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TECHNOLOGY

「社会課題の解決」を使命としてサステナブルな都市環境整備に貢献する建設機械事業

2024 . 04 . 12 / Fri

アメリカ カリフォルニア州ロングビーチの街並みと海岸線のアクアティックパークの写真

写真・文:クボタプレス編集部

国連は、2030年に世界人口の約6割強が都市部に居住し、特に途上国の都市人口は毎月550万人ずつ増加するとの調査を発表。そして、急増する都市人口に起因する問題に対し、SDGsではゴール11として「住み続けられるまちづくり」が掲げられ、社会インフラの整備や公共サービスの充実が求められています。今回のKUBOTA PRESSでは、都市の環境整備に貢献する、クボタの建設機械事業に迫ります。

都市化に伴う社会課題に向き合い続けるクボタ

先進国の都市インフラの再整備や再開発、新興国の急速に進む都市開発に対して、どのように貢献していくのか、クボタ建設機械事業部長の湯川勝彦さんにお話しを伺いました。

「私たちクボタとしては、都市にまつわる社会課題は、クボタの存在意義を示す機会だと言えます」

クボタ建設機械事業部長の湯川勝彦さん

専務執行役員 建設機械事業部長 湯川勝彦(ゆかわ かつひこ)さん。1987年に久保田鉄工株式会社に入社。主力であるミニバックホー(以下、MB)の設計を中心に、今日のクボタ建機事業の礎を築いてきました。

「クボタは、130年ほど前に日本が近代化する中、コレラなど疫病の蔓延防止に求められた水道インフラ整備という都市問題の解決に向け、水道用鉄管開発に取り組み、国内で初めて量産に成功しました。以降、都市問題をはじめとする社会課題の解決に貢献するための製品・ソリューションを提供することで成長してきた会社です。私が担当する建設機械事業は、2002年以降、世界首位の販売台数*となるMBをはじめ、北米で高いご評価をいただいているコンパクトトラックローダー(以下、CTL)や、スキッドステアローダー(以下、SSL)など、小型建設機械と呼ばれる領域に特化し、多様化する都市型工事のニーズに対応し事業を拡大してきました。昨今は、都市の開発や再整備を、いかに地球環境保全と両立させるかという課題や、建設工事を担う人材不足への対応を進めています」

  • 6トン未満、「Off-Highway Research 2023」より。

都市化の推進に重要な役割を持つ建設業界ですが、世界的に働き手不足が課題とされ、特に日本においては深刻な状況となっています。

建設業における職業別就業者数の推移

建設業における職業別就業者数の推移を表したグラフ

少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する先進国を中心に、世界的な労働力不足が社会問題となっています。特に日本については深刻で、建設業においては就業者のうち、建設工事の直接的な作業を行う「技能者」は、平成9年(1997年)をピークに減り続け、令和4年(2022年)時点で比較すると153万人減少しています。(出展:総務省「労働力調査」(暦年平均)を基に国土交通省で算出。※平成23年データは、東日本大震災の影響により推計値)

「働き手の不足に加えて、特に建設現場においては熟練オペレーターの減少が問題になっています。この傾向は先進国といわれる国ほど顕著になってきています。経験豊富な熟練オペレーターであれば短時間で終わる作業が長時間となり、さらに働き手の減少によって工事期間が長期化する問題が発生しているのです。これでは、災害復旧のような緊急性の高い工事に迅速に対応することが難しくなる恐れがあります。そこで、クボタはオペレーターの作業効率の向上に向けて、DX化を進めています」

「実際、大型の建機では、図面などのデータをあらかじめ機械に読み込ませておくことで熟練オペレーターでなくても効率的な作業を実現する取り組みがスタートしています。小型建機が活躍する都市型工事において、クボタはICT技術の活用でより効率的な作業の実現と、より安全な工事の実現に取り組んでいます」

「一方、都市化が急速に進む開発途上国では、まだ人の手による工事が多いのも現実です。そのため、都市環境の整備に時間がかかり、また労働環境も過酷であることから、まずは機械化への移行が進むと考えています。クボタとしては世界の現場で培った扱いやすくシンプルな機械を、できるだけ安価で提供することで、都市環境の整備に貢献したいと考えています」

