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先駆者たちの思いと取り組みに迫る農業を次世代につなげる
「GROUNDBREAKERS」の挑戦

2021 . 01 . 29 / Fri

クボタが開催したオンラインイベント「GROUNDBREAKERS」のキービジュアル

写真・文:クボタプレス編集部

例年1月に大規模な製品展示見学会を開催しているクボタ。昨今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で展示会等の開催が制限されていますが、その中でもお客様とつながり、交流する場を作りたいという思いから、2021年1月14日にオンラインイベント「GROUNDBREAKERS(グラウンドブレイカーズ)」を開催しました。

「GROUNDBREAKERS」とは、先駆者を意味する言葉です。クボタは、多くの課題に直面する日本の農業において、自身のビジョンを描き、創意工夫を重ねながら農業と向き合う人々こそ「GROUNDBREAKERS」であると考えます。

この「GROUNDBREAKERS」の一員として、オンラインイベントでは3人の農業経営者が紹介されました。今回のクボタプレスではオンラインイベントを振り返り、「GROUNDBREAKERS」たちの思いと取り組みに迫ります。

日本の農業を変えたいと決意した、若き農業経営者の熱い思い――アイ・エス・フーズ徳島・酒井貴弘さん

徳島県阿波市で青ネギ栽培に取り組むアイ・エス・フーズ徳島の酒井貴弘さん。高校を卒業し、地元の民間企業で働いていた酒井さんに転機が訪れたのは20歳のころ。農業法人を立ち上げる父親から「農業をすればこれだけ儲かる」という簡単な決算書を渡された酒井さんは、ビジネス視点で行う農業に興味を抱き、「人生一度きりなので、やってみたいという気持ちになった」と就農を決意しました。

青ネギ畑の前で座りながら就農したきっかけを語る酒井貴弘さん

酒井貴弘(さかい たかひろ)さん。2017年に父親の農業法人から分社化した農事法人アイ・エス・フーズ徳島株式会社を設立、代表取締役に就任。現在は27歳にしてスタッフ25名を率い、14haの耕作面積で青ネギ栽培に取り組まれています。

幼いころ、農家を営む実家で祖母から「農業は儲からない」と聞いていたという酒井さんが、日本の農業の課題に目を向けるきっかけとなったのは、とある肥料メーカーの社長との出会いでした。

その社長から、世界の農業は品質と収量を向上させる手法を取り入れる一方、日本の農業は20年前から栽培方法が変わっていないと教えられ、同じやり方を続けるのではなく、世界モデルを取り入れて「日本の農業を変えていく!」と強い思いを抱きました。

生産規模の拡大、自然災害リスクを考慮した新たな栽培方法の模索、農作業の効率化、さらには他の農業生産法人とともに阿波市の農地の保全にも取り組むなど、どんどん新しいことに挑戦する酒井さんの元には、同じく「新しい農業に挑戦したい」という志を持つ若い仲間たちが集まっています。

クボタのトラクタの前で、笑顔でカメラに収まる酒井貴弘さんと山田伸伍さん、山本伊織さん

「先頭に立って働いてくれている」と、農場長の山田伸伍さん(左)と副農場長の山本伊織さん(右)に感謝の意を示す酒井さん。「彼らの夢を叶える場所にしたい」と、仲間とともに夢の実現に向かって前進しています。

「これから実現したいこと」を問われた酒井さんは、「若さを武器に攻めて、たくさん失敗してもいいので『当たって砕けろ』の精神で飛び込みたい」と話します。自分がどれだけ成長できるのかを楽しみ、「農業界の未来を照らす太陽になりたい」という酒井さんの言葉からは、若き経営者の農業にかける熱い思いが感じられました。

農業を受け継いでいくため、挑戦し続ける――アグリ知立・高村昭広さん

愛知県で米や麦、大豆を生産しているアグリ知立の高村昭広さん。23歳から43歳まで花屋を経営していましたが、父親が営んでいた農事組合法人の後継者不足を懸念し、「地域の農業を絶やさないためにも自分が農業経営を行い、後継者を育てないといけない」と就農しました。

農機が並ぶガレージの中で、自身の農業への思いを語る高村昭広さん

高村昭広(たかむら あきひろ)さん。農事組合法人アグリ知立代表理事。8名の従業員を率い、約230haの耕作地で四季を通じて米、麦、大豆の栽培に取り組まれています。

今の若者やそれ以降の世代に農業を後継していくために「農業には楽しいことがたくさんある」ことをアピールしていきたいという高村さんは、より楽で効率的な農業を実践しようとさまざまな農法に積極的にトライしています。

例えば、米の栽培では田植えをせず、ほ場に直接種をまく「直播き」を採用。田植え作業がないため、ゴールデンウィークに休暇が取れたり、出穂が始まる時期に稲周辺の除草など他の作業に手をかけられるといったメリットが生まれます。また、アグリ知立では堆肥をロールベーラ*でまとめることで運搬を省力化していますが、その方法に至るまで約4年間、さまざまな手法を試したそう。試行錯誤と改善を重ね続けたことで、今の効率的なやり方ができたと高村さんは話します。

