GLOBAL INDEX
December 2018
FEATURE
"People's Republic of Bangladesh"
04
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鋳物業をルーツとするクボタが大きく躍進するきっかけとなったのが、1893年に国内で初めて水道用鉄管の量産化に成功したことだ。その事業を継承しているのが、「ダクタイル鉄管」を主力製品とするクボタのパイプシステム事業部である。では、そもそもダクタイル鋳鉄とは何なのか。鋳物の一種である鋳鉄は、鋼に比べて耐震性、吸振性、耐摩耗性、成形性などの優れた材料特性を有するが、最大の弱点は脆弱性にあった。その弱点を克服し、鋼同様の強度と伸びを持つダクタイル鋳鉄が米国で発明された。「今世紀最大の発見」「第三の鉄」と言われたものの、その製造は極めて難しく、実用化は至難の業とされていた。そうした中、1954年、クボタが世界に先駆けて大口径ダクタイル鉄管の製造に成功、その3年後には量産化も実現した。以来、ダクタイル鉄管は急速に普及、上下水道をはじめ世界のインフラ整備で採用されている。
クボタのダクタイル鉄管の製造拠点は、兵庫の阪神工場と千葉の京葉工場の2ヶ所。特に京葉工場は、カルナフリ上水道整備事業で採用された、管長9mの鉄管の量産が可能な世界唯一の工場である。カルナフリ上水道整備事業に向けて、京葉工場で生産したダクタイル鉄管は総数8,814本。その製造をマネジメントしたのが、鉄管製造課長の山戸一弘である。 「自分たちが作った鋳鉄管で安全な水を供給するわけですから、確かな品質のものを提供する使命感がありました。製造工程の中でも、特に水の安全性に影響するのが内面の塗装工程です。管を高速回転させ、内面にセメントモルタルを薄く均一に塗布する作業で、管の防食を目的としたものです。あらゆる仕様に応えるために妥協せず作り込み、世界最高レベルの管を提供できたと確信しています」(山戸)
ダクタイル鉄管の原材料である鉄スクラップは廃材であるため、溶かした鉄の成分には常に微妙なバラツキがある。それを一定の品質に仕上げるよう、状態に応じて微調整することが山戸たちの腕の見せ所だ。また今回生産されたダクタイル鉄管は、最大のもので長さ9m、口径1.2m、重量は4tにも及ぶ。鋳造直後の鋳物は、スケールが大きいほど自重によりたわみや曲がりが発生しやすく、それらを極小化するために高い技術が求められた。カルナフリ上水道整備事業は、総延長100kmを超える大口のオーダーである。納期に応えるために、最盛期には昼夜稼働での生産シフトが取られた。製造設備が熱負荷に長時間さらされることで、想定外の設備トラブルにも見舞われたが、工場を挙げて課題に対処し、オーダー全量を生産しきった。
「私たちの仕事は祖業の直系というプライドがあります。事業環境が変わっても創業者のスピリットやモノづくりへのひたむきな情熱は、我々に確実に継承されています。その想いを胸に、今後も社会に貢献するモノづくりに取り組んでいきたいと考えています」(山戸) モノづくりの現場、そこはクボタの世界の水問題の解決に挑む基点でもある。