工事現場で求められるオペレーターフレンドリーな建設機械

これまでクボタはお客様のニーズに応え、製品ラインアップの拡充、徹底的な操作性の追求、機能・品質の改良を進め、グローバルで事業が拡大しています。中でも北米市場の拡大のカギとなったCTLは、後発ながら高い評価を得ていると言います。その理由を聞きました。

「MBは掘削作業には優れますが、自走速度が遅いため、掘削した土砂や資材を現場まで運ぶ際にマテリアルハンドリング(以下、マテハン。「運搬」の意。)に強みがある機械を使用することが効率的で一般的です。2000年代のアメリカにおけるマテハン建機は他社のSSLが主流でしたが、操縦するオペレーターには、とても過酷な環境でした。想像していただきたいのですが、SSLは車高が低く視野が狭い。さらに操縦席の両側からアームが出ている構造上、出入り口は正面に限定され、スィング式ドアでは転倒時にドアが開かない恐れがあるなど、非常に危険でした。そして、最も驚いたのがその居住性で、特に重量物を持ち上げて走行すると、ホイールタイヤなので激しく揺れます。私自身、SSLを運転してその過酷さを実感しました」

「実際に運転する際に、周囲から『酔い止め薬が必要ですよ』と忠告されたのですが、自分が運転するのに車酔いするはずがないとSSLに乗り込みました。ところが、30分もたたずに車酔いしてしまったのです」と当時のことを教えてくれた湯川さん。そこでクボタが目をつけたのがCTLだと言います。

「CTLは車輪がクローラタイプなのでサーっと滑るように走り、騒音も振動も少ないのでスムーズに仕事ができます。クボタはCTLに関して後発メーカーでしたが、操縦席内の居住空間を広げ、操作性を向上させるというオペレーター目線、すなわちオペレーターフレンドリーな開発によってクボタならではの強みを取り入れました。操作性を上げると作業効率が上がります。同じ仕事でも疲れにくく速やかに作業できるというポイントを追求したのがクボタのCTLです」

CTLで資材を運搬する様子

郊外の住宅工事や都市部の狭い場所での公共整備などで活躍するCTL。住宅・インフラ整備で旺盛な建設投資が進む北米で人気を博しています。

この開発のカギとなったのが、「お客様目線に立った課題解決」、つまり開発スタッフ自らが現場に足を運び、現物を自分の目で確認し、現実に起きている問題を正確に把握したことだと言います。しかし、「製品開発だけでは不十分」だと湯川さんは話します。

「建機の場合は『製品』と『サービス』を両輪として考えることが大切です。自動車以上にメンテナンスが必要不可欠な建機では、サービス体制が追いついていないといくらよい製品を作っても売れません。トラブルにすぐ対応できるサービス体制はクボタ建機の大きなセールスポイントです。現在、このサービス対応においても、テレマティクス(遠隔データ授受システム)に力を入れ、お客様の機械から得られた情報をもとに問題発生時のサービス対応や、次期製品の開発に活用しています」

Kubota Tracking Systemを活用するイラスト

「Kubota Tracking System(クボタトラッキングシステム)」。建械の稼働状況や位置情報などを GPS・IoT で遠隔管理できるシステムで、パソコンやスマートフォンを使って情報を一括管理・確認できます。故障車両の位置情報や故障原因が分かることで迅速な対応が行え、ダウンタイム削減に貢献します。

更なる技術開発とカーボンニュートラルへの貢献

クボタが北米で高い評価を得ているCTL/SSLのようなマテハン建機は、機械単独では走行のみしかできませんが、アーム先端のアタッチメントと呼ばれる部品を付け替えることで、掘削や伐採、運搬、整地といった多様な作業に1台で対応することができ、人手不足の課題解決に繋がります。湯川さんは、そこにこれからのクボタの強みを発揮していくと言います。