  • 干し草や藁などを圧縮し、丸く梱包する作業機(インプルメント)
円柱状にまとめた堆肥を排出するロールベーラ

堆肥をプレスするロールベーラ。円柱状にまとめた堆肥は散布時に粉々になるため、器を用意する必要がない点もメリットになるとのこと。

また、高村さんは若者や子どもたちが農業に触れるきっかけづくりにも力を入れています。「今は自分から畑をやろうという人もいない」と高村さんが感じる中で、土を触る楽しさ、作物を収穫する喜びを伝えたいと、家族で一緒に野菜を作れる体験農村「かきつ畑」を2018年に知立市内に開きました。

「僕らも野菜に関してはど素人でスタートしている」と前置きしながらも、体験農村の利用者とともにステップアップすることで、さまざまな野菜の量産や市街地の畑の有効利用などにつながるのではないかと考えたと高村さん。構想だけでは前に進まない、とにかく一度やってみようと思いスタートしたと振り返っていました。

アグリ知立がオープンした「米café Repos」店内の様子

地元で収穫された作物の味を知ってもらうために、知立市内に「米café Repos」をオープン。「作ってから売れるまでが一サイクル」と、6次産業化にも取り組まれています。

農業の後継者をつくるため、ほ場の内外で多岐にわたる取り組みを行っている高村さんの根底にあるのは、農業はなくしたくないという思い。「いろいろなことを試せば、どこかで良いものが見つかるのではないかと思っている」と、アイデアが浮かんだらとにかく一度やってみるという前向きな姿勢が印象的です。さまざまなチャレンジを続けることで農業をより魅力的なものにし、次世代につないでいくという強い思いが伝わってきました。

次世代が飛躍するための突破口を切り拓く――野菜のキセキ・村上和之さん

大学卒業後、アメリカに留学し貿易を学んでいた村上和之さんは約20年前、帰国して家業であった農業を継ぎました。その後、東日本大震災に被災し、復興プロジェクトとして立ち上げた「野菜のキセキ」を、現在は農事組合法人として運営しています。

ガレージの中で自身の農業の取り組みについて話す村上和之さん

村上和之(むらかみ かずゆき)さん。農事組合法人野菜のキセキ理事。兄が市議会議員になったことをきっかけに、家業であった農業を継いで就農。現在は約48haの作付面積で、うるち米ともち米、大豆、ネギの栽培に取り組まれています。

村上さんもまた、農業を次世代に受け継いでいこうと奮闘する一人。農業の未来について、「(現役の農家が)自分たちは変わらないまま、次の世代が何とかするだろうと考えていては遅い」と警鐘を鳴らします。次世代の農業経営者を育成するためには、仕事内容に見合う給料を用意して良い人材を迎え入れなければならず、そのためには経営改善に取り組み、収益を厚くする必要があると考えています。

村上さんは農業をビジネス的視点で捉え、付加価値の高い作物づくりに注力。例えば、一般的に収量を上げにくいとされるもち米「みやこがね」を、ビジネス的に付加価値が高い品種と捉えて栽培。村上さんは、水がすぐに浸透し乾きやすい土地作りによって、悪天候の直後でもすぐ稲刈りができ、収穫適期を逃さずに収量を確保する技術を確立しました。

高性能の農機で作業を効率化させたり、クボタの営農支援システム「KSAS」を用いて栽培方法改善に取り組むなど、絶え間なく自身の農業やその技術を進化させようとしている村上さん。コロナ禍以降は「技術がクローズアップされる時代になる」と見据え、「品質を高める技術、収量を確保する技術、そのどちらかに特化して進化していかないといけない」と、現状に満足することのない姿勢を見せていました。

農機や農業ソリューションへの投資も活発です。高性能の農機を導入するのは、作業の効率化を図るとともに、自分たちが想定する最終的な経営形態への道筋を描くためと言います。

村上さんは、今の日本の農業で少しでも変えるべきことは変えなければ、若者を惹き付ける魅力が生まれないと言います。「これからの農業を変える突破口を僕が切り拓き、次の世代が大きな飛躍を遂げてくれたら」と話す村上さんからは、農業を次世代に受け継ぐ強い使命感を感じました。

農業に関わる人々すべてが「GROUNDBREAKERS」

今回紹介された3人の「GROUNDBREAKERS」からは、農業を次世代につなぎ、農業の未来をつくるという強い意志が伝わってきました。先進的な取り組みを行う3人ですが、こうした農家だけではなく、いま農業に向き合い、新たな未来をつくろうとする一人ひとりが「GROUNDBREAKERS」だと、オンラインイベントにナビゲーターとして出演した農機国内営業部長の鶴田慎哉さんは言います。

「農家さんの課題をともに解決するのがクボタグループの目指すところです。農家さんにとって、ますます重要な存在になりたい」と思いを語る鶴田慎哉(つるだ しんや)さん。

現役の農家はもちろんのこと、未来の農業を担う学生や農業関連業界の方々など、農業に関わるすべての人々が「GROUNDBREAKERS」です。「クボタも『GROUNDBREAKERS』の一員として、日本の農業を支える皆さんにOn Your Sideの精神で寄り添い、課題解決のソリューションを通じてこれからも支えていきます」と鶴田さん。変革が求められる日本の農業界で、課題に挑み続ける「GROUNDBREAKERS」の姿勢に、多くの「GROUNDBREAKERS」が勇気を与えられたイベントでした。

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