経済発展を遂げたカタールを象徴する、首都・ドーハのビル群の景色。

2022 . 12 . 01 / Thu

PEOPLE

130年の信頼と技術が砂漠の国に水を届ける中東・カタールの発展を支える
「メガリザーバープロジェクト」の担当者に聞く

文・写真:クボタプレス編集部

大きな経済発展を遂げ、世界中の注目を集める中東・カタール。砂漠のイメージが強い国ですが、高層ビルが建ちならぶ首都ドーハにはいたるところに噴水があり、景観に潤いをもたらしています。街の繁栄の象徴ともいえるこの豊かな水を、クボタが支えています。

砂漠の国が挑んだのは”世界最大級”のプロジェクト

カタールの年間降水量はわずか74mm(日本は1668mm)*1。海水を淡水化することによって生活用水が供給されていますが、貯水は2日分しかありませんでした。2010年、カタール政府はこの貯水を非常時に備え7日分確保するため、「メガリザーバープロジェクト」に着手します。この世界最大級の上水道プロジェクトを実現するために、世界中から技術と人が結集しました。

*1 FAO(国連食料農業機関)AQUASTAT https://www.fao.org/aquastat/

「正直なところ、とてつもないことを考えるなぁと思いました」 水環境海外推進部で営業を担当する増子左登志さんは、初めてプロジェクトの話を聞いたときの印象をこう振り返ります。

水道管の海外営業を担当する増子左登志さん。

増子 左登志(ますこ さとし)さん。1995年入社。2003年から水道管の海外営業を担当。メガリザーバープロジェクトの入札対応から契約の締結、水道管の埋設完了までを見届けました。

計画は、100万を超える人々*2が暮らすドーハの市街地を取り囲むように5カ所の広大な貯水場を配置し、約480kmのパイプラインでつなぐというもの。規模も、発想も、世界的に見て前例のないものでした。

*2 カタール政府開発・統計省(2020年12月)https://www.psa.gov.qa/

それだけに建設に伴う困難も規格外でした。クボタの受注した水道管は約300km、約3万3,000本にのぼります。大量の製品を安定した品質で、しかも1年半ほどの短期間で製造し、複数の現場に並行して納める、という多くのチャレンジが求められます。万が一、納品が遅れて工事を止めてしまうようなことがあれば、億単位の工費が発生しかねません。

メガリザーバープロジェクトにおける水道管埋設の様子。

メガリザーバープロジェクトにおける水道管埋設の様子。約480kmの水道管は、国土の南北に位置する2つの淡水化施設と、5つの貯水場を繋いでいます。

水道管をつくる京葉工場(千葉県船橋市)や、水道管同士を繋ぎ、管路を曲げたり分岐させるための異形管をつくる阪神工場(兵庫県尼崎市)では、操業時間を増やして対応。「大量の製品を運ぶ船の手配や置き場の確保も必要です。大きなトラブルなくやり遂げられたのは、製造、品質保証から物流まで数多くの関係者がワンチームとなった結果でした」と増子さんは振り返ります。

さらに、「縁の下で社会を支えているという誇りがチームワークを支えていた」と続けます。

「私自身、この仕事の『目立たないけれど、社会の役に立っている』ことに喜びを感じています。他のメンバーも、同じ思いではないでしょうか」

もうひとつ、増子さんが強調するのは「クボタが長きにわたり築き上げた技術と信頼」です。言葉の裏には、中東に進出した1970年代から歴代の担当者が築き上げてきた信頼を示すこんなエピソードがありました。

ある時、カタールの水道事業体のエンジニアから「これが何かわかるか?」と写真を見せられた増子さん。それは1980年代にクボタが納めた水道管を、再開発の際に掘り返した時に撮ったもの。写っていた水道管は埋没から約30年が経過しているとは思えない状態の良さでした。「新品と変わらないよ。まだ使えるね。やはりクボタがベストクオリティだ」と聞かされ、これが信頼に繋がっているのだ、と実感したといいます。