「北米では、クボタグループに迎えたインプルメントメーカーのグレートプレーンズ社(以下、GPM)と戦略的に提携しています。クボタはCTL/SSL本体を生産・製造し、GPMはアタッチメントの開発・製造を行い、これら双方を組み合わせた状態で全米市場へ投入することが目標です。さらに、熟練オペレーターでなくてもスムーズな作業を実現できる『スマートアタッチメント』を協力して開発・製造することに取り組みます」

「通常、マテハン建機本体とアタッチメントは油圧系統や電気系統を接続し、オペレーターがアタッチメントごとに異なる設定を手動で行っています。スマートアタッチメントでは、アタッチメント側から必要な情報を本体側へ送ることで、設定を自動で行います。それにより、経験の浅いオペレーターでも簡単に設定が行え、稼働効率を高めることができます」

さらに、これからは都市環境の整備に取り組みながらも環境負荷低減に貢献していく必要があると指摘します。2050年に向けて掲げた「環境ビジョン」への取り組みを聞きました。

「クボタは、環境負荷ゼロに挑戦をしながら『食料・水・環境』分野でカーボンニュートラルでレジリエントな社会の実現に貢献することをめざしています。一般的な考え方として『環境負荷の低減=バッテリーによる電動化』となりますが、産業機械はバッテリーによる電気だけでまかないきれない部分があるため、環境負荷ゼロに向けて全方位で取り組んでいきます。まずはディーゼルエンジンの省エネ化と排ガス対応をさらにブラッシュアップします。そして、すでに実現しているバッテリーによる電動化に加えて、水素燃料電池による電動化、水素やバイオ燃料、合成燃料によるエンジンの開発を推進し、近い将来の技術革新を視野に入れて、全方位でのカーボンニュートラルへの取り組みを進めていきます」

電動ミニバックホーKX038-4e

環境対応の先進地域である欧州では、環境性能の高い製品に対するニーズの高まりが顕在化。都市部の工事などで広く活用されるミニバックホーのラインアップに電動モデルを加えることで、建設工事のカーボンニュートラル実現に貢献するために、2024年春、欧州市場に向けてクボタ初となる電動のMBを投入しました。

未来に向けて、変わり続けるものと変わらないもの

今でこそ世界中の建設現場で活躍するクボタですが、ここまでの道のりは決して順風満帆ではなかったことを知る湯川さんは、スタートアップの精神を持ち続ける必要があると言います。

「私の入社当時、建機部門は事業量も社会への影響度も今ほどではありませんでした。だからこそ、事業として成長するしか道はなく、お客様の声を製品に反映し、新しいことに次々に挑戦。まるでスタートアップの様な意識で取り組むことができました。今でも、新しい製品を市場に出すとき『この製品は真にお客様のためになっているか』と問う気持ちは変わりません。一つの製品の中で相反することはたくさん存在しますが、何に優先順位を置いて開発するかは、お客様の現場で現物を見て、お客様の声に耳を傾けなくては判断できません。これからもスタートアップの精神で、お客様の課題に応える製品・サービスとは何かを考え、取り組み続けることが、クボタの強みですし、これからも大切にしていきたいと思います」

最後に、時代によって様々に変化する社会課題に対して、課題解決のためのソリューションを提供し続けることが『命を支えるプラットフォーマー』としてクボタに求められる役割だと湯川さんは締めくくります。

「課題を解決することでお客様に認めていただき、お客様より与えられた利益を次の課題解決への原資として、サステナブルな社会の実現へと貢献していく。クボタが関わる事業領域は『食料・水・環境』と広く、事業としてやれることは多く存在します。その分、責任も重大ですが、人の生活に深く影響する社会課題を解決することがクボタの使命である以上、期待された役割をしっかりと担っていきます」

建設機械事業部長の湯川さん

「事業を通じて目の前にある課題はもちろんのこと、次の時代の課題も解決できる会社でありたい」と決意を語る湯川さん。建機の研究開発拠点であるグローバル技術研究所で。

ミニバックホー発売から50年。日本のインフラ整備への挑戦から始まったクボタ建機事業の取り組みは、これからも世界の都市問題を解決するために進化し続けていきます。

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