たちと都会からくる人たちとで新しい社会をつくり、懐かしい風景を取り戻していくようなコミュニティを運営していきたいです。

学びを求めて「コンパクト農ライフ塾」に参加する人たち

The CAMPus BASEが開催するオンライン講座「コンパクト農ライフ塾」の様子。成功する小さい農家の営み方が短期間に学べる。

鶴田さん:
今日は農業者コミュニティについて多角的に学べ、とてもおもしろい「気づき」がありました。そもそも、クボタのGROUNDBREAKERS自体が新しいコミュニティ発生の場なので、「このコミュニティ、おもしろそうだな」と思ったら、ぜひ参加してみてください。逆に「おもしろそうなコミュニティがないな」と感じたら、あなたがコミュニティを立ち上げる番です。より活きのいいコミュニティが形成され、日本の農業が盛り上がっていくことを期待します。

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