GLOBAL INDEX
December 2019

FEATURE
"Kubota Construction Machinery in U.S.A."

05

モノづくりへの徹底したこだわり
~アメリカ唯一の建機製造拠点~

北米唯一の建機製造拠点

アメリカ南東部、ジョージア州ジェファーソン――州最大都市のアトランタより北東へ約100㎞の地にある、クボタインダストリアルイクイップメント(Kubota Industrial Equipment、以下 KIE)は北米唯一の建機製造拠点だ。近隣のクボタマニュファクチュアリングオブアメリカ(Kubota Manufacturing of America)とともに、アメリカにおけるクボタのモノづくりを支えている。

2004 年に設立されたKIE は、当初トラクタ用の作業機器の製造拠点としての役割を担っていた。その後、クボタの北米事業の拡大と歩調を合わせながら、中型トラクタ、SSLと徐々に生産品目を拡大していく。これらの製品に共通しているのは、現地、北米市場で使用される製品であることだ。クボタのモノづくりの基本姿勢は地産地消である。地域で必要とされる製品を、できるだけ消費地の近くで生産する。製品がどのように使用され、何が課題であるのか、リアルタイムにつかんでモノづくりにフィードバックする、徹底した現場主義の発想だ。もちろんSSLをKIEで製造開始したのも、その一環である。2015年にSSLを市場投入した当初は、日本国内で生産して北米に輸出するという体制がとられていた。しかし拡大傾向にある市場に対して、日本からの輸出だけでは需要の変化に即座に対応することが難しいと判断し、現地生産の開始を決断。2016年から生産を一部移管して、KIEでSSLの生産ラインが稼働開始することとなった。以来、SSLの生産はKIEと日本の二拠点体制をとり、高品質の製品を市場に供給し続けている。

クボタインダストリアルイクイップメント

安定供給と高品質を使命に

クボタインダストリアルイクイップメント
製造マネージャー
オメロ・レンテリア

製造拠点に課せられる使命のうち、安定的かつ効率的な生産は、最も重要なテーマの一つである。現在KIE が特に注力しているのは、オーダーデリバリーリードタイムの削減だ。お客様から製品の注文をいただいてから出荷するまでの時間を短縮することができれば、その分コストダウンや顧客満足度の向上につながり、ひいては製品の競争力に大きく寄与することになる。特に建設機械は、景気動向によって需要が左右されやすく、フレキシブルな生産体制が求められる。不断の改善によって生産能力の余力を生み出し、将来の事業をさらに拡大することも可能になる。併せて、部品の現地調達化にも積極的に取り組む。KIEでは立ち上げ当初から現在に至るまで、部品の大部分を海外から調達してきたが、これを段階的に現地調達に置き替えていく試みだ。現在KIEでモノづくりといえば、製造現場内の活動にとどまらず、「サプライヤーから出荷まで」を含めた幅広い活動と定義する。この言葉通り、アメリカ国内のサプライヤーのもとに積極的に出向き、サプライヤーのモノづくりの改善活動を支援する体制構築も進め、真の「地産地消」の実現をめざしている。

製造拠点のもう一つの使命は、高い品質を維持することである。高品質はクボタの代名詞であり、それを今後も維持することはモノづくりの誇りをかけた最重要の課題と言える。製造マネージャーのオメロ・レンテリアは、その核となるのは人材育成であると語る。

「リードタイム短縮や品質確保といった難題に挑戦するには、従業員のスキルアップと教育が欠かせません。多くの部品が複雑に組み付けられるSSLには、作業者には熟練した技能が求められ、一人前の作業者に育てるには、質の高い教育を要します。そこで写真や図を多用したワーク・インストラクション・ガイドなどを作成し、効果的な人材育成ができるよう工夫を重ねています。また何か課題があれば、その真の原因を把握し改善していくという意識をチーム全員で共有するよう心がけています。高いモチベーションで改善に取り組んでいくための組織づくりにも、常に心を配っています」(レンテリア)。

KIE に限らず、クボタの製造現場の根底に流れているのは「KPS(Kubota Production System =クボタ生産方式)」と呼ばれる考え方である。「お客様の『のぞみ』を超える商品とサービスを、『予測』を超えるスピードで提供することにより、感動を呼ぶモノづくりをめざす」ことがその理念だ。こうしたモノづくりへの徹底したこだわりが、市場から真に求められる製品を生み出している。

アメリカに新たな製造拠点の建設計画

クボタインダストリアルイクイップメント
副社長
ブライアン・アーノルド

都市の幅広いフィールドで活躍する小型建設機械は、快適な都市空間の整備に不可欠な存在である。今後もアメリカの建機市場は拡大基調にあることが予想され、これまで多くの建機を市場に届けてきたクボタの供給責任は重大である。そこで旺盛な需要に応えていくための、次の一手となるプランが動き始めている。数年以内に、アメリカ中西部にCTLとSSLの新工場を建設し、生産体制の強化を図る計画だ。こうした生産規模拡大においても、KIEは重要な役割を果たすことになる。

「建機の市場ニーズは常に変化し続けますが、モノづくりを担う我々の役割は、いかなる状況でも高い品質の製品をお客様の求めに応じて供給することです。私たちには、2016年の生産開始以来、数々の難題を乗り越えてきた経験があります。そこで蓄積されてきた知見とノウハウは、新拠点の設立を大いにサポートすることができると考えます。また将来、市場に求められる製品が変化し、新製品を生産することになっても、私たちの積み上げてきた経験を生かすことができるでしょう。さまざまな可能性を視野に入れ、より高いレベルのモノづくりを目指していきます」(KIE副社長 ブライアン・アーノルド)。

KIEから始まった建機の現地生産は次のステップへと進む。北米におけるクボタの建機事業をさらに加速させることは間違いない。

KIEのSSL生産ライン。クボタのモノづくりの基本姿勢「地産地消」を推進していく
KIEのSSL生産ライン。クボタのモノづくりの基本姿勢「地産地消」を推進していく
KIEのSSL生産ライン。クボタのモノづくりの基本姿勢「地産地消」を推進していく