世界中の競合のなかからクボタが選ばれた背景には、創業以来130年にわたる「水」に関する課題解決の実績がありました。

オーダーメイドを実現する「技術」と「人」

水道管に水を送るポンプでも、クボタの製品が採用されています。全部で8種類、34台。ここでも大きなチャレンジがありました。

水の安定供給という目的のためには、災害時も想定して水の流量や向きを柔軟に変更するなど、ポンプへの要求が厳しくなります。高い効率で少ない水量から多い水量までを扱えるクボタの技術が発揮される場面でもありますが、顧客の複雑な要望を満たすには、クボタ内の設計や製造、品質保証など様々な部門を含めた綿密なコミュニケーションも欠かせません。

この課題に挑んだのが、水環境海外推進部で技術を担当する森島隆二さんです。

ポンプの技術営業を担当する森島隆二さん。

森島 隆二(もりしま りゅうじ)さん。学生時代に流体工学を学び、1999年入社。海外でのポンプ製品の技術営業を担当し、プロジェクトマネージャーとして世界中の様々な案件に携わっています。

顧客の声を聞いて仕様を固めていく「オーダーメイド」への対応力は、クボタのポンプ事業が得意とするところです。森島さんはそれを「注文住宅」に例えます。家づくりに住む人の生き方が反映されるように、単なる商品の売り買いだけではない、人と人のコミュニケーションが求められます。

「どれだけよい製品があっても、かゆいところに手が届かないような対応をメーカーの担当者がしていたら、お客様の期待には応えられません。商品はもちろんポンプですが、私自身も商品といえますね」

プロジェクトマネージャーとしての森島さんは、顧客と設計部門の要望を交互に把握・伝達し、それを繰り返しながらプロジェクトを推進していきます。「顧客の要望とその背景を理解したうえで、クボタが実現しうる最善のソリューションを提案することが最高のサービス」と森島さんは考えます。

プロジェクトを進める中で、カタールの人たちの「水」を大切にする意識にも驚かされたといいます。彼らは製品の質をとりわけ重視し、34台あるポンプの鋳造、水圧試験、塗装から性能試験まで、すべての段階に直接立ち会うため幾度も日本の工場にやってきました。その対応には毎回、工場のラインを止めなければなりません。

「工場の担当者からすればあり得ないような案件ですが、それぐらいカタールの方々は水を大事に考えているということがよくわかりました」と森島さん。国を挙げた重要プロジェクトのパートナーとして、クボタが果たす責任の重さを感じたエピソードです。

こうした経験を経て森島さんはいま、メガリザーバープロジェクトはクボタの水事業の「集大成」だったと話します。

「人の命に関わる社会インフラは絶対に失敗できない。私たちの依頼主が重視するのは、役割を果たすことができるという十分な実績です。今回は、クボタの歴史ある水道管の実績と信頼が要のひとつになりました。水を送り出すポンプと、それを届ける水道管を合わせた水のトータルソリューション、その意味では、クボタの水関連事業の集大成と言えますね」

ドーハ近郊にあるポンプ場。

首都・ドーハから車で1時間半ほどの位置にあるポンプ場。これからも人口増加に伴い、拡張・増築が予定されています。

技術と信頼で、新たな課題解決へ

メガリザーバープロジェクトで経験を積んだ2人はいま、新しい市場にも目を向けています。

増子さんは北米で地震、ハリケーン、地滑りなどの災害に耐えられる水道管の普及に取り組んでいます。地震の多い一部地域でしかまだ知られていませんが、カタールで築いたような現地の人たちとの信頼関係づくりをめざしています。「将来は、災害に強い水道管・水道設備のことだったらクボタに聞けばいいよね、と思ってもらえるようにしたいですね」

森島さんが手がけている案件のひとつは、死海(ヨルダン)の取水ポンプです。死海の塩分濃度は20〜30%。ふつうの海水の10倍近くもの濃度に耐えられる特殊なステンレスの溶接・加工は難しく、特別な設計が求められます。「お客様が不安に感じていると思うところは、早めに対応していく。すぐにわからないことでも、その時行動できる最大のパフォーマンスでボールを返していく。それはカタールで培ったことですね」

さらに、集中豪雨による河川の氾濫や道路の冠水時などに活躍する排水ポンプ車の、北米での市場調査も進んでいます。

それぞれが、クボタ創業時から続く「水を支える」者としての思いを胸に、今日も世界を駆け回ります。

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